ひとりでやってみるアレクサンダー・テクニーク

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【まずはやってみよう】
ここでは、アレクサンダー・テクニークをまずは自分ひとりでやってみて、実感してみて、練習や演奏に活かしてみる方法を分かりやすくお伝えいたします。

【身体という楽器】

音楽をする人にとって、「身体」は演奏の全てを担う楽器です。

しかし、その「身体」がこれまた謎が多く、いったいどうすれば思い通りになるのかはどんな教則本にも書いていないし、またどんな素晴らしい音楽や楽器の演奏家、先生に尋ねてもなかなか分かりません。

姿勢を意識すると、呼吸を忘れ、
呼吸を意識していると、フォームが崩れ、
フォームを意識していると、身体が硬くなり
テクニックを意識していると、姿勢の事を忘れ、
手先を意識すると、重心のことがおろそかになり、
重心のことに気を配っていると、自由に動けない感じがして、
etc…

大事なことはたくさんあるのに、その全てを意識したりチェックしたりできない。いったいどうすれば大事なことが全てバランス良く揃うんだろう?

そういう悩みや問題式に役立つかもしれないのが、アレクサンダーテクニークというメソッドにおいて特に注目する、「頭と身体全体の関係」です。

【頭と身体全体の関係】

頭と身体全体の関係。

これはF.M.アレクサンダーという19世紀生まれのオーストラリア出身の俳優が、自身の声が出なくなってしまうという状況を克服しようとする過程で着目されました。

F.M.アレクサンダーが経験的に見出していったのは、

『頭の動きが身体全体に大きな影響力を持っている』

らしい、ということです。

これがどういうことかは、実体験を通して理解していきましょう。

実験A

1:両手をなにげなく挙げて下さい。どこまで挙がりましたか?挙げ心地や労力はどんな感じがしますか?

2:頭を首や胴体に対して固定してみてください。「頭を絶対動かさないようにしよう」と頭を背骨のほうに向かってグッと引き込んでみてください。首が硬くなるのを感じると思います。

3:そうやって頭を固定したまま、両手を挙げて下さい。どこまで挙がりましたか?挙げ心地や労力はどんな感じがしますか?おそらく手の位置が下がり、腕がかなり疲れるでしょう。

4:腕を挙げたまま、頭を固定するのをやめて下さい。「頭を動けるようにしてあげよう」と思ってみると、ふと緩むでしょう。すると、腕が軽くなって可動範囲が増し、もっと挙がるようになるかもしれません。

実験B

1:イスから立って、そして座って下さい。

2:さっきと同じように、頭を固定してみてください。

3:頭を固定したまま、イスから立って、また座ってみてください。どんな感じがしますか?脚の動きはどうでしたか?イスの座るのが怖く感じることもあります。

4:頭を動けるようにしてあげてください。

5:イスから立って、そして座って下さい。するとさっきよりずいぶん立ち座りがスムーズになっていませんか?さっきは「立とう」と思ってもなかなか立てなかったのが、今度は「立とう」と思っただけで立てたかもしれません。

実験C

1:鼻からゆったり息を吸って、そして口からフーッと吐いてみて下さい。

2:さっきと同じように、頭を固定してみてください。

3:頭を固定したまま、鼻から息を吸ってください。….. おっと、なんと驚いた事にまったく吸えませんね!

4:頭を動けるようにしてあげましょう。すると、ふと体が緩むでしょう。その拍子にあっというまに簡単に息が入ってくるかもしれません。

5:鼻からゆったり息を吸って、そして口からフーッとに吐いてみて下さい。頭が固定されているのと動けるようにしてあげているのとでは、呼吸がまったくちがっていませんか?

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以上、実験A~C によって、頭を固定すると、腕、脚、呼吸といろんなところに影響があったのが実感できたかと思います。

【頭を動けるようにしてあげて、そうすることで身体全体をついてこさせる】

さて、演奏をするとき、身体がうまく働いてほしいですよね?

それを大いに助ける可能性があるのが

「頭を動けるようにしてあげて、そうすることで身体全体をついてこさせる」

ということです

音を間違えないようにしようと意識すると、身体がむしろ緊張して失敗が増えがちになるのは誰しもありがちなことと想いますが、
それを考えると、「頭を固定しないように」というような「気をつける」感じよりは、能動的にどうしたいかを考えるほうが実践しやすいように思います。

なので「頭を動けるようにしてあげて、そうすることで身体全体をついてこさせながら」やりたいことをやっていくようにするのです。

【実践してみよう】

実践は、とーっても簡単。

身体がもっと自由に思い通りに動いて欲しいな、もっとラクに自然にできたらいいな、と思う事であればなんでも

「頭を動けるようにしてあげて身体全体をついてこさせながら」と思いながら、いろんなことをやってみましょう。

「頭を動けるようにしてあげて身体全体をついてこさせながら」、バイオリンを弾く

「頭を動けるようにしてあげて身体全体をついてこさせながら」、歌を歌う

「頭を動けるようにしてあげて身体全体をついてこさせながら」、トランペットを鳴らす

まずはここから始めてみましょう。

演奏上の特定の問題や領域で改善や向上を求めている場合も同じ。

「頭を動けるようにしてあげて身体全体をついてこさせながら」、構える

「頭を動けるようにしてあげて身体全体をついてこさせながら」、アンブシュアを作ってみる

「頭を動けるようにしてあげて身体全体をついてこさせながら」、フィンがリングを確認してみる

「頭を動けるようにしてあげて身体全体をついてこさせながら」、手首の角度をコントロールする

というふうに。

アレクサンダーテクニークと、それを活かす対象(演奏など)の関係について少し専門的な観点から書いた文章もぜひご参照ください→こちら

【効果が実感できないときは】

これを読んだだけでも実践をスタートできます。

実際これまでも、私が書いている事を実践してすごく役立ったという声をいくつも頂いています。

その一方で、文章だけではよく分からない、使い方が分からないという声もたくさん聞きます。

アレクサンダー・テクニークもまた技術・スキルですから適切な学習と練習が必要になります。

楽器の演奏を学ぶとき、誰しも教本に書いてある「構え方」や「弾き方」を身に付けることがなかなかできずに困ったという経験をお持ちではないでしょうか?そんなとき、どうしますか?

答えは簡単。アレクサンダーテクニークの先生に、このことを教えてもらい、実践できるようにするためにレッスンを受けに行くのです。

この恩恵を自分も得たい。身体をもっと自由に使えるようになりたい。自分の潜在能力をもっともっと発揮したい。

そういう望みをお持ちならば、ぜひレッスンを受けてみましょう。