ホルンという楽器にある程度真剣に取り組み、自分で自分の演奏能力を伸ばしていこうとされている方々の多くは、「アンブシュア」ということに関して悩んだ経験があったのではないでしょうか?あるいは、現在進行形で悩んでおられるかもしれません。
ところで、アンブシュアの悩みの多くは、「アンブシュア」を意識したときに始まっている、そんな気はしませんか?
現在、アンブシュアのある特定の範囲の見た目やマウスピースの位置を基準に、それとは「異なるように見える」状態を一括りに「間違っている」「問題が在る」「これではこれ以上の成長はできない」と一方的に評価する論調はとても強いです。多くの権威ある著作や教師の教えの中に見られます。
ですが、これらの「理論」の論拠は何でしょうか?生理学的な知識や物理学的な知見、あるいは科学的な方法論で導きだされた結論ではないように思われます。おそらく一部の奏者の「経験論」なのではないでしょうか?
一方で、これらの「理論」からすると「間違った」アンブシュアのように見えても、実際に素晴らしい演奏をする世界的にも有名な奏者はたくさんいます
ならば、ひとつの経験論が自分に適合しなくても、全く心配しなくても良いように思えます。
たとえば「アゴを張る」「上唇:下唇=2:1」というのが頻繁に言われる「正しい」ことですが、これを意識したり取り入れることでウマく行った人は、この経験論が自分にとってもどうやら合うらしいということです。
逆に、これをやってもなかなかウマくいかない、あるいは逆に吹きづらい、という人は、全く気にしなくても良いのではないのでしょうか。
アンブシュアの見た目は、「望む音」を実現するための体全体の動きが、口元ではどう見えているか、というだけのものです。ということは、「からだ全体の総体的な動き」こそが、演奏を左右しています。そして、その「動き」を起こしているのは「自分の考えていること」なのです。ならば、「自分の考えていること」を変えてみましょう。身体もアンブシュアもそれに結果的についていきます。アンブシュアだけ切り離して考えてもうまくいきません。
全体としての「やり方」が変わることで、部分の見た目はそのうちかならず変わります。そして、考える事が変わり全体的なやり方が変わることで演奏が良くなれば、結果的にアンブシュアは「良く」なっているでしょう。
練習のとき、なにを考えているかな?どういうふうに考えているかな?どんな音を望んでいるかな?今どんな音が鳴っているかな?背中がどんな感じがするかな?からだはどういうふうに動いているかな?腕や手はどうかな?….といったふうに、好奇心を持って自分自身を観察してみましょう。そうすれば、良い変化はもうすぐそこにあります。