客席まで届く、迫力あるサウンドのために

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中学や高校のバンドに関して言うと、音が客席までよく届き、迫力あるサウンドを出すバンドはやはり印象に残りますね。

夏の吹奏楽コンクールでもそういうやはりそういうバンドが勝ち抜くことが多いのではないかと思います。

【音を飛ばす、という意識が逆効果になることも】

そこで中学・高校の吹奏楽部顧問の先生や指導者の先生としては、

「音を客席に届けろ」
「音を飛ばせ」

と指示する場面もありますね。

しかし、ときにはこの指示自体が、バンドの音を

・粗くて
・キツイ
・あまり響いていない音

にしてしまう誘因になることがあります。

生徒たちが

「音を前に飛ばす」
「一生懸命客席に届けるために頑張る」

ということを真剣にやろうとし、努力すればするほど、音が荒れたり割れたりしてしまいやすいのです。

【客席に届く音って?】

客席に迫力をもって届く音、というものは

1:豊かに響いていて
2:音量が大きい

ものを指していると考えることができるとわたしは思います。

どうすれば響く音で演奏できるようになるか?といえば、それはもちろん健全な正しい演奏技術がいちばん大切でしょう。

また、体の響きに気づき、それをもっと促していくエクササイズも助けになります。(参照:豊かな高音のためのからだの「声と響き」

どうすれば音量を大きくできるか?といえば、それには息を吐く技術と能力がいちばん大切なポイントになります。

そのような呼吸に関するエクササイズや、呼吸法の考え方については下記の記事をご参照ください。

・呼吸の誤解を大掃除〜これできょうからもっと吹きやすくなる
・息のパワーの作り方
・管楽器奏者のための簡単な呼吸エクササイズ

リンク先のエクササイズなでども示した通り、「客席に届く、迫力あるサウンド」の実現に向けて、バンドの個々の生徒の力量を着実に伸ばすことができます。

しかし、もうひとつ大事なのは、指導者の指示や、生徒の考え方・意識が、音の響きを失わせるような結果を生み出すものになっていないよう注意することです。

冒頭に述べた、

「客席に音を届けろ」
「音を飛ばせ」

といった指導者の指示が、演奏する生徒たちに対し

・音を「前方」に飛ばそうとする意識
・息を「前方」または「楽器の中に」に強く吐き出そうとする意識

をもたらし、それが結果的に音の響きを失わせていることがあります。

【息は「下から上へ」】

あまりよく考えずに、音や息を「前へ前へ」「飛ばそう」というイメージや意識が強まれば強まるほど、

・頭や首を前に押し出して呼吸を苦しくしてしまいがち
・上半身が折れ曲がって覆い被さるようになって体を窮屈にしがち

になる危険があります。

これは結果的に、

・体を硬く不自由にさせ
・呼吸を妨害し
・響きを殺す

ような事態に陥りがちです。客席に届く迫力あるサウンドを支える豊かな響きと豊かな音量に対し、ブレーキとなります。

身体の中では、ざっくりと見れば息は「上方向」に流れています

肺から気管を通って口の中へと上がっていき口の天井の硬い範囲に当たります。角度がついてはいるので、斜め上の経路ではありますが、間違いなく「下から上」という流れがあります。

息が最終的に前に流れ唇まで届いたり、口から流れ出て楽器へ吹き込まれていくのは、口の中やアンブシュアの形によるものです。息を吐く(吹く)作業とはまた別のものです。

また、金管楽器の場合、唇から先は奏者の解剖学的特徴により必ず、息は上方向か下方向へ流れ出ています。まっすぐ前方には流れ出ていません。金管奏者に対して、息を「前へ前へ」「まっすぐに」「マウスパイプに向かって吹き込む」というような意識付けをさせることはアンブシュアの機能に非常に悪い影響を与える場合すらあります。(詳細:息の流れの方向と金管のアンブシュア

息を吐き出す力として非常に強いのが、腹腔を取り囲む腹筋と骨盤底筋です。

これらの筋肉は息を吸ったときに下がってきた横隔膜に押されて下がってきた内臓を元の位置やそれ以上に押し戻す働きをします。これが息を吐き出すためのパワーの源としてとても重要です。(詳細:呼吸の誤解を大掃除〜これできょうからもっと吹きやすくなる〜

これらを総合して、音を大きく迫力のあるものにしようとするとき(そして実はどんな音量のときも)

『息は下から上へと流そう』

というイメージ・意識することをお勧めします。

この記事のリンク先で紹介している各種エクササイズなども交えて、バンド単位でこのイメージを取り入れて実践してみる実験をぜひ行ってください。そして、どんな結果になったかをぜひいつでもお気軽にお知らせ・ご相談ください。

【もっと豊かな響きにするには?】

息や音の意識の方向付けとして、「前方」よりは、「下から上へ」のほうが良いこと。息の流れも実際には下から上であるということをこれまで述べました。

では、音をもっと豊かに響かせるにはどうしたらいいのか?

実は、「息を下から上へ」というイメージ・意識自体が、それまでの「前へ前へ」「飛ばそう」という奏法に改善をもたらして音の響きを豊かにしてくれることがとても多いのです。

また、先に紹介した記事『豊かな高音のための「声と響き」』で示しているエクササイズもとても役立ちます。

この記事内で最後にもうひとつ、音の響きをもっと豊かにするための取り組みに使える方法を紹介します。

〜演奏空間を意識するエクササイズ〜

1:演奏するホールの空間をじっくり見ます。

2:前や置くだけでなく、全方位をじっくりと。

3:奏者自身が、自分とホールの天井の距離、全方位の壁からの距離、ステージ上での位置を認識する時間を取ります。

4:こうすることで、ホール全体と、そのなかでの自分の空間的位置を自分にインプットします。

5:そうやってインプットした空間全体に、自分の身体を震源に、全方位に音が波として伝わっていくようなイメージをします。

6:そのようなイメージがまだ心に残っているうちに、音を出してみて、音や響き、音量がどう変わるかを実験します。

ぜひ試してみてください。

そして、その結果から得られた気づき、感触、変化、疑問などがあれば、いつでもぜひ教えてください。

この記事があなたの役に立つことがあるとすれば嬉しく思います。

Basil Kritzer

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客席まで届く、迫力あるサウンドのために」への8件のフィードバック

  1. 書いている通り前に前に!と思っても割れてしまって全然綺麗じゃなかったのですが、今日、これを読んで非常に良い参考になりました!
    明日から早速実践してみようと思います!

  2. 心がけてから数週間、以前よりも豊かな大きな音が出るようになりました!
    まだまだ雑な部分も多いですが、楽器を鳴らすことが出来てきました!
    ありがとうございます!

  3. あすたさま

    こんばんは!
    成果があったことを教えていただき、ありがとうございます (^^)/

    どんどんこのブログのヒントと材料をこれからも活用してください。

  4. ピンバック: キャシー・マデン先生との学び備忘録 その2:息はひと仕事である | バジル・クリッツァーのブログ

  5. ピンバック: 全く力みのない、非常に明るい音で、肌がビリビリくるくらい空気が振動していた | バジル・クリッツァーのブログ

  6. 野外での演奏の場合、空間認識はどのようにすればいいのでしょうか?
    今まで、室内の演奏しか経験がないので、音がどうなるのか不安です。

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