キャシー・マデン先生との学び―その6:テクニックの再構築

6:テクニックの再構築

アレクサンダー・テクニークをある活動に使う(例えば楽器演奏)と言う事は、使わずに同じ活動をするときと、身体のバランスが異なり使われる筋肉や仕事量が変わってきます。

私たち音楽家&愛好家は、年月をかけて数多くの反復を経て微細で高度な意識的身体運動の技術を訓練し獲得します。だからこそ、アレクサンダー・テクニークを楽器演奏に応用する際は、自分と自分の辿るプロセスに寛大な態度で臨むのが大事なポイントになります。

たとえば、アレクサンダー・テクニークのレッスンを受けて、いままでとても大変だった高音が力み無くスルっと出たとします。一度この体験があると、次にいままでのような力みがあるととても目障りに感じることがあります。必ずしもその力みが必要ないということが、体験的に分かっているからです。

しかし、「力み」はいままで音を出す為に獲得した高い技術のパターン全体の一部として獲得されたものですから、むしろいざというときには「力んでなんとか音を出せる」という技術もあるのだと考えておきたいのです。

有能なアレクサンダー教師とのレッスン中は、新しい身体全体の動き方/バランス/使い方の上に演奏技術をうまく「乗せる」ことができます。それはアレクサンダー教師が新しい使い方を的確にサポートできるからです。

そのレッスンで体験する新しい可能性や技術は、「次の一歩後の到達点」みたいなものです。レッスンを終えて自分で取り組む時に、どちらに向かえばいいのかを明確にさせてくれる道しるべ的体験を産み出すサポ―トをするのがアレクサンダー教師の役目なのですね。

だから、きっかけがアレクサンダー・テクニークのレッスンあれ、楽器の先生からの指摘であれ、あるいは優れたプレイヤーを観察していて得た洞察であれ、自分の吹き方やテクニックの質を変えていこうと取り組む際は、「これまで自分が獲得してきた技術」に最大限感謝を持つと、建設的に改善/改良を進めることができます。

本番で、目指していた新しいより良い吹き方ができずに、力んだまま吹き通さざるを得ないこともあるでしょう。でもそれは、力んでいればとりあえず吹き通せるという立派な能力の証明なのです。

キャシー先生が言って印象的な言葉がありました。
「必要なときに力めるのは、プロの技術の欠かせない一部だ」と。

アレクサンダー・テクニークはそういう意味では脱力法でもないし、理想論でもありません。自分の望むことを実現するための、建設的で確実な「次の一歩」を提示する教育方法論なのです。

もしアレクサンダー・テクニークがなんだか都合の良過ぎる話ばっかりしている気がして敬遠していたとしたら、ぜひこの記事を吟味して下さい。そして、ちょっと警戒感が薄れたら、有能な教師を探してレッスンを受けて下さい。

力みという話に戻りますが、私の場合は首周辺の力みが主です。首/腕/ベロ/喉のエリアですね。これらの力みが発生する理由は分かりました。骨盤底や下部腹筋の働きが効き足りないときです。骨盤の安定が損なわれ、それゆえに身体がバランスを取ろうとして先述の部位が力みます。

だから、力むのは「バランス維持機能」が緊急作動してくれている証拠。緊急作動したのに気が付いたら、次は改めて考えます。

・頭が動けて身体全体が呼応して動いており、
・骨盤底と下部腹筋をアクティブに使い、
・マウスピースを口元に持って来て、
・息を硬口蓋まで上に送り出し、
・唇は前方向に方向付ける。

力みや機能不全は、目指す方向を明確にし直す絶好のチャンスだということ。

キャシー先生が帰国して2週間。喉とベロの力みは、大幅に減っています。「力みを減らそう」としたからではなく、力みに気が付いたときに上記の「新しいプラン」を明確に考え実行するという選択を取り直す。それを繰り返したからです。

そのおかげで、実は腕と首の筋肉の動きの癖が、左右の眼の視力差と大きく関係していたという、より深層にあったパターンに気が付くことができました。

こういう深層パターンの因果関係に自分で発見に至ったのは、実は初めて。興味深く実験継続中です。

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