【脱力した姿勢とは】
昨日はアマチュアのベテラントランペット吹きとのレッスンで、
「吹いていると力んでいる時がたまにあって、うまくいってない時と力んでいる時は重なっていることが多い気がする」
という主訴に取り組むことに。
座奏だったので、観察した様子に基づき、
「深めに座って、背もたれに背中を預け、足も少し投げ出し気味にする」
ということを試してみた。
結果は:
- 音が力強く華やかになって
- 力まずに吹ける感じ
普通に座奏されている時に、体の保持にまつわる力みがある印象を受けたので、
体の保持を──足は地面から直接、それ以外は椅子を介して地面からの補助を得る形にした結果、力みがすごく減ったわけです。
分かりやすく言えば、「もたれて力を抜く」ということでもある。
とても驚いておられたご様子でしたが、その理由を問うと、
椅子に座る時は必ず浅く座り、背もたれは使わずに背中をまっすぐに伸ばすべきもので、
それが正しい姿勢だと思ってきたから。
ここでお伝えしたのは次の2点:
- 誰がどんな権利があって、他人の座り方をそんな風に規定できるのか?
- プロ奏者たちには、もたれた姿勢や足を投げ出したような姿勢で演奏している人が多く見られ、
そうした姿勢のほうが吹きやすいという実感を語っているケースもある。
つまり:
- 姿勢にルールはなく、完全にその体の持ち主の自由に属する事柄である
- うまく機能している奏者たちの中にも、さまざまな姿勢の実例がある
- 実際にやってみて、うまく吹けたり気持ちよく吹けたりする姿勢があれば、それをやってもいい(もちろんやらなくてもいい)
その後「では立奏は?」となった時には、
- 姿勢の保持にまつわる力みを抜くこと
- そのために地面に体重を積極的に預けること
を座奏での成功例から応用して、
「全身をだらっと脱力し、特に骨盤や膝が曲がるようなレベルで腰回りの力を抜く」
という立ち方で吹いてみたところ、やはり力まず華やかな音が出た。
ちなみに私自身はどちらかというと、
「もう少し関節を安定させて、まっすぐ座る・まっすぐ立つ」
という感じの方が、テクニックがうまく機能する。
けれども、その形がすべての人にとっての正解である可能性は、かなり低いと思う。
なぜなら、そうじゃない形で非常に演奏がうまくいっている実例が多数観察されるから。
近頃こういう話をよく書いているが、改めて整理すると以下の2点が大切な基本原則だと考えている:
- 姿勢を含む身体運動の権利と自由は完全に本人に属している。
→ どのような動きや形でも、それを禁じるルールは設けられようがない。 - 現実に機能している実例があれば、それを「アリ」という前提で可能性の範囲に含め、
できればそれがどのようにアリなのかを説明しうる論理や理論へと、自分の考え方を拡張していく。
こういう前提で各ケースを分析していくと、
「気持ちよく吹けるようなやり方」というのが、ずっと探し当てやすくなるのだと思う。