「ホルン談義 ピップ・イーストップの考え」その1 ピップ・イーストップ著 バジル・クリッツァー訳

☆この記事の原文は、昨年発売されたロンドン・ホルン・サウンズ第二弾「Give It One」のオフィシャルサイトに掲載されています→http://www.giveitone.com/horn-talk/41-horn-talk/67-thoughts-pip-eastop

 わたしは、いったい私のどこを買って、ヒュー・シーナンが「ロンドンホルンサウンズの逆襲」とも言えそうなプロジェクトの主要な役割に私を入れたのか、 分からない。第一作目に参加できたときも、本当に嬉しかったが、そのときはやることは少ししかなかった。「キャラバン」の最後の方の絞り出すような音を担当しただけだった。だが、新しい企画が出来上がってくにつれ、ヒューが実はわたしにもっともっと吹いてもらうつもりでいたのが分かってきた。前回よりさらに高音も吹かせる気でいたようだ。そして、ジャズのソロを担当させ、火の輪をくぐらせるようなことをさせるつもりだったのだ。私は心配になった。

 新しいアルバムの企画に弾みがつき始めてきた頃、わたしはエンゲルベルト・シュミットに注文していた新しい楽器が出来上がるのを待っていた。この楽器は、企画への私の貢献の鍵となる存在だった。この新しい楽器は、オーケストラ用の楽器でジャズを演奏するという問題に関して、私が考え出した解決策だった。この頃には私はすでに5?6年、ジャズトランペットを学んでいて、そこで学んだ事を、自分のメインであるホルン演奏に再導入しようと努力していた。私の問題は、普通のBbホルンでジャズを演奏するのが気に入らなかった、ということだ。くすんで鈍く、面倒でまわりくどい感じがしたのだ。そのうち、いくつか考えていたことが一つのアイデアにまとまった。エンゲルベルト・シュミットに連絡を取って、新しい楽器を作ってもらうことにした。考えていた事とは、次のようなものである。

1:Eb管のテナーホルンは、ジャズ用の楽器としてとても優れていた。天才的なジャズ・テナーホルン奏者で作曲家のジャンゴ・ベイツの演奏ならどれを聴いいても分かってもらえるだろう。

2:エンゲルベルト・シュミットはハイEb管の付いたトリプル・ホルンを作っているーテナーホルンとまさに同じ音域だ。

3:別の楽器をわざわざ取り出してジャズを演奏したり練習したりしなくても済むような、何か方策が必要だった。

4:新しくシュミットに作ってもらうトリプルホルンの「ジャズ用」の部分が、新しいアルバムで演奏するジャズのソロにもしかしたらちょうど必要だったものかもしれない。

5:ハイEb管が、きっとやらされるである非常な高音演奏にちょっとでも役立つかもしれないこと。

6:ヒューには、思いついたことはすぐに言ったし、彼は私が試そうとしていることに喜んでいたようだ。テナーホルンを何本も用意しなくて済むようだから、なおさらだったようである(残念ながら、テナーホルンに対する偏見はよく見られる)。

 ある日、ジェフェリー・サイモンとヒュー・シーナンとともに昼食会をして話し合った。ワインを何本も空けて、CDの曲を書いたりそれを奏したりすることになる同士で集まった。グウィリムも参加した。彼は、ピアニスト・作曲家でジャズホルン奏者の三足のわらじを履いている。

 私が出した条件は一つだけ。私が担当するジャズパートはEbのキーで、予め書き出しておき、レコーディングに入る前に十分な時間をもって私に渡す事、だった。

 注文していた新しいホルンは予定通り届いた。完璧な出来上がりだった。F管もBb管も良い出来で、それまで使っていたシュミットのダブルホルンに劣らないだろう。まさに「ジャズ用」のハイEb管ホルンも付いていて、まさに思い通りの素晴らしいものだった。ハイEb管は音域全てわたって音程は完璧に調整されていて、ほかの管とよく溶け合う。「Give It One」のソロの最後の方で、私はハイEb管からF管に切り替え、下降グリッサンドを演奏し、上行する16分音型のところでBb管にまた替える。たぶん、音質に差は出来ていないと思う。完璧な「オールラウンド」の楽器だと思う。非常に気に入っている。

つづく

問い合わせ
basilk1@hotmail.com
basil.horn@ezweb.ne.jp

フリーランス・ホルン奏者。
現在、BODY CHANCEにてアレクサンダー・テクニーク教師養成課程履修中。通訳兼務。
2010年 ボディ・シンキング・コーチ資格取得予定
2012年 アレクサンダー・テクニーク講師資格取得予定

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