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きょうは、楽器を吹きやすく・弾きやすく・歌を歌いやすくするうえでとても効果的な『身体のてっぺんに乗っている「頭」のありよう』についてです。
【アレクサンダーテクニークとは】
欧米の芸術大学や音楽院では必ずといって良いほど取り入れられている「身体の使い方」のメソッドに、
アレクサンダーテクニークというものがあります。
このアレクサンダーテクニークは、まず客観的には腰痛の改善に効果があることが科学的な調査でどんどん明らかになってきています。
また、音楽・演劇などのパフォーマンス芸術を行う表現者にとっては、そのパフォーマンスを向上させたり、パフォーマンスを損ねている痛みや身体の動きづらさを大きく改善する効果を多くの表現者が体験しています。芸術大学や音楽院で取り入れられているのはそのためです。
また、欧米では脳科学者や理学療法士など、医学・医療分野の専門家が自身がアレクサンダーテクニークの教師資格(取得するのに3〜4年はかかる)を持っており、研究や治療に役立てている人もかなりの数が存在します。
(✳︎健康を主としたいくつかの分野での効果や有用性を示す調査については、すべて英語ですがこちらをご覧ください✳︎)
このように、その効果や有用性は明らかなメソッドですが、このメソッドが「どうして」このような効果をもたらしているのか、ということについてはまだ科学的には明らかではなく、アレクサンダーテクニークの教師たちや、アレクサンダーテクニークそのもの研究する研究者・科学者たちが様々に仮設を立て検証を重ね続けているという状況です。
そんなアレクサンダーテクニークというメソッドでは、身体の使い方・動きのクオリティを変える着眼点として、『身体のいちばんてっぺんに乗っている「頭」』と『そこから下の身体全体と』の「関係」を見ています。
ここから先は、アレクサンダーテクニークというメソッドにおいてはどのように考え、実践するかという話になります。
その効果は確かなものですが、どうしてそうなのかということがはっきりとは分かっていない以上、厳密には何らかの学問的な間違いがある可能性があります。また、理論や実践方法はこれからどんどん修正され向上されていくでしょう。
あくまで実践としてのやり方ですので、興味があればやってみたり取り入れてみたりしてください。
イマイチよくわからない、効果がない場合は、あまり気にしないことです。
でもどうしても、理解したい、効果を得たいということであれば、アレクサンダーテクニークの先生を探してレッスンを受けるのがベストです。
いろんな教師がいらっしゃいますから、ウェブサイトや口コミで、あなたに合いそうな教師をぜひ探してくださいね♪
【頭の動き】
頭の動きが変わると、それだけで姿勢も呼吸もアンブシュアもフィンガリングも全てとてもよくなることがあります。
では、頭をどうすればいいのか?ポイントはこれ。
・頭を背骨の方に引き込むようにして固定すると、身体が動きにくくなります。
・それをやめると、つまり頭を背骨から離れるような方向に動けるようにしてあげると、身体全体が動きやすくなります。
頭を背骨の方に引き込むようにして過剰に固定すると、首や肩が硬くなっているのがまず分かると思いますが、よくみると腕も脚も止まって硬くなったり縮んだりしていますね。
この状態は、歌唱や楽器演奏のように、身体のダイナミックかつ繊細な自由な動きが必要な作業には適していません。
頭をわざと動けなくすると、首に固さが感じる人もいるでしょう。そして呼吸も止まります。これは確実に起きます。試してみて下さい。
呼吸が止まる―。これだけでも歌唱や楽器演奏をしている人には事の重大性が分かると思いますが、もうちょっと色々影響を探ってみましょう。
【頭を固定する実験】
1:頭を背骨の方に引き込むようにして、わざと固定します。
・そのとき、感覚的に全身はどうなりますか?
・硬い感じがしますか?
・ラクですか?
・肩はどんな感じがしますか?
2:頭をわざと固定したまま、腕を上げます。
・そのとき、腕はどうですか?
・上げやすいですか?
・上がりにくいですか?
3:頭をわざと固定したまま、歩きます。
・そのとき、歩き心地はどうですか?
・いつものように歩けますか?
・歩幅はどうなっていますか?
これをやってみただけで、頭を固定する事の全身への悪影響が分かると思います。
【頭を動けるようにしてあげる実験】
1:固定していた頭を、背骨かは離れるような方向に意図的にまた動けるようにしてあげます。
・すると、全身はどんな感じがしますか?
・呼吸はどうですか?首はどうですか?
・肩はどうですか?
・姿勢はどうなりますか?
2:固定していた頭を、背骨かは離れるような方向に意図的にまた動けるようにながら腕を上げます。
・さてどうなりますか?
・腕はさっきより上がりやすいでしょうか?
・可動範囲は増していますか?
・腕は軽く感じますか?
3:固定していた頭を、背骨かは離れるような方向に意図的にまた動けるようにながら、歩いてみましょう。
・どうですか?
・ヒザや足首の動きやすさはどうでしょうか?
・脚の運びがスムーズになっていませんか?
このように、頭をわざと固定する状態と、意図的に動けるようにしてあげる状態のふたつを比べてみると、呼吸はもちろんこと、全身がかなりちがうのが分かると思います。
【使いどころはここ!】
この「頭の過剰な固定」と、それに伴う全身の硬さや動きづらさは、よくよく観察すると例えば
・楽器を持ち上げるとき
・息を吸っていざ歌いだすというとき
・鍵盤に手を伸ばす瞬間
・発音するその瞬間
など演奏上の重要なタイミングで起きていることが多いのです。
なので、そういうタイミングで、頭を動けるようにしながらやり直してみましょう。普段とはかなり演奏の感触が変わるでしょう。いろんな改善が生まれることも多いです。
【自分の意思で、よい状態にできる】
頭の固定は、意図的に「動けるようにしてあげよう」と思う事で解放できるのです。
これはとっても良い報せです。自分の意志で、身体を良い状態にして演奏できるということなのですから!
【否定形はあまり役立たない】
気をつけたいのは、「頭を固定しないように気をつける」という意識はあまり役立たないということです。
「音を間違えないようにしよう」と思えば思うほど、音をハズしたり、失敗したりしますよね?でももっと純粋に奏でたい音や音楽をイメージすると、うまくいきますよね?
それと同じことです。だから「頭を動けるようにしてあげよう」と意図的に思うだけでよいのです。頭は結果的に固定をやめ自由に動き、全身の状態が良くなってきます。
もし意図していても頭が過剰に固定されてしまって、身体が演奏しづらい状態になっていることに気がついたら、その原因が必ずあるはずです。
その原因は、本当にケースバイケースですから、もし質問があればぜひご質問ください。
【まとめ】
◎楽器を持ち上げるときに、頭が背骨から離れていくような方向に動けるようにしてあげましょう。
・どうなりますか?
・楽器の重さの感触に変化はありますか?
・身体のラクさは?
◎手を鍵盤に伸ばすときに、頭が背骨から離れていくような方向に動けるようにしてあげましょう。
・どうなりますか?
・鍵盤の感触や音に変化はありますか?
・身体のラクさは?
◎息を吸うときに、頭が背骨から離れていくような方向に動けるようにしてあげましょう。
・どうなりますか?
・吸い心地や吸える量に変化はありますか?
・声や音に変化はありますか?
◎発音/発声するときに、頭が背骨から離れていくような方向に動けるようにしてあげましょう。
・どうなりますか?
・音質はどうなりましたか?音色は?
・発音はスムーズになりましたか?
◎音階やロングトーン、フレーズなどを吹いている最中に、頭が背骨から離れていくような方向に動けるようにしてあげましょう。
・演奏のやり心地はどうでしたか?
・全体的なラクさは?
・音はどうでしたか?
・音楽的にはどうでしたか?
・気持ちの面ではどうですか?
【専門の先生にできること】
アレクサンダーテクニークのレッスンでは、3年〜4年かけて専門的な訓練を受けた教師が、専門的な観察力と分析力を使って生徒さんに「頭が背骨から離れるような方向に動けるようにしてあげる」ということの意味を体感的に実感してもらいます。
それで楽器演奏をしたときの効果や変化を実体験するわけです。
読んで興味や疑問が涌いたら、ぜひメールでご質問頂くか、できればレッスンにいらしてください。
Basil Kritzer
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