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Rさん(トランペット歴30年)
【開始1分で提示された解決策】
アレクサンダー・テクニークのレッスンを受講してから数ヶ月が経過しました。
本当であればもっと早く文章を完成させても良かったのですが、私としてはやはりどうしてもレッスンを通じて得られた成果が「本物」であったのかをある程度の時間をかけて確認した上で感想をまとめたかったので、結果として相当な日数が経過してしまいました。
なにせレッスンでは、開始から1分も経たないうちに私の奏法上の問題が指摘され、解決策まで提示されてしまったわけですから。
レッスンを受けられるという気持ちの高ぶりが元々あって、それにちょっとした偶然が折り重なってたまたま上手くいったと錯覚しただけなのではないか…そんな疑念も頭をもたげるのも冷静に考えればごく自然なことでして、その後の何回かの練習や本番を通じてレッスンの効果を実感してから書きたかったのです。
【マウスピースの角度】
レッスンでの先生のご指摘のメインは、マウスピースを唇に当てる角度をほんの少しだけ変えるということ。
普段よりも感覚的にほんの数ミリ左斜め下方向に楽器を当て、高音域を吹く場合はさらに斜め下にほんの少し下げてみては、というものでした。
そう、管楽器専門誌「パイパース」でも特集されたあのアンブッシュア・タイプの話です。
でも、そんな楽器の当て方は、私のン十年の楽器人生の中で実際にやったことも、それどころか試しにやってみようと思ったことすらも無かったので、
「は?こっちをろくに見もしないで何を言い出すんだこの人は。」
というのがそのときの率直な感想でした。
ただ実際に先生のご指摘を実践してみると、吐いた息が無駄なく、しかも無理なく楽器に伝達され、それらが全て確実に音に変化していくプロセスを実感することができたのです。
【楽器との一体感】
楽器との一体感が実現した、いわゆる「調子が良い状態」を自分の意思で作り出すことができるようになったということです。
好きな音域を好きな音量、音色で効率よく適切なタイミングでソリッドに楽器を鳴らすことができる、こんな凄いことが楽器の当て方をほんの少し変えるだけで簡単に実現できてしまったのです。
また、たまたまかもしれませんが私の歯並びにもぴったりくる無理の無い当て方だったのには驚きました(先生は私の歯並びをご覧になってはいないように思えたのですが)。
【同僚団員も気がついて褒められるほどのちがい】
レッスンの数日後には所属している団体の練習があったのですが、その際、優秀な他パートの同僚団員から
「楽器、何かしました?凄く良くなっているんですが。」
という最高にうれしい素朴な疑問をぶつけられたことも申し添えておきます。
ところで「調子が良い」という言葉は、自分では説明が付かないもののなぜか棚ぼた的に得られた良好な状態、停止した思考に立脚した偶然の産物を意味するものくらいにしか認識できていなかったため、これまで安易に使うことを意図的に避けてきた言葉でした。
しかし、今回のレッスンの成果を自分なりに簡単に言葉に変換するに当たっては、端的に「調子が良い」と言ってしまうのが感覚的に一番しっくりきました。
とにかく「調子が良い」わけですから、目に見える成果として音を外す回数が格段に減りました。
先生は「将来的には音を外す『必要』が無くなってくる」と凄いことを仰っていましたが、感覚としては理解できます。
楽器と体が一体化しているので音を外すのは感覚的には「言い間違える」くらいの意味に近くなっていくのかもしれません。指の練習は滑舌良く喋る練習に近くなっている感覚です。
「調子が良い」ということは息や体力の無駄遣いを防止できる、効率的に楽器を鳴らしているということでもあり、バテにくくなり、かつ疲労回復も早くなったということも実感しています。
もっとも、吹いていて楽しくなってしまい、調子に乗って長時間吹きすぎてしまうということもたまにやらかしますがね。
【本番の緊張が改善】
また、先生のレッスンのもう一つの顕著な効果としては本番で緊張することが無くなったということが挙げられます。
私には元々、楽器の音を出す直前の瞬間に
「あれ、ここってこの吹き方で大丈夫かな?」
という迷いが出て演奏が乱れるというクセがあり、できるだけ「頑張って無心で」演奏するということを心がけてきたのですが、今は基本的に「調子が良い」ことを前提に行動できるようになったので、楽器を当ててから音を出すまでの一連の動作の中に緊張というものが入り込む余地が無くなったのです。
こうすれば必ず音がちゃんと出るということがわかっているので、あれこれ迷う必要が無いのです。楽器を吹くまでの動作がある程度ルーティン化したのかもしれません。
今はアンブッシュア・タイプを意識し始めてから間もない時期ということで面白いことが自分の中で起こっています。
すなわち、アンブッシュア・タイプを意識してそれを準備行動につなげて吹いている時には事故がほとんど発生せず、反対に何も考えないで漫然と、あるいは急に慌てて吹いてしまった時にはレッスン受講以前と同様に色々と失敗することが多いのです。
ということで演奏の出来としては全体としてムラがある状況に変わりは無いのですが、自分の中ではその原因が論理的に整理できているので何のストレスもありません。もっとも、周囲は引き続き私の演奏にイラついているでしょうがね(苦笑)。
【オーダーメイド型のレッスン】
さて、このアンブッシュア・タイプを題材としたレッスンについて敢えて問題点を指摘するとすれば、このことについて一般論を一方的にどんなに熱く語られても、なかなか自分自身の奏法上の問題を解決してくれるオーダーメイド型の極めて有効なツールなのだと認識することが難しいものだということでしょうか。
「まぁ、学術的に(?)整理してみるとそんな分類方法もあるのかもね。」
「なかなか学者肌の先生だなぁ。」
「んー、マニアックすぎてついて行けない。。。」
あるいは
「あんなのは上級者向けの話で、基礎ができていない自分には関係ないんだろうな。」
などという感想を持つにとどまり、日常の楽器生活を引き続き漫然と送ってしまう可能性が高いのではないか、ということです。本当は初級者にこそ必要なレッスンだと思うんですけどね。
もちろんアンブッシュア・タイプの話に限らず、楽器のレッスンというのは多かれ少なかれそういう傾向があるのかもしれません。
でも、冷静に考えれば当たり前のことなのですがレッスンの当事者でない限りは自分自身の問題を解決してくれることを期待すべきではないんですよね。
奏者ごとに全然違う個性を持っている以上、示されるべき処方箋は当然個別的であるはずだからです。
【レッスンは誰にでもオススメ】
ということで、私としてはご自身の年齢や経験年数や演奏のレベルに全く関係なくBodyChanceでのレッスンを実際に受けてみることを強くお勧めする次第です。
レッスンの雰囲気は公開されている動画で見られるものと全く同じで、非常にリラックスした空気感の中で先生との対話を重ねながら進められていきます。
吹いている時間と喋っている時間のどちらが長いかは人によって違う感じですが(私は喋ってばかりでした。)、いずれにしても密度の濃い時間を過ごせるのではないかと思います。
先生の相手の悩みを丁寧にあぶり出して受け止める能力には本当に舌を巻きます。
またレッスンの料金について色々な感想をお持ちになるかもしれませんが、なかなか上達しないということで例えばマウスピースを変えることに突破口を見出してしまって結果的に効果の不透明な投資をしてしまうよりも、よほど明確な効果が得られる有効な投資だと思います。
以上とりとめのない長文になってしまいましたが、レッスンに対するお礼の意味も込めて書いてみました。お読みいただいた皆様のご参考になれば幸いです。
(トランペット奏者・Rさんより)