高音のピアニッシモの演奏にはどう取り組んだらいいの?

アマチュアホルン奏者の C さんより、メールでご質問頂きました。

【質問】

最近は Strudel Hornisten でのレッスン動画を参考にさせていただいて、

・頭が動いて、そして体が動くことを意識して
・高い音を出す力はお腹周りの筋肉が出してくれる
・そして楽器に強い息が当たるのを支えるようにしっかりとマウスピースを唇に当てる

ということを意識することでパワフルな高音を出すことができるようになってきました!これは、今所属している吹奏楽団でやる曲でとても役に立っています。

実は吹奏楽の他に別の団体でオーケストラをやることになり、来週に本番があります。やる曲はモーツァルトのピアノ協奏曲第23番なのですが、曲の初めでハイEを優しく出すことが要求されています。

ピアノ協奏曲第23番 (動画の30秒付近が該当箇所)

また、添付した画像ファイルはこの曲の1楽章のホルン譜 (in F)です。

画像中にAで示した箇所が動画の30秒付近の箇所です。また、画像中のBの箇所(動画の8分40秒付近)もいきなりハイEを出す箇所です。これらの箇所は現状、「当たることもあるけど、外すことが多い」といった感じです(特にB)。

これらは音量もピアノで、優しく吹く箇所なので、吹くときはさほど息をたくさん送り込むといった意識はいらないかと思っています。そこで、代わりに何か役に立ちそうなアイデアが欲しいと思っています。

このような、

・フレーズの中で音が高くなっていくのではなく、最初から高い音を当てる必要があるとき
・優しく高音を出すとき

に役に立ちそうなイメージやアイデアがあれば、教えて頂けると嬉しいです。

【回答】

こんにちは。

ご質問の件ですが、まず大前提の認識として必要なのは

「ハイEをピアノでいきなり演奏するのはとても高度な技術である」

ということです。

というのも、この課題に取り組むとき、

「出来て当たり前」
「出来ないのはおかしい」

という認識で取り組むのが、最大の問題となるとわたしは考えるからです。

何かに取り組むとき、その課題がどれぐらい高度なことなのかをフェアに認識しておくことは、健全かつ効果的に取り組むうえで必須だと思います。

なので、まずは「これができないのはおかしい」という思考や思いがあるとすれば、それを保留してください。

さて、では具体的かつ技術的なアイデアに移りましょう。

これらは音量もピアノで、優しく吹く箇所なので、吹くときはさほど息をたくさん送り込むといった意識はいらないかと思っています。

と仰っていますが、その通りだと思います。

つまり

・息を吐く労力は、高い音にも関らず減る=楽できる

と考えましょう。

では、代わりに何の仕事が必要か。

・音を鳴らすために必要な、上下の唇を閉じ合わせる力は、音量が減ると増します。
・音を鳴らすために必要な、上下の唇を閉じ合わせる力は、高音ほど増します。

つまり、ピアノ+高音ということで、二重にこの仕事が必要になっているわけです。

なので、思い切って口を閉じるようにしましょう。

*ちなみに、音量が増すと、音を高くするために必要な、上下の唇を閉じ合せる力とは別に、息が唇を押し開ける力に対抗して唇を閉じておく(キープする)力が必要になります。この力は、唇自体の力=口輪筋の力ではなく、もっと周囲の筋肉たちの力です。咀嚼筋も含まれてくると思います。顎を張れ、とよく言われますが、この周囲の筋肉の力のことです。

文面から察するに、「音を優しく当てる」という意識がひょっとしたら逆効果になっている可能性を感じます。優しく当てようとすると、タンギングが中途半端になってしまうことがあるからです。

近くで聴いていてタンギングが強く聴こえていても、ホールで演奏していると全く問題ないことも多いです。なので、もしタンギングを弱めに、中途半端にしそうな自分がいたら、やはりこれも思い切って気持ち良くタンギングしましょう

それにつられて息がしっかり吐けるようになることもありますから。

あともう1点は、 Bの箇所は、「いきなりハイE」に見えますが、実は1小節前にオクターブ下を演奏しています。だから、イメージのなかで、オクターブの跳躍だと捉えるとよいかもしれません。

休符の間も「演奏モード」でいるようにしてみてください。そうすると、思っていたより自然に吹けちゃうかもしれません。

まとめ

①これから取り組もうとしていることは、かなり高度な技術である。従って、目先の本番で成功させることを優先させるより、こういった技術的領域にじっくり取り組むマインドを優先しましょう。

②思い切って口を閉じましょう。

③思い切ってタンギングしましょう。

④1小節の休みも、「演奏モード」でいましょう。

参考になれば幸いです。

【Aさんよりお返事】

返信ありがとうございます!

昨日の練習で「唇を思い切り閉じてみる」ということをやってみましたが、高い音がかなり出しやすくなりました。

「唇を思い切り閉じる」というので最初は唇を上下に押しつぶすような(口を真一文字に結ぶような)感じのことをやってて「少し吹きにくいな」と思ってましたが、もっと唇部分という小さな範囲の部分が動く、唇はほんの少しだけ前へ動いて閉じ合わさるというふうにすると良い感じがしました。

また、唇を閉じると思わなくても「アパチュアを思い切り小さくしてみる」と思うことでも効果を感じました。

Bの箇所は合奏時で通した時には当たらなかったものの、合奏の前後にその箇所を吹いているときには明らかによくなりました。

また、合奏後に調子づいてハイトーンを吹いてみたのですが、そのとき初めてハイGの音が出ました!

ハイトーンの際にお腹からの息の力、マウスピースからのプレスだけじゃなく唇を閉じる動きも使えるぞ、と思って吹いていた時に起きた変化です。
唇の部分も使えると分かったこの体験は、この先も役立ちそうな気がします。

昨日だけでも自分の中で面白い変化が起きたという感じがあったので、つい報告したくなったという次第でメールしました。

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高音のピアニッシモの演奏にはどう取り組んだらいいの?」への7件のフィードバック

  1. いつも愛読させて頂いています。
    大変大変参考になります。
    九州大分でレッスンの機会があれば是非受けてみたいです。

    • 渡辺さま コメントありがとうございます。ぜひ九州にも行きたいです。きょうから仙台と秋田へセミナーに行きます。ぜひ九州にも呼んで下さい♪ 詳細:http://www.umakunarou.com/レッスン内容/出張レッスン/

  2. とても参考になりました!
    本日仙台でのセミナーに参加させて頂きます。
    とても楽しみです。

  3. 中学3年でホルンを担当しているものです。

    いつも愛読させていただいております。

    質問なのですが、中学生だけでレッスンを受けることは可能でしょう
    か?

    レッスンの動画を拝見させていただいたところ、大人の方が多かったので中学生は良いのかと疑問に思いました。

    可能であるなら是非受けたいのですが…

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