– – –
吹奏楽部員や音大生のみなさんにとって、なかでも木管楽器を演奏されている方にとって大きな悩みのひとつが、指のことですね。
・指が回らない
・指がもつれる
・指が硬くなる
この記事ではそういった悩みに関して、改善や解消につながるかもしれないアイデアを提案したいと思います。
【指が悪いとは限らない】
指がうまく回らないときに、あなたは指に対して実質的にどんなことを思っているでしょう?
いままでレッスンで出会ってきたなかのひとの多くが
「なんでちゃんと動かないんだ、ポンコツ!」
「ほら、さっさと動けよ!言う事を聞け!」
「なんでこんなにダメなんだ、そんなにダメなら無理やり動かしてやる!」
というようなことを考えていました。
これには、
「指が回らないのは、指が悪いからだ」という前提
があります。
しかし、実際には
指が動きにくくなるような条件・状況をあなた自身が作り出した結果、指がうまく回らなくなっている
ことが実によくあります。
つまり、
・指が悪いから指がうまくいかないのではない
・指のせいで指がうまくいかないのではない
ということがあるのです。
【アレクサンダー・テクニークを使ってみよう】
まず、指が硬くなっていたり、回らなくなっているとき、知らず知らずのうちに頭を必要以上に固定してその影響で体全体を硬くしてしまっている可能性があります。
その場合、アレクサンダー・テクニークを使うことが大変有効です。
アレクサンダー・テクニークに関する詳しいことは下記の記事をお読みください。
・アレクサンダー・テクニークとは
・ひとりでやってみるアレクサンダー・テクニーク
・マンガとイラストでよく分かるアレクサンダー・テクニーク入門
〜指の問題を乗り越えて望むような演奏をするために、アレクサンダー・テクニークを使ってみましょう〜
1:指が回りにくいと感じているフレーズを用意してください。
2:そのフレーズを、いつも通り演奏して下さい。
⭐︎次に、同じフレーズを吹く際にアレクサンダー・テクニークを使ってみましょう。
3:頭は大部分が目の上、耳の上にあります。
4:その頭に対し、「固定しなくていいんだ、動いていいんだ」と思ってみます。
5:頭が動いて身体全体をついていかせながら、
6:マウスピース/リードを口のなかに運び、
7:さっきと同じフレーズを吹いてみます。
⭐︎1回目と比べて、どんな変化がありましたか?
・音はどうなりましたか?
・楽器の持ち心地、座り心地はどうなりましたか?
・息の通りはどうなりましたか?
・指の回り具合はどうなりましたか?
【肩を後ろに引っ張っていませんか?】
実は、肩甲骨と鎖骨を必要以上に後ろに引き込んでいると、それが原因で指が回りにくくなっていることがあります。肩甲骨を後ろに引っ張ってしまう「理由」は大きく分けて3つあるように感じています。
理由その1: 姿勢を良くしようとしすぎている
小学校の頃から「気を付け」が正しい姿勢だと教わるのが原因なのかもしれませんが、多くの無理に姿勢を良くしようとしすぎています。
その代表的な方法が、力ずくで背中を「まっすぐ」にするようなやり方です。
そのとき、
・腰を力ずくで立てる
・顎を力ずくで引く
・胸を力ずく開く
・肩を力ずくで下げる、引く
といようなことが起きています。
これらはいずれも、「肩甲骨と鎖骨を後ろに引っ張る」ことが伴っている場合が多いのです。そして残念ながらそれはやりすぎると、指は硬くなってしまいやすいのです。
この場合、肩甲骨を後ろに引っ張ってしまうそもそもの原因が
「姿勢を力ずくでコントロールしようとしている」
というところにあるので、それを変えていくとよいでしょう。
まず、認識したいのは、
・力ずくで「良い姿勢」を作っても、10分もすると疲れきってしまう。
・それならば、それは「良い姿勢」とは言えない。
ということです。
力ずくで作った良い姿勢 vs ちょっとダラっとして力を抜いた姿勢
を、吹き比べてみましょう
→どっちの方が吹きやすいですか?
→どっちの方が良い音がしますか?
→どっちの方が指が回りやすいですか?
もし、見た目にこだわって力ずくで作った姿勢より、そうでない姿勢の方が結果がよければ、そちらをもっと取り入れていくことを強くお勧めします。だって、その方が音がよく、自由に演奏できるのですから…。
ここまでやってから次に試してほしいことは、『無理せず、力ずくでなく、自然に姿勢を作ること』です。
その方法を紹介します。
1:ちょっと姿勢を崩してラクに椅子に座ります。背もたれにもたれてOKです。
2:頭が動いて身体全体をついていかせながら
3: からだを前に倒していきます。
4: 肘をひざの上に乗せて、体重を預けます。
5:そうすると、背中はラクに伸びていきますね。首を丸めて構いません。力を抜いて下さい。
6:そうやってちょっと休んで身体がラクになったら、いま来た道を戻ります。
7:頭が動いて身体全体をついていかせながら
8:ゆっくり身体を起こしていきます。
9:顔が前を向いたらストップです。
10:そのまま楽器を吹いてみてください。
そうすると、
→どんな音、響きになりますか?
→呼吸はどんな感じがしますか?
→身体の労力はどうなっていますか?
→指の回りやすさはどうなっていますか?
。
成果が気に入ったら、姿勢を無理している感じがするときに、どんどんこのエクササイズをやってください。段々と姿勢の作り方が変わってきて、良い状態がより長く保たれることでしょう。
理由その2:楽器を構えるときに、肘が動くことを忘れている
楽器を構えてマウスピースや歌口を口に当てたり、リードを口の中に入れる際、実は「肘の屈曲」が非常に便利なのですが、それを使い忘れていることが多いようです。
これを使い忘れると、腕の自由がなくなって身体のいろんな場所で無理をして構えたり吹いたりすることになります。
そこで、
『肘の屈曲・再発見エクササイズ』
をやってみましょう。
まずは利き手で
1:中指の腹で、鼻先に触れます。。
2:指を、まっすぐ前に50センチほど、鼻先から離します
3:また指を鼻に触れます。
4:また指を鼻から離します。
5:以上、1〜4を十回ほど繰り返します。
そのあと、
6::反対の手で、1〜4を十回ほど繰り返します。
これで、「肘の屈曲」という動きをウォーミングアップできました。この動きが、楽器を構えるうえでとても助けてくれます。
〜肘の屈曲を使って楽器を構えよう〜
では、エクササイズで見つけた「肘の屈曲」をたくさん使って楽器を構えてみましょう。
両手に楽器を持って、手を顔の方にもってくるようなつもりで、構え、そして吹いてみましょう。
そうすると、
→どんな音、響きになりますか?
→呼吸はどんな感じがしますか?
→身体の労力はどうなっていますか?
→指の回りやすさはどうなっていますか?
ぜひ試してみてください。
理由3::息を吸い込もうとしすぎている
吹奏楽部や音楽大学では、「息の吸い方」や「たくさん吸う」こと過剰に、あるいはアンバランスに強調されすぎて訓練されている傾向があります。
ひょっとしたらあなたも、その影響を受けて、「息を吸い込もう」としすぎているのかもしません。
それが原因で指が回らなくなっている可能性があります。
「吸い込み過ぎ」には3つのパターンがあります。
1:量的に多く吸おうとし過ぎ
2:位置的に奥まで吸い込もうとし過ぎ
3:その両方
〜多く吸おうとし過ぎな癖を減らす方法〜
実は、楽器を構える途中でわたしたちは、かなりの量の息を無意識的に吸っています。
そこで
1:これから奏でる音楽、フレーズ、音を具体的に決めます。演奏する長さもです。
2:それをイメージ(心の中で歌います)
3:楽器を構えます
4:構えたらそのあとは息を吸わずに、そのまま吹いてしまいます。
→どんな音、響きになりますか?
→呼吸はどんな感じがしますか?
→身体の労力はどうなっていますか?
→指の回りやすさはどうなっていますか?
このエクササイズをはじめは頻繁にやってみましょう。そうすると段々、思っているより「そんなに頑張って吸おうとしなくてもいいんだ」と実感できるようになります。
〜位置的に奥まで吸い込もうとし過ぎな癖を減らす方法〜
多くのひとが、実際には息でなく食べ物が通るところで息を吸い込もうとしてしまっています。これは、位置的に置くまで吸い込もうとしすぎています。
そこで
1:唾を呑み込んでみてください。
2:そのとき使った筋肉や力は、息を吸うための筋肉ではありません!
3:ということは、今後そういう感覚は無くてOKなのです。
4:息を吸うのは、呑み込む感覚がある場所よりもっと前です。
5:のどぼどけの左右の両側に触れてみてください。息が通っていくのはそのあたりです。
これで、イメージの修正が済んだので、
6:新しいイメージで息を吸い、音を出してみましょう。
そうすると、
→どんな音、響きになりますか?
→呼吸はどんな感じがしますか?
→身体の労力はどうなっていますか?
→指の回りやすさはどうなっていますか?
まずは、試してみてください。
【手の形をキープしようとしていませんか?】
手が硬くなって指が回りにくくなっている原因のひとつに、手の形をキープしようとしているというケースがあります。
姿勢にしても、手の形にしても、ただ立っているだけにしても、「ひとつの形」をキープしようとするのは、身体を硬めるような影響力を持ちがちです。
ですので、「キープする」という努力をやめてみましょう。代わりに、このように考えて吹いてみてください。
1:頭が動いて身体全体をついていかせながr
2:指先を楽器の方へと近付け、
3:手を楽器の方へと近付け、
4:「指と手の形は、楽器の形に決めてもらうんだ」と思いながら
5:楽器に手を優しく添わせるようなつもりで楽器を握る
こうすると、楽器の材質や温度がいままでより明確かつ繊細に感じられるかもしれませんし、きっと手の硬さ消えて指が回りやすくなることでしょう。
また、指の付け根は、骨で見ると実は手首のあたりにあります。
指はそこから生えていて、親指は関節が3つ、ほかの指は4つあります。
両手合わせて、指の関節が38箇所もあるのです。
関節とはつまり、動く場所ということ。
手の形を作るためには、これらの関節が動く必要があります。
意識を、「形」や「保つ」ことから、少しづつ「動き」に切り替えていくことで、手の力が抜けやすくなるでしょう。
ぜひ試してみてください。
Basil Kritzer
突然の質問申し訳ありません。
ピアノやギターなどの楽器を弾く時に指が上手く動きません。
遺伝など元々の素質とか考えたくありません…というか遺伝など元々の素質など関係無いと考えておりますが、どうなのでしょうか?
Assamiyaさん
それは医療・医学の領域になるのでわたしには判断できません。
遺伝や体質だとしてもその中身には色々ありますし、簡単に薬でよくなるものから原因不明まで幅広くありますから
気になるなら医師に相談されることをお勧めします。
Basil