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アレクサンダーテクニークを、自分自身の練習や演奏にまずとりあえず取り入れていく方法を説明している記事をお読みいただきますと
Ex:
・アレクサンダーテクニークとは
・ひとりでやってみるアレクサンダーテクニーク
・吹奏楽部の合奏にアレクサンダーテクニークを取り入れる
これらの記事の中に出てくる
『頭が動いて身体全体をついていかせながら、やりたいことをやる』
という概念があります。
このことについて、ここからは短いながらも少し踏み込んだ説明と補足をしたいと思います。
『頭が動いて身体全体をついていかせながら、やりたいことをやる』
の前半
「頭が動いて身体全体をついていかせながら〜」
の部分を『アレクサンダープラン』、
後半の
「やりたいことをやる」
の部分を『アクティビティプラン』という言葉を当てて、この章の便宜上、区別します。
【アレクサンダープラン】
『アレクサンダープラン』は、
歩く、
座る、
呼吸する、
歌う、
楽器を演奏する、
など任意の活動をするにあたって、自分全体をどう使っているか、中でも頭と胴体という『軸』をどう使っているかに相当します。
その『軸』の使い方を、あなたがあなたの身体能力をもっと発揮しやすいような方向に持っていくのが、
「頭が動いて身体全体をついていかせる」
ということです。
アレクサンダーテクニークの先生はある意味、「軸の使い方」の専門家であると言うことができます。
【アクティビティプラン】
対して『アクティビティプラン』は
「歩く」なら
・どんな道を
・どんなスピードや靴や状況で
・どんな風に脚・足・腕などを使って行うか
「楽器を演奏する」なら
・どんな曲・フレーズを
・どんな楽器や体格や状況下で
・腕、脚、息、唇などをどう使って行うか
に相当する部分です。
歌や楽器の先生は、これら特定の活動にまつわることの専門家であると言うことができます。
なのでホルン奏者でありアレクサンダーテクニーク教師であるわたしは、
「軸の使い方と、金管楽器の専門的演奏技術の専門家」
であるということになります。
世界には、ヴィオリン奏者としての専門的背景を持つアレクサンダーテクニーク教師もいればチューバ奏者として専門的背景を持つアレクサンダーテクニーク教師もいるし、オーケストラの各楽器に関して、世界にどの楽器も数人づつはその専門的背景を持つアレクサンダーテクニーク教師が存在していると思います。
また、例えば理学療法士として医学的な専門的背景を持つアレクサンダーテクニーク教師もいれば、カウンセラーとして心理学的な専門的背景を持つアレクサンダーテクニーク教師もいます。どうして皆、なんらかの背景を持つかというと、アレクサンダーテクニークは単体・単独では存在し得ないからです。
なぜかというと、「アレクサンダープラン」で上述したように、アレクサンダーテクニークは特に「軸の使い方」を扱いますが、人間はその「軸」をいつもなんらかの行動のなかで使っているからです。
【互いに影響し合う】
このように、『アレクサンダープラン』と『アクティビティプラン』は便宜上の区別なので、実際には相互に影響します。
主に頭と胴体という『軸』をどう使っているかは、ふだんあまり考えることもないですが、歩くことであれ演奏することであれその行動のやりやすさや結果に大きく影響することがあります。
それゆえ、歩くことや楽器を演奏することの詳細を分析したり直接的に変えようとしなくても、『アレクサンダープラン』の学習だけで大きく変化することがよくあります。
一方で、どれだけ軸の使い方がよくても、『アクティビティプラン』の問題で結果が良くならなかったり、改善が限定的なこともあります。
たとえば金管楽器を演奏するひとであれば、自分の解剖学的条件に合わないアンブシュア操作を行っていたり、お腹に息を入れようとするなど現実的に不可能なことをやろうとしていたときなどです。
そういった誤った、あるいは無理のある『アクティビティプラン』の影響で、軸の使い方に無理が生じると捉えることのできるケースは頻繁にあります。
それゆえ、軸の使い方を改善するために越そ、直接的に『アクティビティプラン』を見直す必要がある場合もあります。
【音楽とアレクサンダーテクニーク】
このように、わたしがこの本でみなさんと共有するアレクサンダーテクニークは、
『アレクサンダープラン』
と
『アクティビティプラン』
から成り立ちます。
ですから、「頭が動いて身体全体をついていかせる」ところだけをやってもらうことはありません。
必ず、それを「あなたのやりたいことをやりながら」行って頂きます。
また、この本のなかの各章で『アクティビティプラン』に相当する「〜をやってみましょう」と提案するときは、
そのやってみる内容を十分に説明した後には、
「頭が動いて身体全体をついていかせながら、それをやってみる」
という形で提案やまとめを行います。
そうすることで、この本全体を通じて
「音楽を演奏すること・表現すること」
と
「アレクサンダーテクニークを用いること」
を常につなげていきます。
まずはぜひ、
「頭が動いて身体全体をついていかせながら、歩く」
「頭が動いて身体全体をついていかせながら、座る」
「頭が動いて身体全体をついていかせながら、息をする」
「頭が動いて身体全体をついていかせながら、楽器を構える」
「頭が動いて身体全体をついていかせながら、音を一音出す」
といった単純な作業から、やってみてください。
Basil Kritzer