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ここでは、音楽するひとを大いに悩ませる「本番で感じる緊張と恐怖」を乗り越えていく方法をお話しします。
なるべく深く、突っ込んで、あらゆる側面をしっかり含めて本当に頼れるガイドを作りたいと思います。
その分、長文です。
でも、かなりの確率で、あなたにも役立ちます!
どうぞおつきあいください。
【わたしも20年悩んでいます!】
本番で感じる緊張と恐怖は、わたしの音楽家人生において最大の問題、苦しみでした。
中学2年生のときに出場したアンサンブルコンテストで、強烈な緊張と恐怖を経験し、それ以来、ホルン演奏に関しては極度の緊張に悩むようになりました。
6歳のときに始めたピアノ演奏では、物凄くドキドキしても、本番では毎回よい演奏ができていました。
50人を前に即興的にセミナーをしながら話やレッスンをしていく場面でも、やはりドキドキしたりヒヤリとしたりしても緊張に呑まれてしまうことはありません。
なのに、ホルン演奏だけは、本番で感じる緊張と恐怖はいまも経験することがあります。
正直、そのことに引け目やうしろめたさを感じるところもありました。
自分が完治していないのに、本番で感じる緊張と恐怖で悩んでいるひとのサポートをしている….。
自分に、本番で感じる緊張と恐怖を乗り越えていくための何かを教えることなんて本当にできるのだろうか?
そういう疑念に悩まされながらも、仕事としての演奏の機会を頂いたり、プロオーケストラにエキストラ出演をするチャンスを頂いたり、オーケストラを背に協奏曲を演奏する経験をしてきました。
それらの演奏の中には、うまくいったものもあれば、緊張に呑まれたものもあります。
しかし、音大への進学、その後の演奏活動、そしていま仕事の中心であるレッスン活動を通じて
・ 本番に向けてどんな取り組みが必要で
・ 本番で感じる緊張と恐怖はなぜ起きて
・ それをどう乗り越えるのか
ということがかなり深く理解できるようになってきました。
いま、この問題を乗り越えていくための仕組みや方法論を手探りしながら見つけ、教わり、試し、洗練させていくことができています。
【本番で感じる緊張と恐怖のプラス面】
「本番で感じる緊張と恐怖」は、自分と音楽がどう関わるのか、音楽が自分の人生にどれほど大切なのか、そういう最も根本的で深いところを再度問い直し、そこのつながりなおして自分自身をケアしていく必要性を喚起するのではないか、あるいはそういう面がひとによってはあるのではないか。
わたしはそう感じています。
本番で感じる緊張と恐怖に本気で向き合うことは、
・ 演奏技術
・ 音楽への愛と信頼
・ 自分自身の心
のいずれをも磨き高め、またよりラクなものしていく力を秘めています。
ではこれから、本番で感じる緊張と恐怖との向き合い方、乗り越え方を述べていきたいと思います。
それは8つの方法から成ります。
ひとつひとつが、それぞれ役に立ちます。
ひとや場合によって、どれかがほかのものより大切であったり、効果的であったりするのではないかと想像します。
しかしながら、その全てが大切で役立つものであることは確かです。それぞれ実例などを交えて説明しますので、なるべく簡潔には書きますがそれなりの長さになってしまうことをどうぞお許しください。
【方法① 実力が発揮出来る体の使い方】
本番の緊張に呑まれてしまったときに、身体が思い通りに動いてくれず、演奏技術がちゃんと機能しなくなって失敗してしまうー。
わたし自身の「あがり症体験」としてはそれが最も強く経験する・感じることです。
しかし幸いなことに、どんな状況下でもある程度、自分の身体を演奏が機能するような良い状態に持って行けるような効果を、
「アレクサンダーテクニーク」の体系の学びから感じています。
その方法は、ほとんどのひとがあまり聞いたことがないものなので、この記事を読んでいただくうえでさっそくハードルが登場してしまいますが、とても大事で、とても効果的で、とても頼りになるかもしれない方法です。
ほかの7つの方法よりも、ひときわ効果的なケースが多いと思います。ですので、ぜひ読んで、試して、実践してください。
本番の緊張に誘発されている硬さ
なんだか肩が凝ってきたな、と思っているうちに、
腰が疲れてきて、
呼吸が浅くなってきて、
楽器がずっしり重くなって支えるのが大変になり、
指がうまく回らなくなって、
口がどんどんバテてくる….。
そういう悪夢のような連鎖をあなたも体験したことがあるかもしれません。
どのようにして、このように身体がだんだんと連鎖するかのように悪い状態になってしまうのでしょう?
それ似た状況をで、まずは「わざと」その状態を作り出すことをやってみます。
頭をわざと固定してみる
アレクサンダーテクニークにおいて着目する、「体が使いにくい状態」の大きなポイントに、
「頭を必要以上に固定していて、その影響で身体全体が硬くなっていく」
という見方があります。
どういうことかは、実際にやってみることで理解していただけると思います。
① まず、鼻から息をゆっくり吸います。
② 口からフーッと吐きます。
③ 2〜3回これを繰り返します。
→これが、「ふつう」の状態で行った呼吸です。まずそのときの感触、感覚、労力、呼吸のしやすさなどをちょっと観察して覚えておきます。
④ 頭をグッと、背骨の方に向かって押し付けるように固定してみてください。動かないように。
⑤ 頭を固定したまま、鼻から息を吸い
⑥ 口からフーッと吐きます。
→先ほどと比べて、呼吸の感触、感覚、労力、やりやすさはどう変化していますか?おそらく呼吸が止まって、身体が硬くなり、非常に呼吸がしづらく感じていることと思います。
この同様の比較を、
・歩く
・走る
・声を出す
・イスから立ったり座ったりする
・楽器を構える
・楽器で1音奏でる
といったほかの動作でも行ってみて、「ふつう」のときと、頭を背骨の方に引き込み、押し付けるようにしているときとでどんなちがいがあるかを調べてみてください。
良い状態を作る
なんだかきょうは身体が楽だな、と思っていると、
息がたっぷり吸えて、
自由にめいっぱい表現できて、
積極的な気持ちになってきて、
楽器も軽く感じられて、
いつもよりもっと力強い良い音で演奏できた。
そんな素敵な経験をしたことをあるひとも、ごくたまにかもしれませんが、いらっしゃると思います。
こうなると、本番は良い演奏ができますね。
この状態になるのを、運任せでなく、自分の意志で自分自身の身体に促すことが、アレクサンダーテクニークの着眼点を生かすことで、ある程度できる場合があります。
そのやり方は、悪い状態を引き起こすことの「逆」をやることです。
思い出してみてください。さきほど、頭を固定しながら呼吸したり、歩いたり、楽器を構えたりすると、非常にやりづらかったですよね?
そこで、この逆を行うことで、体を使いやすい状況にしよう、というわけです。
頭を必要以上に固定するの逆は、「頭を動けるようにしてあげる」ことです。
あるいは、頭を背骨の方に向かって押し付けるということの逆は、「頭が背骨から離れるような方向に動くようにする」ということです。
頭を動けるようにしてあげて身体全体の状態を良くする
① まず、鼻から息をゆっくり吸います。
② 口からフーッと吐きます。
③ 2〜3回これを繰り返します。
→これが、「ふつう」の状態で行った呼吸です。まずそのときの感触、感覚、労力、呼吸のしやすさなどをちょっと観察して覚えておきます。
④ もういちどわざと頭を背骨の方に引き込み、押し付けるように固定します。
⑤ さきほど確認したように、体のいろいろな場所に変化を感じることと思います。
⑥ 頭を動けるようにしてあげます。あるいは、「頭が背骨から離れるような方向に動くように」と意識します。
⑦ 身体の感覚がなんだかいつもとちがってくるかもしれません。
⑧ そのまま鼻から息をゆっくり吸い、口から吐きます。
→呼吸の感覚、やりやすさ、キャパシティ、身体全体の感覚はどうなりましたか?良くなっているのが実感できれば何よりですが、ちょっとした違和感や、ふわふわした感じがあれば、それでも実験成功です。演奏にはとてもよい状態である可能性があります。
この比較を、
・歩く
・走る
・声を出す
・イスから立ったり座ったりする
・楽器を構える
・楽器で1音奏でる
といったほかの動作でも行ってみて、「ふつう」のときと、頭を動けるようにしてあげて身体全体の変化を促しているときとでどんなちがいがあるかを調べてみてください。
頭を動けるようにしてあげたいタイミング
この、頭を動けるようにしてあげてそうすることで身体全体を良い状態に持って行きながら演奏の様々な場面で行っていくことが、本番で感じる緊張と恐怖を乗り越えるうえで非常に役立ちます。
・ 楽器を組み立てるとき
・ 音を奏でるために立つ(座る)とき
・ ソルフェージュをするとき
・ 息を吸うとき
・ 息を吐くとき
・ 楽器を構え始めるとき
・ マウスピースを口に接触させるとき
・ アンブシュアを作るとき
・ 音を変えるとき
・ ステージに一歩踏み出すとき
・ お辞儀をするとき
・ 聴衆を見るとき
Etc.…
いずれも、技術上またはパフォーマンス上必要かつ重要性の高いタイミングや動作です。
これらひとつひとつに関して、頭を動けるようにして、そうすることで身体全体をより使いやすい状態に持って行きながら実行するようにすると、本番で感じる緊張と恐怖を乗り越えられる可能性がグンと高まるケースがあるのではないか、とわたし自身の経験、およびレッスンにいらしている多数の生徒さんのフィードバックから感じます。
【方法② 音楽をしたいという気持ちを高める】
「音楽を演奏したい」という気持ちが薄れていたり、弱まったり、押さえつけられていたりすると、身体はうまく動かず、硬くなったり虚脱してしまったりすることがあるように思います。
このような状態のまま人前で演奏すると、緊張に呑まれてしまうリスクは高いでしょう。
逆に、音楽を演奏したいという気持ちがとてもはっきりしていて、強ければ、何らかの理由で身体に硬さがあったり、調子が悪かったりしたとしても何とか演奏できてしまう可能性が高まると思います。
これほど大事な、「音楽を演奏したい」、という気持ち。この気持ちを高め、回復する方法をご紹介します。
〜音楽を聴く〜
すばらしい音楽を聴き、音楽に触れること自体が、あなたの心を動かして感動を生み、あなたの音楽をしたいという気持ちを呼び覚ましてくれます。
本番で失敗したり、演奏技術上なかなか上達できなくて苦しんでいたり、するようなこともよくあるでしょう。
そういうときこそ、「うまくやらなきゃ」「どうしよう、このままではいけない」というような焦りや怖れの気持ちから離れて、ゆっくり音楽を聴き、その世界に浸りましょう。
すると、だんだん心がほぐれてきて、感情が動きだし、身体も気持ち良くなってきます。
そうなってきたら、あなたの「音楽を演奏したい気持ち」がまた元気になってきたということです。
学校や所属楽団、レッスンの場などで、自分の演奏能力に劣等感を感じることがあったり、ひどいことを言われて傷付いていたりすると、音楽を聴くと複雑で嫌な気分が湧く事がありますね。
実はこうなってしまって音楽をすることをやめてしまう人も多いようです。音楽自体は大好きなのに、音楽活動にまつわる嫌な体験もあるので、大好きなはずの音楽を聴くと、嫌な記憶や気分も思い出してしまうのです。
大切なのは、常に「音楽が好き」という気持ちがあることであり、そこに着目し、信頼することです。
音楽活動には必ず人間関係が伴います。嫌な思いをするのは、実際には必ず人間関係上でのことです。音楽そのものを嫌になっているのではありません。
すばらしい演奏をするために一番大切なパワーである「音楽が好きな気持ち」があなたにもちゃんとあります。
散歩をしながら音楽を聴くのもよいでしょう。一定時間以上の長めの散歩は頭の中から嫌な思考を消す効果があります。
〜よく休む〜
「音楽をしたい気持ち」が薄れてしまう、大きな原因のひとつは、疲労です。
音楽に対して強い向上心を持っているひとであればあるほど、演奏や練習とに真剣に向き合おうとします。
そんなひとほど、「自分が疲れている」ことを見過ごしてしまうことがよくあるように思います。
コンクールや定期演奏会に向けて連日のように練習があると、当然のことですが疲労がたまります。人間も動物ですから疲れます。
先輩や先生から「精神力」や「根性」でなんとかしなければいけないというようなことを言われているかもしれません。でもどれだけ頑張っても耐えても、やっぱり疲れて動けなくなったり体調を崩したりします。
そうならずに済んでいるひとは、実際は運がよいだけです。人間は、倒れるときにはと倒れます。耐えられる時間・量はひとそれぞれなのです。
疲労が溜まっているのをずっと頑張って耐えていると、必ず副作用があります。
それは健康面に出るかもしれないし、人間関係に出るかもしれません。あなた自身の健康、家族、友人、パートナーといった存在は、練習することや演奏をうまくいかせることより遥かに大切なことです。
ですので、疲れているということをどうにかしようとして、自分や他人を犠牲にしないであげて下さい。
休むことは、本当に大切です。
練習や部活に向かおうとしたとき、すると身体が変に重くて息苦しくなる感じがしたら、あなたはおそらく数日間の休憩を必要としています。
あなたが最も大切にしなければならないのは、練習や努力や団体でなく、「自分自身」です。
〜問いかける〜
わたしたちは学校や部活や会社などでは、答えや結果ばかりを求められることが多いので、実は「問いかけ」や「疑問」こそが人生を前に進めていく大きなパワーを秘めていることを忘れがちです。
自分自身に「問いかける」という行為は、わたしたちの想像以上に効果があります。
音楽をやりたいという気持ちを見失ってしまっているとき、「問いかけ」が大いに役立つ可能性があります。
以下に色々な価値ある「問いかけ」の例を挙げますので、興味を感じたものから試しにやってみてください。
「自分は、何が好きなんだろう?」
「自分は音楽が好きだろうか?」
「自分は、音楽の何が好きなんだろうか?」
「音楽を聴く事が自分に与えてくれているものって、何だろう?」
「音楽を演奏することが自分に与えてくれているものって、何だろう?」
「練習をすることは、自分にとってどんな意味があるんだろう?」
「いままで音楽が大好きに思えていたときは、どんなときだっただろう?」
「自分が音楽をすることは、自分とそして身の回りのひとにとって、どんな意味があるんだろう?」
Etc….
答えがなくても構いません。
むしろ、答えがなかなか出て来ない「問いかけ」こそ、ゆっくりと問いかけ続けてみるとよいでしょう。
「問いかける」ということ自体が、あなたにとってとても大事で、効果的な行いです。
【方法③ 思考の毒抜き】
身体を悪い状態に持っていったり、音楽をしたいという気持ちを殺してしまったりする原因のひとつとして、『ネガティブな思い込み』があります。
つまり、ネガティブな思考自体が問題なのではないのですが、ネガティブな思考の中身を本気にしたり、信じてしまったりしたときに問題になります。
ネガティブな思考や誤った思考は、その思考を信じたときに「毒」になります。
毒は、
・ 演奏すること
・ 本番
・ 自分の演奏能力
・ 自分自身の存在価値
に関して持ってしまうことが多いようです。
本番で感じる緊張と恐怖に呑まれがちなひとは、そうでないひとよりネガティブな思考を数多く、そして強く信じてしまっている傾向があります。
代表的な毒思考としては、
「次の本番でボロボロに失敗してしまうだろう」
「自分は上手に演奏できないから、演奏する価値がない」
「聴いているひとは自分のことを、下手だと思っている」
などが挙げられます。
こういった思考自体は、誰でも持ってはいます。しかしそれを信じてしまっているひとは、本番のみならず演奏や心身の状態全般にその悪影響を受けます。
こういった「毒」となる思考を「毒抜き」する作業がとても有益です。
わたしが「思考の毒抜き」と呼ぶこの作業は、アメリカのバイロン・ケイティという方の手法を基本にしています。
思考の毒抜きは
1:毒思考を特定する
2:その思考が絶対に本当か問いかける
3:その思考が自分にどのような影響を与えているか確認する
4:その思考が無かったとしたら、と想像する
5:その思考の「逆」は何かを考える
というステップから成ります。
以下に、この思考の毒抜きの実例を紹介します。
ホルンの演奏活動をされている A さんより、メールでいただいたご相談から始まったやりとりです。思考の毒抜き作業を、メールでお手伝いしたものです。
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Aさん:
数年前からオケ等、ソロの部分があると体が固くなってドキドキして音が震えるようになり、バジルさんのブログやメルマガを参考に何とか改善しようとしてきました。
ホルンを教えている立場なので、失敗してはいけない…という気持ちが余計にそうさせるのか…と思い、意識しないようにしようとしてきました。
先日、やはりアガッてしまいました。周りにはあまり気付かれてないようですが、ある人に相談すると、よっぽど自分のこと上手いと思ってるんじゃないの?と言われて、ショックで……もう吹くのはやめた方がいいのかな…と思い悩んでいます。
バジル:
そんなことを言うひとがいるなんて…
相談する相手を誤ったかもしれませんね….
そういうアドバイス、よく聞きますけれど、役に立つのは10回に1回くらいで、大抵傷付きますよね。
さて、本題。
『ホルンを教えている立場だから失敗できない』
・これは本当ですか?
・そう思っているとき、
→身体はどうなりますか?
→どんな気持ちや感情になりますか?
→そういう身体と気持ちのとき、人間関係や自分の振る舞いはどうなりますか?
Aさん:
内心では「大丈夫かな?私…」と思いながら、平気なふりをしていると思います。吹けて当然、緊張なんかしないでしょ!って言われ続けてきたので、そうしなきゃいけない…そうあるべきだ!と思ってしまい、本心を話していません。いつもいつも嘘ついてる感覚で、自分に嫌悪感を覚えてます。
バジル:
『私は吹けて当然、緊張してはいけない』
・これは本当ですか?
・そう思っているとき
→身体はどうなりますか?
→どんな気持ちや感情になりますか?
→そういう身体と気持ちのとき、人間関係や自分の振る舞いはどうなりますか?
Aさん:
私も人間だから、失敗すると思います。でも、緊張しちゃダメだ!と思うほどに体は固くなり、少しでもマウスピースを口から離すと2度と吹けなくなる気がして必死に押し当ててしまいます。そうして吹いた後は、自分の演奏を聴いて周りがどう思ってるか気になって仕方なくなり、聞かれもしないのに言い訳を考えてます。周りの人からは、何も言われたりはしないのですが…
バジル:
『私は吹けて当然、緊張してはいけない』
・これは本当ですか?
・本当でないとしたら、本当でない理由を三つ考えてみて下さい。
Aさん:
本当ではない理由
1:緊張してはいけない…と、言われた訳ではない。
2:今まで一度も失敗せずにやってきた訳ではない。
3:当然…なんてことはない。機械ではないから。
バジル:
素晴らしい!
では、いまから演奏するところだと想像してみましょう。舞台袖とか。
『わたしは吹けて当然、緊張してはいけない』と思ってみてください。
→身体はどうなりますか?
→どんな気持ちや感情になりますか?
→そういう身体と気持ちのとき、人間関係や自分の振る舞いはどうなりますか?
つぎに、同じ場面で、
『わたしは吹けて当然、緊張してはいけない』という思いが一切頭をよぎらなかったとしたら。なぜかは分からないけれど、全く思わなかったとしたら、とゆっくり想像してください。
→身体はどうなりますか?
→どんな気持ちや感情になりますか?
→そういう身体と気持ちのとき、人間関係や自分の振る舞いはどうなりますか?
Aさん:
ひとつめ;
体が固くなる。
鼓動が速くなって息が吸えない感じ。
失敗したらどうしよう…という気持ちで一杯。
皆は立派で自分だけがダメな気がする。
すごく暗い気持ちなのに、平気な振りをしている。
ふたつめ;
リラックスして深く息が吸えてゆっくり吐ける。
何も考えず音楽に集中できる。
皆との音の重なりを楽しめる。
音楽をやってる喜びを感じることが出来る。
バジル:
素晴らしい。
では、
『わたしは吹けて当然、緊張してはいけない』
という思考を、これからも続けたいですか?あるいは、自分の為になるような理由でキープした方がよい理由はありますか?
Aさん:
ありません。そんな事考えずに音楽に集中したいです
バジル:
素晴らしい。
では、
『わたしは吹けて当然、緊張してはいけない』
の原文の「〜してはいけない」を逆にして、あとは原文ままの文章を書いて、声に出してみてください。
Aさん:
私は吹けて当然、緊張してはいけないなんてことはない。
バジル:
そう、吹けて当然だから、緊張してもよい。これも真実です。
緊張しても吹ければいいし、吹けるのだから。
わかりますか?
では、
『わたしは吹けて当然、緊張してはいけない』
の原文の「吹けて当然」を逆にして、あとは原文ままの文章を書いて、声に出してみてください。
Aさん:
私は吹けて当然ではないから緊張してはいけない。
バジル:
そうです。決して「吹けては当然」ではないから、緊張してはいけないんです。緊張したら、吹けないでしょう?これもまた真実。
では、
『わたしは吹けて当然、緊張してはいけない』
の原文の「吹けて」を逆にし、また「緊張」も逆にして、あとは原文ままの文章を書いて、声に出してみてください。
Aさん:
私は吹けなくて当然だから、リラックスしてはいけない
バジル:
そうです。本当に考えているのは、それに近くありませんか?
Aさん:
……はい。何か今、そう言われてドキッとしました。
バジル:
『自分は吹けなくて当然だから、努力を怠ってはならない』と信じていれば、それは本番で吹けなくなっても不思議ではありません。
『自分は吹けない』
→それは本当ですか?
→本当でないとしたら、本当でない理由を三つ考えてみて下さい。
いまから演奏するところだと想像してみましょう。舞台袖とか。
『自分は吹けない』と思ってみてください。
→身体はどうなりますか?
→どんな気持ちや感情になりますか?
→そういう身体と気持ちのとき、人間関係や自分の振る舞いはどうなりますか?
つぎに、『わたしは吹けない』という思いが一切頭をよぎらなかったとしたら、なぜかは分からないけれど、全く思わなかったとしたら、とゆっくり想像してください。
→身体はどうなりますか?
→どんな気持ちや感情になりますか?
→そういう身体と気持ちのとき、人間関係や自分の振る舞いはどうなりますか?
Aさん:
「わたしは吹けない」というのは本当ではないです。
理由;
・実際に吹いている。
・誰かに吹けない…と言われた訳ではない。
・ちゃんと演奏会に出演している。
「わたしは吹けない」と思っていると;
・体がこわばって手が震える。
・絶望的な気持ちになる。
・人に接したくなくなる。
「わたしは吹けない」という思考が無いところを想像すると;
・体は心地よく
・音楽の事で頭が一杯になる。
・皆の笑顔を受け入れる事ができて、幸せな気持ち。
バジル:
素晴らしい。
『自分は吹けない』の逆を考えてみましょう。
吹けない、の逆
吹けない(のは悪い事だ)、の逆
吹けない(のはダメだ)、の逆
自分は、の逆
Aさん:
自分は吹ける
吹けるのは良い事だ
吹けるのは楽しい
自分の逆は他人……
バジル:
『自分は吹けない』の逆の例
・『自分は吹ける』→事実ですよね。
・『自分は吹けない、のは良い事だ』→その可能性はありませんか?
・『自分は吹けない、それでいい』→その可能性はありませんか?
・『みんな吹けない』→それもある程度真実ではないでしょうか?
どれか、すとんと胸に入る物はありますか?
Aさん:
自分は吹けない…それでもいい…ホルンが好きなんだから…と思います。
バジル:
それならばそれが、いちばん真実に近く、ストレスが少ないのです。
それを繰り返し思い出して行くことが、緊張に呑まれずに、力を発揮できるいちばんの近道です。
Aさん:
はい。わかりました。
今朝からの緊張がほぐれて泣けてきちゃいました。
ありがとうございます。
バジル:
涙は、とてもとても良い事です。
たぶん繰り返し泣いて、自分の中の真実に何度も触れ直し、発見し直す必要があります。
涙は、筋肉に溜め込まれた感情が、筋肉が緩んで解放されたために出る、という話を聞いたことがあります。
Aさん:
本当にありがとうございます。
これからレッスンしに行ってきます。
ありがとうございました。
– – –
– – –
後日談:Aさんよりメッセージを頂きました。
こんばんは。先日は本当にありがとうございました。
今日、本番がありました。
今朝、家を出るときは少しドキドキしたので、頭の中でずっと「自分はダメなホルン奏者でもいいんだ」という言葉を繰り返していました。そうすると、他の余計な考えが頭をよぎることなく、演奏会を終えることができました。
ドキドキが体の震えにつながることもなく、何より唇の疲労感が今までより半減した感じがしました。
完全に……とまではいってないかもしれないけれど、自分をちゃんと認めて、前に進んでいける気がしています。
久しぶりに気持ちよく吹けたので、ご報告いたしました。
本当に本当にありがとうございました(*^^*)
【方法④ 音楽の意味や音楽のストーリーにつながる】
方法2で音楽をやりたい気持ちにつながったら、次のステップとして
演奏する音楽の意味やストーリーにとても具体的にひとつひとつ理解していく作業がとても効果的です。
また、この作業は音楽をやりたい気持ちを見つける一つの手段になることもあります。
なんであれ、あなたがそのとき演奏する音楽には、ストーリーがあるはずです。
はっきりとしたストーリーが無い場合は、その作品に込められているメッセージや、作品が描き出している意味、描写している状況や醸し出す雰囲気などがあるはずです。
それを知れば知るほど、あなたはその音楽を演奏するときに、したいこと・すべきことが明確になります。
やるべきことが明確になると、それだけで本番で感じる緊張と恐怖を乗り越えて良い演奏ができる可能性が大きく高まります。
なぜか?
本番で感じる緊張と恐怖に呑まれてダメになっているときは、自分のミスや他人がそれについてどう思うか、いったことにばかり意識がいきがちです。
音楽や作品と関係のないところにあなたの意識が向かっています。
これ自体も本番で感じる緊張と恐怖の大きな原因のひとつであり、また、それを促進してしまう作用もあるように感じます。
一方で、音楽のストーリーや意味を詳しく細かく具体的に知り、理解すればするほど、それを演奏する際はその「伝えたいこと」そのものに思考もエネルギーも向かいやすくなるのです。
音楽は、何らかの意味、メッセージ、ストーリーを「語る」ものです。
ですから、普段から練習の中で、何らかの意味、メッセージ、ストーリーを「語る」もしくは「生み出す」「作る」ようにしましょう。
音階練習なら、調ごとの雰囲気や性質があります。そこに何らかの「ストーリー」をつけて、音階を使って「語って」みましょう。
アルペジオでもロングトーンでも、その他の基礎的練習パターンでも、それぞれの調やテンポ毎に異なる雰囲気や性質があります。その雰囲気や性質に見合った「ストーリー」や「意味」を自分でつけて演奏しましょう。
これらの場合、「ストーリー」は、「猫が遊んでるよ〜」とか「愉快なおじさんが笑ってるよ〜」といった簡単なものでも十分です。
「意味」に関しては、音階の調、あるいは一音一音ごとに、あなたが感じ取るものは異なっているはずです。
Eb長調音階には特有の明るさと柔らかさがあります。
C短調音階には特有の鋭さ、悲しさと真剣味があります。
そういったものに「思いを馳せて」それぞれの音階や音を演奏する、それだけでもよいのです。
曲、作品を演奏するときは、
・作曲者の人生
・作曲者が育ち、生きた時代や文化
・その作品について作曲者自身が何と言っているか
・作曲者その人の生き様と、その作品を聴いていて思い浮かぶことからあなたが考える独自の解釈
・同時代や後世の作曲家、演奏家、批評家、音楽学者がその曲や作曲者のことをどのように語っているか
Etc.
そういったことを、興味本位で調べてみるといったことだけでも自然と、あなたの内側において、演奏する曲の世界がとても具体的で立体的で豊かに立ち現れます。
こうしてやりたいこと、やるべきことが明確になっていくと、本番で感じる緊張と恐怖を乗り越えられる可能性は飛躍的に高まります。
【方法⑤ 演奏技術のプログラミング】
本番で演奏する曲に関しては、
ひとつひとつのフレーズの弾き方、
ひとつひとつの音の出し方、
ひとつひとつのパッセージの通過の仕方
などを、「頭で分かっておくようにする」ことが非常に役立ちます。
本来、音階練習などの基礎練習をする理由は、「出したい音を出す」ということのやり方を、音階や一音だけという単位までに分割することでひとつひとつの音の生み出し方を技術的に意識して磨くためです。
ではそれはなんのためにやるのか?
音楽を演奏する際は音楽のことだけ考えていられるようにする(=ひとつひとつの音の出し方を考えなくても済む)ようにするためです。
ですから、本番の演奏時には理想的には技術的なことは一切考えないで、完全に音楽に没頭しているべきです。
しかし、とても重要なソロを担当するときや、協奏曲等のソリストを務めるなどの「大舞台」に備える際には、その音楽のフレーズ中のひとつひとつの音の出し方を、音階練習などのときと同じように技術的に考えながら・確認しながら練習する作業もぜひ十分重ねておくとよいでしょう。
「この音は、こう楽器を構えて、口をこうして、息をこうして….」
「この音からこの音に移るときは、指をこういうタイミングで動かして、脚でこういうふうに支えて…」
というように、演奏の設計図とかマニュアルのようなものを書いていくようなイメージです。
そうしておくと、演奏中にふと不安定になったり力んでしまったりして危険な状況になったたりしたとしても、しっかり作成して暗記もしておいた「マニュアル」のおかげでなんとか切り抜けられるのです。
いざとなっても切り抜けられる、と感じられれば、自信と余裕が生まれますから、音楽に集中しやすくなります。
音楽への集中は、本番で感じる緊張と恐怖を乗り越えるとても強力な方法です。
【方法⑥ 演奏空間とつながる】
演奏をするときは、あなたは身体や手で触れている楽器だけでなく、そのとき演奏している部屋やホールの空気も振動させています。
演奏しているホール自体が、あなたにとっては楽器の延長・身体の延長になのです。
ところが本番で感じる緊張と恐怖に呑まれがち人は、本番の舞台に立つと、目の前の演奏空間にたじろぎ、とまどい、圧倒されてしまうことが多いです。
心のどこかで、普段とは異なっている目の前の状況・空間を「拒絶」してしまうようです。
しかし舞台に立つとき、自らが立つ演奏空間の拒絶はパフォーマンスを著しく損ねます。
必要なのは拒絶の逆。
演奏空間と積極的につながることです。
ではどうすれば、演奏空間を拒絶するのでなく、積極的につながることができるのでしょうか?
演奏空間を自分自身に「インプット」するような作業が役立ちます。
実践を通して理解してみましょう。
次のようにしてみてください。
〜家などで練習しているとき〜
・本番のホールの写真をインターネットで探しましょう。ホールの客席やステージの写真だけでなく、外観、周囲の写真もあるとなお良いですね。写真をいろいろ見て、ビジュアルイメージを作り上げていきましょう。そして、そのビジュアルイメージを思い浮かべながら、練習をしましょう。
・自分の理想のホールを自由にイメージ化していきましょう。ステージの感じ、照明、明るさ、いす、譜面台、観客の雰囲気、音の響き。全て自分の好きなように理想のままにイメージの中で作り上げていきましょう。そして、その「ホール」の舞台の上で演奏しているつもりで、練習をしましょう。
〜実際の会場に着いたら〜
・実際の会場に着いたら、その会場の空間をどんどん自分の中にインプットしていきます。
・空いている時間を利用して、客席をくまなく歩き回りましょう。
・会場のあらゆる角度から、ステージを見てみましょう。
・客席の天井、床、壁もいろいろな角度や距離から眺めましょう。
・客席、ステージ、舞台袖や舞台裏。演奏空間のありとあらゆる場所を、見るだけでなく、触ったり、こすってみたり、コツコツと叩いてみたり、匂いを感じてみたり、温度を感じてみたりしましょう。
〜いざ、本番。ステージに登場したら〜
・客席を見ましょう。
・客席に座るひとりひとりを見ましょう。
・客席に座るひとりひとりの顔、服、色を見ましょう。
・ホールの空間のいろいろ隈無く眺めましょう。
・ずっと向こうの壁。
・横にある非常灯の色。
・最前列から見上げているひとたち。
・通路の板の色や材質。
こうして、「ホール」というあなたの楽器の延長、身体の延長である存在を、ひたすら自分へとインプットしていくのです。そうすることであなたとあなたの演奏空間が一体化していきます。
一体化すると、安心が生まれます。
怖くない、危なくないのです。
この感覚は、本番で感じる緊張と恐怖を乗り越えるうえで非常に重要なポイントです。
【方法⑦ アドレナリンサーフィング】
本番になると、わたしたちは興奮しますね。
大切なのは、これが正常かつ望ましいことである可能性が高い、ということです。
少なくとも、わたしはそう考えます。
なのに、多くのひとが、この興奮現象を「マズいこと」だと思っています。そして、自分を落ち着かせようとしてしまいます。
ですが正常な反応としての興奮を落ち着かせようとすると、身体が硬くなってしまうということがあるのではないか。よいと思ってやっていることが、マイナス作用になってしまっているのではないか。本番で感じる緊張と恐怖に陥る大きな要因のひとつであるように思います。
・ドキドキは、心臓が身体中に血液を送り届けようとしていると考えられるのではないか?
・汗が出るのは、身体の発汗作用。体温調整や代謝の健康な働きなのではないか?
・気持ちがソワソワするのは、脳が高度な情報収集モードに入って敏感になってくれている証拠なのではないか?
アスリートはこの興奮とそれに伴う状態ががパフォーマンスを高めることを知っています。
ですから、「テンションをアゲよう」と積極的に工夫します。
なのに音楽をするひとは、「あがってしまう」と言って、パフォーマンスを高めるために湧いてきているエネルギーを、もったいないことに押さえつけようとしてしまいます。
大切なのは、このエネルギーの高まりに乗って、高みに到達することです。
ステージ上の自分は、普段の自分と同じあってはなりません。
なぜか?
本番は特別だからです。
特別な場では、自分の殻を破って、真のパフォーマーとなる必要があります。高まるエネルギーがそれを可能にしてくれます。
湧き出るエネルギーを一滴残らずパフォーマンスに流し込み活用するためのエクササイズ「アドレナリンサーフィング」があります。
ワシントン州立大学演劇学部主席教員のキャシー・マデンさんが考案し、わたしが命名したものです。
アドレナリンサーフィングは
・自分の思っていること/感じている事をひたすら口に出す。
・五感で情報収集をする。
・自分の「好きなもの・こと」を口に出す
という3つのステップから成りますす。
「本番にエネルギーを花開かせるためのエクササイズ」です。ぜひやってみてください。
〜1:感じていることを全て口に出す〜
本番の日、朝起きたらきっと色んな気持ちや感覚が沸き上がるでしょう。身体が重く感じたり、不安を覚えたり、あるいは楽しみでどうしようもないくらいかもしれません。身体で感じることも、心で感じることも、全て声に出して言い続けます。こうすることで、自分の現在地・現在状況とより接点を持てます。これは家でも楽屋でもリハーサル室でも、本番舞台袖や本番中の休みの小節の間でもやってみるといいでしょう。
〜2:空間を感じ、感覚を活性化する〜
本番の演奏会場に着いたら、ホールの舞台や客席などを歩き回ってみてください。天井や舞台の後ろなど、あらゆる方向や場所を眺めます。そうやって、まず視覚的に空間感覚的に、演奏する空間全体を自分の内側に取り込んでいきます。次に、その会場のを音で感じて行きましょう。ゲネプロ開始前だと、何人かの共演者がウォームアップしているかもしれません。話し声が聴こえたりするでしょう。それらの様々な音が、演奏空間にどのように響いているか、感じとっていきます。そういったことをしながら、演奏空間を触覚的にも感じましょう。まず、会場の温度はどうなっていますか?場所によって温度や空気の感じが異なっているかもしれません。また空気が流れているのが肌で感じられることもあります。床の堅さや材質を手や足で触れたりコツコツ叩いて感じることもできます。そうやって自分の内側と外側への感覚的な気付きに意識を向けて行きます。
〜3:「〜が好きだ」と声に出す〜
1や2をやってだんだん落ち着いて来たら、こんどは本番に向けてエネルギーを高める番です。そこで、「〜が好き」と声に出します。「〜」は何でも構いません。好きな食べ物、動物、趣味、場所、季節など思いつくままに「〜が好き」と声に出してみましょう。その好きなものや好きなものと一緒にいるところを想像しながら。好きなことを考えることで、そもそも演奏をやっている根源的なモチベーションを思い出しやすくなります。義務感や恐怖感というのは、確かに強いエネルギーで使い勝手がいいですが、嫌になって疲れるという良くない副作用があり長続きしません。言うなれば石炭を燃やして燃料にしているようなものです。対して、「好き」「やりたい」という意欲・望みはとてもクリーンで実は巨大なエネルギーなのです。言うなれば太陽エネルギーです。ただし、手っ取り早くはありません。このエクササイズは太陽エネルギーを使えるようにしていくものだとも言って良いでしょう。
以上、1〜3をそれぞれ2分程だけでもできますし、1時間づつかけることもできます。
何回でも好きなだけ繰り返すといいでしょう。
また、本番はまだ先でもすでに緊張や不安を感じているなら、毎日ちょっとづつでもこのエクササイズを繰り返しておくと、さらに効果的です。
いざ、本番のステージに立ったら、あとはやることはただ一つ。音楽です。
【方法⑧ 聴衆とつながる】
音楽は、演奏するひととそれを聴くひとがあって始めて存在しうるものです。
「聴いてくれるひと」の存在は、音楽において本質的に不可欠です。
ということは、演奏をするとき、あなたは「聴いてくれるひと」としっかりつながっていなければなりません。
ですが、本番で感じる緊張と恐怖に呑まれがちなひとは、聴衆とつながるどころか、聴いてくれるひとのことを
・ 怖れて
・ 拒絶し
・ 目を逸らし
・ いないことにする
傾向があります。
これでは音楽をどんどんしにくくさせていきます。身体をますます硬く緊張させてしまいます。
聴いてくれるひとの存在は、あなたの大きな大きな味方です。あなたのパフォーマンスを高めてくれます。他者は、わたしたちが生きる力の源であり、意味でもあるのです。
ですので、ひとりで練習しているときでも、あらゆる音を、「聴いてくれているひと」をイメージしたり想定したりしながら奏でる時間を作ってみましょう。
1:頭を動けるようにしてあげて、
2:そうすることで身体全体を良い状態にしながら
3:聴衆を歓迎し
4:自分が聴衆と演奏空間と共に存在することを選びながら
5:楽器を構え
6:音を奏で
7:音楽によって意味・メッセージ・ストーリーを語る
この1〜7は、まさに舞台上でやることです。
ですから、それをひとりで練習しているときから、演奏空間や聴衆をイメージしながらたくさん実践してください。
それが本番で感じる緊張と恐怖を乗り越える大きな大きな力となるでしょう。
Basil Kritzer