【リードと息のマッピング】

若いけど、長く不調のアマチュアトロンボーン吹きの方とのレッスン。

顎が勝手にずれたり、
唇が極端に横に引っ張られたり、
アンブシュアがグニュグニュ揺れたり、
かなり複雑な状況。

アンブシュアモーションの確認を通じて、マウスピースを出したい音に対して適切な位置に持っていくと音が明らかに出しやすくなり音質もくっきりするのだけど、
そのときも先に挙げた症状は減りはすれどやはり現れる。

・・・ということは、マウスピースや歯や骨など硬く形状変化はしない構造物におけるメカニクスの問題とはちがうところに何か根っこがあるということか?と考えた。

となると、息と唇のことか?
息は固くないどころか気体だし、
唇は動くし形状変化するものだし。

レッスン中は、この謎解きやひとつひとつ試すことへの結果データの観察と解析に全力を振り向けていたので、どのアイデアをどのデータからどういうロジックで思いつき、どの順で考えたかはっきり覚えていないが、概ね次のように進んでいったと思う。


①バズィング

唇はリード。
そこに空気(息)が行くと、リードが振動する。

唇で、筋肉で振動するわけでも
胴体の圧で振動するわけでもなく、

空気の流れで振動する。

その前提・感覚のバズィング。
👌できた👌


②楽器も同じように

あまり揺れずに、
唇の強い引きはかなり減って、

スッと一瞬音が立ち上がるようになった。

発音の労力は激減。

でも、発音1秒後には唇の揺れ、引きがもどってくる。

どうも、バズィングおよび発音を引き起こす息と唇の関係とは異なるものに変わる(戻る)ようにも解釈できるような。

なんだか、「アーッ!」と言い出しているような感じに変わり(戻る)


③アーノルド・ジェイコブスの教え

シカゴ交響楽団のチューバ奏者で偉大な金管教師の故アーノルド・ジェイコブス。

彼のレクチャー動画や、彼に師事した者たち同士の濃い対談などが数多くアーカイブされているYouTubeチャンネル “TubaPeopleTV” というのがある。
▶ TubaPeopleTV

その対談のいずれかで、対談者たちが
「金管は、発音前にすでに息が流れている。Thaaと発音しているのではなく、Hthaaなんだ」
と、ジェイコブスに教わったことを話しているのを聞いた。

そんな話は私も聞いたことがなかったが、自分でもやってみたところ、音が当たる確率がはっきり改善した。
大変役に立った。

そのアイデアをそのまま紹介した。

そうしてみると、やはり発音まではそれができるようになったが、発音後1秒も経つと:

  • 息が流れてなくて
  • 唇の振動が止まって
  • 胴体に力が入り息の圧力が上がる感じで
  • アーッ!と声を出している感じ

に変化(戻る)しているようだ。


④リードと息のマッピング

その様子でもしやと思い始めたのが、
「声を出す感じで楽器を吹こうとしているのではないか?」
ということ。

というのも、どうもそうであったようであり、そこを整理したら改善上達が得られた事例に過去何度か接しているのと、

音を出す、音楽を奏でるということが、もしかしたら言語処理より進化上の歴史が古いかもしれない「歌う」という行動に本能的に結びつくものなのかも、と思ったのがあったから。

それでマッピングを始めた。
以下の3通りを実際やってみてもらった:

A 発声のマッピング

  • リードは体内の喉のところにある
  • そこに空気がいく
  • 音(声)が出る

B オーボエのマッピング

  • リードが口の中にあると思って
  • (想像上の)リードを咥えて
  • そこに空気を送る
  • (オーボエを持っていれば)音が出る

C 金管のマッピング

  • 手で輪を作り(疑似マウスピース)
  • それを口に当てる
  • リード=唇は体表面上およびそのマウスピースの中にある
  • 「そこ」に空気を送る
  • 「そこ」とは、体内でもなくマウスピース内の深いところでもない。体表面上かつマウスピース内の「そこ」だ
  • バズィングが生じる(楽器を付けていれば音が出る)

↑ この、Cのイメージ・感覚で吹いてみる、ということだ。

やってみると、

  • ☆発音がさらにラクになり
  • ☆響きが豊かになり
  • ☆音を出してていられる時間が伸びはじめ
  • ☆唇の強い引きや揺れが減った

!!!

ここまで進むと、謎の唇の強い引きは、もしかしたら唇=リードを、声帯の位置まで持っていこうとしているようなものだったかも?という解釈もできるかもしれないですね、という話になった。

トロンボーンを吹くときの息と唇のマッピングが、声を出すときのものになっていたならば、リードの位置が体内のもっと下の方にあるわけだ。

息を唇まで送るような動作ではない動作が脳から身体への指令として要求されていて、それに応えよう(不可能だけど)する動きが唇の強い横引きなのかもしれない、と。

ボディマッピングはアレクサンダーテクニークから派生した技法で、いまアレクサンダーテクニーク教師になる勉強の場では流派問わずボディマッピングも学ぶことが多い。

思考と身体運動を一元的に考えるのがアレクサンダーテクニークの大きな特徴なんだけれど、今回のマッピング修正の試みは、そういう背景に支えられているなとレッスン後思った次第。

アレクサンダーテクニークの恩師、キャシー・マデン先生はマッピングをアレクサンダーテクニークの文脈において分かりやすく、そして本気で実用的実益的に駆使されているのを見てこれたのもとても役に立っている。

この方とのレッスンは今後もまだあるので、次回お会いしたときどうなっているか、大変興味深いところだ。

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