あがり症にならないための4つの練習要素

わたしのホルン生活の大半は「思い通りに全然できない歯痒さと焦りと劣等感」が占めていましたが、高校時代のある時期だけ、カラダはラクで、スイスイうまくなっていき、本番もよい演奏ができた数ヶ月がありました。いまになって分かったのですが、その頃「聴いてくれるひと」を常に意識していました。

その後、コンクールとか入試とかで「失敗しないこと」とか「自分が音大生としてあるべき腕前にならなきゃいけない」とかに意識が行くようになり、また緊張や硬さが常にあるような状態になっていってしまいました。

そうやって常に自分自身に「点数付け」をし、監視するような感じに。自分が自分にそう接するので、当然の成り行きとして、ひとに聞かれているのがすごく怖く不快に。こうやって「聴いてくれるひと」という存在と自分が切り離され、楽器を吹くことと音楽や芸術が分離されていってしまいました。

こうやって悪化し、数年間は音楽を聴いていても音楽は聴こえず、物理的な音としてか感じられなくなってしまった時期がありました。「自分はダメ」にマインドがどんどんフォーカスされ、聴いてくれるひと、音楽、芸術を、楽器を吹くことや練習することから切り離してしまったからです。

その後、アレクサンダーテクニークを学ぶようになって、身体の使い方や演奏技術の理解が進んだことでかなり物事はよくなりました。しかしまだ、聴いてくれるひとのことを考えると緊張が走るし、あがり症問題はくすぶっていました。

でも、元々わたしは人前でこそ活き活きするタイプですし、ソロや大聴衆のときは力が出せるということもあり、いったい何で未だにあがり症があるのか、謎が残っていました

ひどいあがり症に八年間ほど苦しみ、その後七年間はアレクサンダーテクニークのおかげでずいぶん改善したがくすぶり続けていました。ですが、先月来日したキャシー・マデン先生との学びが、あがり症の全体像の理解を大きく大きく前進させました。

あがり症という問題は、あがりという現象を直接コントロールしたり、テクニックやトリックやコツの類いでどうこうできるものではなく、「全体像」が肝心です。

まず、演奏にしても練習にしても、

①身体の使い方
②演奏技術
③聴いてくれるひととのつながり
④音楽・芸術が自分自身または世界に奉仕する意味

という四つの要素/側面をすべて「含めて」行う必要があります。どれかひとつでも欠けたり不明確になると、緊張/こわばりを感じることになります。

留意してほしいのは、緊張/こわばりという現象は必ずしも身体の使い方や演奏技術が原因とは限らない点です。聴いてくれるひととのつながりや、音楽・芸術の意味という領域が原因で、身体的に硬くなって具合がおかしくなることがあるのです。

先にあげた四つの要素を、練習の段階から意識てき「練習」していくと、それは本番であなたが羽ばたくための的確な準備をしていることを意味します。あなたも一度は本番でよい演奏ができたことがあるはず。それを忘れないで下さい。あなたにはその能力があります。重要なのは全体像に基づいた練習です。

【要素1】身体の使い方

これがアレクサンダーテクニークが受け持つところです。練習の段階からアレクサンダーテクニークを使う。つまりアレクサンダーテクニークを使うことを練習する。すごく役に立ちます。これが決めてとなってあがり症が消えるひともたくさんいます。

【要素2】演奏技術

高い音を出す仕組み、低い音を出す仕組み。音が響くポイント。それらを「分かって」いて「意識的に」考えながら練習していると、不調に陥りません。ハードな状況でも、技術が機能します。たくさん演奏家とレッスンしているアレクサンダーテクニーク教師ならば、ここもカバーできます。

【要素3】聴いてくれるひととのつながり

ここを見失ったり、切り離したりしてしまうことからあがり症に陥るケースが一番多いと思います。練習中から、ほんの少しでよいから「聴いてくれるひと」を想定する。「そのつもり」で十分です。音階でもロングトーンでも聴いてくれるひとに何かを語りましょう。

【要素4】音楽・芸術があなたの人生または世界に奉仕する意味

最も言語化しにくいところですが、あなたが大好きな楽器の音を聴いたときに感じ、味わっている「それ」です。音楽を聴いていてあなたの奥深くに響く「それ」です。「それ」があること、「それ」のためにやっていることを「思い出す」のです。

これら四つの要素を、普段の練習の中で意識的に「練習」しましょう。練習がこれをあなたの技術/力として定着させます。この四つの要素が十分に「ケア」されれば、ドキドキしてもガクガクしても、素晴らしい演奏をすることになります。ドキドキガクガクはアドレナリンの作用であり、望ましいことです。

要素①は、アレクサンダーテクニークの先生が助けてくれます。
要素②は良い楽器の先生や演奏技術をよく勉強しているアレクサンダーの先生が助けてくれます。
要素③はカウンセラーや、こういう面を掘り下げたアレクサンダーの先生が助けてくれます。
要素④は、音楽そのものがいつも助けてくれます。

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