息を吸ってるつもりで吸えておらず、食べ物を飲み込むときのように喉がオウッとなり力む。
息を吐いてるつもりで吐けておらず、やはり喉がウッと力む。
それで楽器で音を出すのが大変ー。
そういう困りごとを抱えていた生徒さんとのレッスン。
見ていて受けた印象は、
「音が出ているときの肉体感覚を
音を出す前に筋肉で再現しようとし、それが正しいか音を出さずに感覚で確認してから音を出そうとしている」
というもの。
これが本人の意図や意識、あるいは意識せずにやっていることと一致しているかどうかは分からない。
が、こう試した。
《音を出すのに必要なことをやってみよう》
①音を出すとは、「無音」から「有音」への移行
②それは唇が振動していない状態から状態している状況への移行
③それは唇に息が届いていない状態から届いている状況への移行
④それは息を吐いていない状況から吐いてる状況への移行
⑤唇が振動した場合、マウスピースが口元に触れていないと楽器が振動しない。したがってマウスピースが触れていない状況から触れている状況への移行がある。
⑥唇を振動させるには息を吐く必要はある一方で、息を吸うのは必須ではない。しかしこれから吐くとき、吸ったほうが吐きやすいor吸っとかないと足りないことが非常に多い。したがって、吸っていない状態から吸っている状況への移行がある。
これら状況の移行により無音から有音に変わる。
そのなかで、吹く本人が「やる」ことで移行が起きることを「やる順」に整理すると
☆まだ離れていたマウスピースを口元に運び触れさせ
↓
☆まだ吸っていなかった息を吸い
↓
☆まだ吐いていなかった息を吐く
になる。
このように、音を出すときの意識の内容を
「感覚を事前に再現し固めて『準備』とする」
というところから、
「音が生まれていない状況から音が生まれてくる状況への移行を順に実行していく」
というものに変えた。
すると、力みが大きく軽減し、高音がラクに自然に鳴らせた。
これは金管楽器の場合だが、どの楽器や歌唱でも、
「起こしたい現象を起こすために、自分がやることは何か?それはどのような順番でやる必要があるか?」
を考えてみて、仮説でも思いつきでもよいので試して検証することが自分でできる。
結果が出たら、また仮説を変更し試しなおせばよいのだ。
結果を保証するような、事前に準備して固める肉体感覚があるという発想で取り組んでいて行き詰まってる場合、このように発想を変えて試してみることができる。
Basil Kritzer