わたしのセミナーを受講された方から、質問を頂きました。
【質問】
バジルさん、こんばんは。年末のご多忙のところのメールお許し下さい。
アーノルドジェイコブスの「アーノルドジェイコブスは各語りき」という本を以前から読んでおり、また読み返してます。
この本の「いつも良い姿勢で」という章があるのですが、「背筋は伸ばしたまま」、「猫背はいけない」のような事が書かれています。ただ「緊張しないこと」とも書いてます。
セミナーでは「猫背でも構わない」というお話でしたが、ジェイコブスの考えとアレクサンダーテクニークは違う部分があるのでしょうか?
基本的な部分は同じように感じる部分もあるとも思えますが。リラックス、楽な姿勢という部分は。
この本にある思想は私は好きな部分もありこれまでも読んできたのですが、アレクサンダーテクニークとどう両立させていけばいいのかアドバイス頂ければ幸いです。
【バジル】
こんばんは。
アーノルド・ジェイコブス氏の教えは、わたしも高校生のときから触れており、強く強く薫陶を受けました。
ジェイコブス氏の教えてくれることを、「自分の身で」実現する手段が、わたしにとってはアレクサンダーテクニークであるとも言えます。
わたしが、ジェイコブス氏の教えのなかで「文字通り」受け取らないのは、
・今回ご質問の姿勢のこと
・呼吸の描写
のふたつだけです。
直接ジェイコブス氏のレッスンを受けながらであれば、まずモデルが目の前にあり、姿勢にしても呼吸にしてもジェイコブス氏が言葉で表現していることの「意味」が分かります。
しかし、文字や言葉だけになると、誤解からマイナスにはたらく可能性があると思うのが、姿勢と呼吸のところです。
①姿勢
姿勢に関しては、さらに、日本で言う猫背とアメリカ人が言う猫背ではかなりちがいがあるのも、書いてあることをそのまま適用しようとするとうまくいかなくなるリスクを高めています。
アメリカ人が楽器演奏でいう「猫背」は、かなり首が前に出て背中がかがみこんでいると誰が見ても猫背だと思うほどの状態です。
対して日本人は、全く問題ない自然な脊椎のカーブや、脊椎の屈曲の動きすら、「猫背」だと思ってすぐに「気を付け」をしてしまっている傾向が強いです。
また、アメリカ人でも日本人でも、習慣的な猫背への対処法が、気をつけるとか意識するというのをはるかに越えて、無理やりちからづく伸ばしにかかることが多く、猫背になっているときよりさらに吹きづらくなり音の響きが止まってしまいがちです。
楽器を構えるときに、しっかりマウスピースと口を接着密着させることを意識していれば、猫背傾向は意識せずとも変わっていきます。
姿勢は結果なので、結果を操作しようとすることは大抵さらなる緊張の付け加えにおわってしまうわけです。
②呼吸
ジェイコブス氏の呼吸に関する教えは、直接その教えを受けている状況ならば、きっとすべて+にはたらいていると思います。
本質的に、
①リスクを冒すことの重要性
②そうすることで音楽に全てを委ねること
③呼吸の能力/可動性
を統合的に訓練していく教えだとわたしは思っています。
本や又聞きによって起きるマイナスは、「正しい奏法」「正しい呼吸法」をガチガチになりながら「頑張ってやろうとする」ことですね。
つまり、ジェイコブス氏が経験させてくれることの逆をやっているわけです。
参考になれば幸いです。
こんにちは。奏法に関することを文面だけから解釈するというのは難しいということを私もすごく感じます。断片的な理解とか、凝り固まった解釈に至るような受容をしてしまえば、優れた方法論が記された文面を読んだにもかかわらずそれがマイナスに作用してしまうこともあるでしょう。何を隠そうそういう経験を自分はたくさんしてきてるので、やはりちゃんと見てもらって教わることも大事なんだなと思う今日この頃です。
いなおさん
「自分の解釈」が自分に良い作用をしているのかそうでないのかを判断する視点があれば、自分の解釈をプラグマティックに守ることも変えることもできますよね。
同様に、自分の解釈ではおかしい、間違っていると思ったことでも、なんらかの理論やメソッドがどうも一定の数のひとたちに効果的であるようならば、全否定する解釈は保留・判断できます。
Basil