「自分で自分を教える」その4 ピップ・イーストップ著 バジル・クリッツァー訳

☆ロンドンのホルン奏者、ピップ・イーストップ氏の論文です。
原文→http://eastop.net/?p=485

音楽的フレーズに関しては、実際に聴こえてる事よりは音楽的な意図を聴くいう傾向がある。これは、驚くような事ではない。もし仮に、初心者が想像力を働かせる事なく、自らの音をを客観的にのみ聴いていたとすると、すぐやめてしまうだろう(ちなみに、だからこそ楽器は幼少のうちから始めるのが良いとされているのかもしれないー想像力がまだ信頼のおけるものだからだ)。ただし、教師への依存から脱却するには、生徒は、客観的に聴く能力を磨いていく必要がある

音楽学校への入試準備を受け持つ教師たちは、多くの面で非常に優れていることがある。基礎的な能力を育みながら、音楽への愛と情熱を高めることができているかもしれない。しかしながら、一般的には抜群に優れた演奏能力をもつ演奏家ではないから、そういった教師たちは、現在のプロ演奏家レベルのホルン演奏技術に洗練させて行くのに必要な、非常に高いレベルの自分自身に対する気付き・意識を生徒に教えられていない場合がほとんどだろう。あとになって、生徒が音楽院で専門的に勉強しはじめると、ホルンの演奏レベルを高めるために要求される内観的な自己意識は、予期しなかったものであるだろう。

初心者レベルや中間的なレベルのホルン演奏者を含めて、基礎的な技術的・音楽的能力を作り上げるのには良い指導が必要なのは明白であるが、いずれ、上達するには、演奏者自身が大部分を自分自身でやり遂げねばならないときがくる。音楽院で勉強しているような生徒にとって、「自分で自分を教える」ことが非常に重要である理由の一つは、特に高いレベルで技術的な細かいところを洗練させてゆくときに、自分自身以外が自分に教えるのはほとんど不可能だからである。事実、この件について私は多くの優れたホルン奏者と話し合ったが、彼らはみんな、大部分は自分で身に付けたと感じていて、特により高いレベルでは、数年間音楽院で過ごしたにも関わらずそうなのである。自分自身以外はだれも、自分が楽器を演奏する過程で正確に何が起きているか、はっきり判断するための感覚的なフィードバックを持っていないのである。従って、「自分自身で教える」以外は、 息や唇のコントロールの繊細な事に関しては、直感的に推測しているに過ぎないのである。

興味深い事に、効果のあるホルンレッスンに必要な、「聴く」ための繊細な能力は、演奏レベルの習得の過程で経験した自己観察から直接得られた能力と、まったく同じな部分が多い。実際、わたしなら、「自分で自分を教えること」に成功した経験を持たない教師は、高いレベルの生徒にとって本当に技術的に価値ある事を伝えることは不可能だと主張する。

その5へつづく

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