呼吸のための『肋骨エクササイズ』

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この3ヶ月間、大阪シオンウィンドオーケストラ(旧・大阪市音楽団)のコンサート&教育イベント「吹奏楽フェスタ」に参加して、日本のいろいろな場所に行きました。

全部で9公演あったフェスタは、

・第1部で大阪シオンが吹奏楽コンクールの課題曲の模範演奏とクリニック
・第2部でわたしが30分のレクチャーを
・第3部で大阪シオンが吹奏楽作品の演奏会を

という形でした。

各地の大きなホールで行われるイベントでしたから、毎回数百〜千数百人の聴衆が集まりました。

その聴衆のみなさんの前で、30分という時間内でレクチャーを行うということは、わたしにとって新たなチャレンジでした。

ふだんはもっと時間もあるし、全体への講義というよりは受講者の演奏を実際に見てアドバイス・サポートしていきます。それが今回は数百人に向けて一斉に、限られた時間で何かを持って帰ってもらうようにしなければいけなかったわけです。

聴衆は、その多くが吹奏楽部員の中学生と高校生ですが、吹奏楽部顧問の先生方や指導者の方々、大学生あるいは社会人として趣味で吹奏楽をされている方もおられました。

そういう方々に、共通して役立つ「何か」をお話しするにはどうしたらいいのか….

そこでわたしは、レッスンの基本である

『受け手・学び手が知りたいこと、学びたいことについてレッスンする』

という原則をここでも使ってみることにしました。

といっても、ふだんのレッスンのようにひとりひとりから学びの動機や要望を聴取して応えていくということは状況的にも時間的にも不可能です。

なので、自分のブログの人気記事トップ2である

「呼吸のこと」
「本番当日の緊張のこと」

のどちらの話が聞きたいかを毎公演、壇上から尋ねて要望が多かった方についてレクチャーをすることにしました。

結果的に、どちらかといえば呼吸のことについてのレクチャーの要望の方が多い回の方が多かったのですが、やはりどちらのテーマも聴衆のみなさまの関心は高かったですね。

そうやってやり方とテーマは決まったものの、本題である「30分の壇上からのレクチャーで聴衆の全員に共通して役立ち持って帰ってもらえるものがあるようにする」ということをどうクリアあるのか….。

考え抜いた末、会場のみなさんには椅子から立ち上がってもらって、壇上からわたしがリードする「エクササイズ」を一緒にやってもらうことにしました。

呼吸についてレクチャーする回は

『息を吸うこと・息を吐くことのウォーミングアップ&トレーニング』

を。

緊張についてのレクチャーをする回は

『本番当日の朝、目が覚めたときからはじめる、緊張の大波を乗りこなす「アドレナリン・サーフィング」』

を。

それぞれ自分一人でも、吹奏楽部員同士や演奏仲間とでも使えるように、解説付きで実際にやってみてもらうことにしました。

どちらも、ブログのいろいろなところにすでにいろんな形で書いてはあるのですが、限られた時間内で実際にやってみてもらい、実感をしてもらうようにするのはまた別問題です!

客席にいらっしゃるみなさんの反応を見聞きしながら、公演ごとにちょっとずつ改良しながらこの3ヶ月間レクチャーを続けてきました。

その結果、最後の公演は呼吸についてのレクチャーだったのですが、とてもシンプルな中身になりました。

『肋骨の動きを開拓するために』
① 肋骨が自分の体のどこにあるか、自分で触って確認して
② 呼吸すると肋骨が動くことを触って実感して
③ ちょっとずつ息を吸う時間を長くすることで息吸い運動をストレッチ&トレーニングし
④ 最後に到達した肋骨の動き幅にこんどはより短い時間で到達すべく、息を吸う時間をだんだん短くし(瞬発的息吸い運動のウォーミングアップ&トレーニング)
⑤ 長〜く息を吐ききることで息吐き運動をウォーミングアップ&トレーニングにし、
⑥ そのあと息を吐ききるのにかける時間を徐々に短くする(瞬発的息吐き運動のウォーミングアップ&トレーニング)

たったこれだけのことなのですが、これで楽器演奏に使う呼吸運動のレパートリーの全てを視野に入れることができています。

あとは、それぞれの習熟度や体調、個性に合わせて自由にアレンジしていけばいい。

単純化して本質を失うのでも、複雑で難解なために結局覚えられないようなものにするのでもなく、シンプルなんだけれども大事な要素を多くカバーしているエクササイズを作る。

わたしにとってはそういうとても貴重な訓練になったな、と振り返って思います。

いまも、わたしのレッスンの本来のあり方は、ある一人のひとの演奏の取り組みを一緒に探求し、演奏がさらに素敵になっていく過程・演奏者がハードルを乗り越えていく過程をグループで共有するというスタイルにあると思っています。

しかしながら今回こうして、それとは異なるセッティング・要求のもとに有意義で有益なレクチャーを行おうとするのは、とっても頭を使いましたが、とても鍛えられました。

こういうチャンスをくださった大阪シオンウィンドオーケストラには、ひたすら感謝あるのみです。

各地の公演でレクチャーを聴いてくださったみなさま。

その後いかがお過ごしでしょうか。レクチャーで一緒にやったエクササイズの効果はどのようなことに、いまつながっていますか?

ぜひぜひ、教えてくださいね!

Basil Kritzer

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