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自分の短所や、ひとと比べて良くないことばかりに気がついてしまい悩んでいるという大学生からメールを頂きました。
わたし自身は、大学時代に楽器を続けることを諦めるかどうか、大きな岐路に立ったことがあります。
その経験も踏まえながら、なるべく真摯に相談に乗りました。
【質問者】
こんにちは、いつもメール拝見させてもらっています。
ぼくは大学で楽器をやっているんですが、どうしても自信がもてません。
周りの人達と比べて自分はここが足りない、ここで負けてるというとこだけ見てしまい、全く自分の長所というのが分からないまま過ごしています。
なので一切練習や合奏が楽しくなく、それでも負けじと必死に練習しますがこのままだとダメな気がして質問させていただきました。
どうやったら自信がついて楽しく演奏できるようになりますか。
【バジル】
こんにちは。
なるほど、お気持ちよく分かります。
男子大学生という時期はちょうどそういうことでとても苦しむことが一番多い、そんな年齢的な面もあると思います。
わたしも、意気揚々と音楽大学に入学しましたが、1年経たないくらいのうちに腰を痛め、
また奏法も全部一からのやり直しとなり、自尊心がズタズタになりました。
音大に行って、うまくなって、プロになって、一目おかれようとしていたわけですから、
その計画が大きく狂うだけでなく実現の可能性を信じられなくなっていきました。
しかし追い詰められたときに残っていたのは、
・これまで通り、成功のために頑張って努力して身体を壊す→ホルンを諦める
・考え方、やり方を変えて、ホルンの演奏を続けることを第一にする
というどちらかの道でした。
わたしが選んだのは、後者です。
なぜか?
仮に下手なままだったとしても、プレイヤーとして成功できないとしても、ホルンを音楽をやめるということが、わたしにとっては一番悲しいことだということが追い詰められて初めてよく分かったからです。
そのときから、根本的にはわたしはホルンや音楽が好きだからという理由だけで練習を続けています。いまはそういうやり方をして11年経ちます。(いま31歳です)
こういうやり方にしてから、不思議と上達は毎日ちょっとづつですが途切れることなく続いていて、おかげで一応プロの演奏者になることもできました。
他人との比較では決して自信は持てませんが、自分がとても成長した、これからもできるという点については自信があり、
また今後どんなことができるようになっていくだろうか、と常に楽しみです。
自分の下手さに凹むことはいくらでもあるけれどね (^^;;)
あなたにとって、ジャズドラムを始めた理由、続けている理由、他人と比較したときにいろいろ気にするほど、「質」を大切にしている理由は何でしょうか?
そこにつながり直すことが、自信と楽しみを回復する大切なきっかけだと思います。
一応、参考になるかもしれない記事を貼っておきますね。
・練習するためのモチベーションを見つける&上げる工夫
・1音目から充実した練習ができる方法
・自分を好きになると、音楽の上達が早くなる
遠慮なく、またお返事ください。
【質問者】
始めた理由:ドラムの先生がジャズドラムが好きでその人から習ったり、JAZZの音楽を教えてもらってたら好きになったので。
続けている理由:周りの人がやっているのが楽しそうで、かっこよくて、CDを聞いてもとてもカッコよくて、こんな風になりたいなあと思うから。
「質」を大切にする理由:どの楽器でもそうだと思いますが、特にドラムという楽器の特性上、ぼくがミスをしたり下手だったら周りの人が非常にストレスを抱えて演奏することになると考えてるので、それが本当に申し訳なく辛いから。
改めて自分の事を見つめ直してみるとこんな風なのかと発見がありましたが、ここからどういう考えが導き出させるでしょうか、教えていただきたいです。
【バジル】
>>「質」を大切にする理由:どの楽器でもそうだと思いますが、特にドラムという楽器の特性上、ぼくがミスをしたり下手だったら周りの人が非常にストレスを抱えて演奏することになると考えてるので、それが本当に申し訳なく辛いから。
文面だけからすると、何かを大切にする理由・何かを努力する理由が、これでは罪悪感や他人の意見/視線になっていますね….
どこまで本気でそうなのかによりますが、基本的には、それでは自分自身が苦しく、緊張が増えてしまうのではないかと危惧します。
結局、もし周りがストレスを感じないとすれば、質を大切にしなくていいということになってしまう。それって、実は弱い動機ですよね。
もっと自分自身の快感や喜びのため、あるいは他人への貢献とか喜びとか肯定的で能動的なものでないと、何かを大切にして努力する真の理由として機能し続けることは難しいのではないか…と思います。
始めた理由も続ける理由も、もっと自分中心の肯定的で能動的なものですよね。
質を大切にする理由だけが、異質です。
始めた理由・続ける理由と同心円上とでもいいますか、同じ世界観で質を大切にしたいと思えると、苦しくないし、いわゆる「初心」でいられると思うのです。
【質問者】
本当にそのとおりだと思います。
演奏するのが苦しくて、それで緊張して、緊張してミスをするとまた演奏するのが苦しくなってという、まさに負のスパイラルに陥っていると思います。
「質」を大切にする理由としまして、もう一つ、質の高い、上手な演奏ってやっぱりカッコよくて、カッコいい演奏ができるときっと楽しいだろうなあと思って「質」を大切にしてるという考えもありますが、どうしても負の考えのほうが勝ってしまいがちです。
もっと能動的な、真に強い動機を確固たる信念とするきっかけ、考え方などはございますか?
【バジル】
>>もっと能動的な、真に強い動機を確固たる信念とするきっかけ、考え方などはございますか?
ごまかさずに正直に申し上げると、なにか分かりやすく定式化された「方法」をわたしは知っているわけではありません。
自分を苦しくさせ、前進を鈍らせるような否定的で消極的な動機でばかり動き続ける自分を客観視して、「こんなのはやめにしよう」とほとほと感じたところから徐々に意識的に動機や自分の状態を確認して建設的な努力を積み重ねるなかで次第に確かになっていった、というのがわたしの実感です。
なので、地道にこまめに
>>質の高い、上手な演奏ってやっぱりカッコよくて、カッコいい演奏ができるときっと楽しいだろうなあと思って「質」を大切にしてる
という気持ちにつながり直し、そこから行動や努力をするということの繰り返しが、罪悪感に動かされた非建設的(上達にブレーキがかかり、また自分自身もアンハッピーであるという意味で)な努力のやり方を徐々に強化していくのだろうと思います。
【質問者】
そう言われますと、徐々にでも少しずつ変わることができる可能性が見えてきたので、できる気がしてきました。
異質な部分がでそうになる時ほど、初心を大事にしていけるようがんばっていきたいと思います。
貴重なお話ありがとうございました。
【バジル】
そう、ネガティブな方に「脱線」するというか、自分にとっての軸からずれたときに、それに気づいたら立ち止まって(あるいは動き続けながらでも)初心・軸・自分自身を思い出す、戻ってくるような時間を取ったり工夫をしたりする。
それが、人生においても非常に大切なスキルになると思います。
Basil
私はアカペラを習っているものです。この方と同じように周りと比較してまい、周りの方の良いところ素晴らしいところは挙げられるのですが、自分のこととなると…ダメなところばかり目についてしまい自分の長所を見つけらずにいます。
自分に自信がないので、周りの上手い方々に気兼ねしてしまい、そのレッスンにうまく溶け込めないで小さくなってレッスンを受けてしまっています。
そこで質問なのですが、一緒にこのレッスンを受けている生徒さんから褒められたところを自分の長所と考えて取り込んでもいいのでしょうか。褒められたこともなかなか受け入れられずに否定してしまうのです。自分で見つけられない現状において、褒められたところを長所にすることが果たしていいことなのか悪いことなのかわからないでいます。本来なら自分で見つけるものだとは思うのですが、ダメなところしか目につかないのです。
長所を見つけて、少しでも周りの上手い方に気兼ねせずにレッスンを受けられるようになりたいのです。
よろしくお願いします。。
深尾さま
>>一緒にこのレッスンを受けている生徒さんから褒められたところを自分の長所と考えて取り込んでもいいのでしょうか
もちろんです!
そういう外部のフィードバックにより自分自身の気付かなかったことに気づく。
大切なことです。
>>自分で見つけられない現状において、褒められたところを長所にすることが果たしていいことなのか悪いことなのか
というの自体がすでに自分自身にかなりのハードルを課しているのは気付きましたか?
自分で見つけないとダメという条件はありません (^^)
Basil
バジル先生、返信ありがとうございます。返信を気づくのが遅くなってしまいました。。すみません。
長所は自分で見つけないといけないと思っていました。これが自分にかなりのハードルを課してるのは全く気がつかなかったです。
その2年半経っていまだに、初心者状態から一歩も抜けだせず…焦りもあり、できないことを日々見つけて出来るようにしていく毎日で、長所あったら強みというかさらに頑張れるエネルギーになるような気がしていたのです。
ほんとうは出来ることを伸ばしていくのが、いいとは思うのですが、全てにおいてまだまだな初心者レベルで、何ができているのかがわからないのです。
レッスンは受けていますか?
直感ですが、音楽家の先生に直に定期的にレッスンを受けることでいまのもやもやはかなり整理される気がします。
Basil