癖の多層性

週末、プロコース大阪梅田校にて BODY CHANCE 校長のジェレミー・チャンスさんの授業があったので、通訳のため私も参加しました。そのとき、私もホルン演奏へのアレクサンダー・テクニーク応用をレッスンしてもらうチャンスに恵まれました。

ジェレミー
きょうは、どういうことを見ていこうか?

バジル
最近は、ミスを歓迎する事や、『ミスしても全然構わない』と意図的に思う事で緊張を減らすという実験をしていて、それがとてもうまくいっている。でも、ミ スしてよいから『〜しよう』の部分がちょっと不明確というか、ミスしてよいとわざわざ考えなくても済むようなもっと直接的で単純な考え方がないか、探って いる。

ジェレミー
なるほど。じゃあ、こう考えてみるのはどうだろう?

・やりたい演奏がある。それを思い描いて演奏してみる。
・思い描いていること異なることが起きたら、「異なることが起きたな」と気付ける。
・意図があるからこそ、起きた事がどうだったのか知る事ができる。気付く。
・だから、「やりたい演奏をやってみよう」。それで済む。

というのはどうだい?

バジル
なるほど。確かに頭がとても整理される感じがする。ちょっと吹いてみるね。

(シューマン作曲 アダージョとアレグロ の冒頭をから数フレーズを演奏してみた)

なるほど…. 予想していたよりうまくいったし、思い描いていた通りにうまくいかなかったところも、あまりショックを感じずに「あ、こうなったな」とただ思うだけという感じがあった。

ジェレミー
意図があればこそ、起きている事への気付きが生まれるんだね。

バジル
で、いまこうして人前(プロコーの授業出席者が15名ほどいた)に立って吹くいうことで、ちょっとドキドキして、いま少し手足が震えている。

キャシー・マデン先生(BODY CHANCE に毎年教えにくる、世界No1 アレクサンダー教師)が夏に来たときに言っていた話を最近よく理解できるようになったんだ。

キャシーが言うに、手足が震えるのは、人前に立ったり、パフォーマンスをするときに湧く自然なアドレナリン、興奮を、「抑え込もう」としたり「落ち着こう」としたときに、湧いてくるエネルギーとそれを抑えようとするエネルギーが葛藤して震えるんだと。

で、確かにぼくもそれをやっていると思うんだ。出したいものを、抑圧している感じ。

ジェレミー
なるほど。精神的な面で「抑圧」ときみが呼んでいるプロセスの、身体面がたぶん分かったと思うから、ちょっと実験してみよう。

ちょっと手を使うよ。

*注*アレクサンダー・テクニークのレッスンでは教師が、生徒の身体的プロセスにある余分な緊張パターンを「やめさせる」ために少しだけ手を触れる。そのとき、教師は自分の身体を余分な緊張がないように協調させているので、ミラーニューロンなどの働きで、生徒は触覚情報を通して本能的に教師の身体の使い方をコピーし始める。すると、起きていた無意識で余分な緊張が抜け、余分なことが起きていない状態を一時的に体験する。その体験が、新たな身体の使い方の存在に気付かせ、癖のパターンに変化が始まる。

こっち行けるかい?
(私にとってはちょっと前のめりに感じるような動きが起きた)

それで吹いてご覧。

バジル
なるほど。吹いてみます。

(また吹き始める。するとその途中で….)

ジェレミー
おっと、こっち!
(と、また私を前のめりに感じるような動きに促す)

バジル
なるほど。高音に行ったり、音量を増したりするとき、息の圧力を高める仕事が増すわけだけど、そのときにちょっと後ろに反るんだね。

ジェレミー
そうそう。ホルンというのは思いから、腕の筋肉の中でも肩甲骨から軸や肋骨につながる筋肉が楽器腕構造を安定させ楽器を支える仕事をしているわけだ。

それらの筋肉は、息を強制的に強く吐くときにも使われることもあるから、きみの感覚の中では無意識的に、息の仕事を増やす場面になると、息の仕事を担当するところに付け加えて、腕を安定させる筋肉の仕事も増やしてしまっているみたいだね。

バジル
あー!なるほど。確かにやってる。もう一度吹いてみるね。

(吹きながら、何度かジェレミーが手と言葉をを使って、私が癖でやっている腕構造の筋肉の過剰な使用を始めると、それを気付かせやめるように仕向けてくれた)

うーん、たしかに。一定の音域をや音量を越えると、いつの間にか腕安定のための筋肉を息と混同して付け加えて使っているね。

あと、さっきからなんだか足を動かしたいのに自由に動かせない感じがする。なんでだろう?

ジェレミー
そう。楽器を頭の上まで挙げたり下げたりして、大きく動かしてごらん。

(実際にそうしてみた)

それが腕の仕事。

そして、息の圧力が増えると言う事は、息が楽器を動かす力が強いでしょ?その分、楽器を安定させる力は確かに増える。でも、楽器を安定させる腕の仕事と、息の圧力を強めるお腹の仕事は別の仕事。

さらに、息の流れが強いと、身体も動かされる。その分の安定化を担うのは、軸。軸の仕事も増えている。

きみの場合は、息の仕事や軸の安定の仕事が増えると、「仕事が増える」という直感から、感覚的に、腕による楽器の安定化の仕事の感覚を、強めようとして、腕の仕事を過剰にしてしまい、演奏の邪魔になるということが起きているわけだ。

必要以上の腕の仕事をつけ加えている。

そしてそれは、腕構造を過剰に軸の方に引っぱり下げることで楽器を内に引き込む動きとして私には見える形になっている。それが、心理的には、アドレナリンや興奮の「抑圧」とリンクしているように見えるんだ。

脚は、腕を必要以上に軸に引きつける(固定している)その動きによって胴体が後ろに傾き、そのバランスをとろうとして働かされている。だから、動きにくくなっているんだよ。

バジル
なるほど!

ジェレミー
最後に、その楽器を引き込むパターンに対して働きかけてみよう。

「楽器を外に」と『思って』吹いてみて。

バジル
なるほど、楽器を内に引き込む「癖」をやめるために、「楽器を外へと『思う』」なんだね。

身体が固まる一番大きく原初的なパターンとして、「頭が後ろへ下へ引っ張られて固定される」から「頭が動けて前へ上へ行くと『思う』」というアレクサンダー・テクニークの基本と同じ原理だね。

「やる」んじゃなくて『思う』だけ。なぜなら、そもそも「やりすぎ」があるんだから、その「逆」を付け加えたらもっと大変になる。でも、「やりすぎ」の結果起きている事の『逆を思う』ことで、結果的に「やりすぎ」を「やめる」ことにつながる。

ジェレミー
そうそう。「楽器を外へ」というアイデアは、ベストではないのは分かるんだけれど、現時点では役に立つと思う。いまそれ以上に思いつかないから、試してみよう。

バジル
なるほど。じゃあやってみる。

(また吹いてみた。)

ああ、「楽器を外へ」と『思って』いると、楽器を内に引き込むパターンがもっとはっきり感じられたし、その影響で喉で息が止まるようなこともやってるのがよく分かった。

音を出す直前の、「外しそうだな….」という心理というか恐怖感から、引き込むのをやっているのが分かったよ。

ジェレミー
うん。「楽器を外へ」は良いアイデアではないんだけれど、結果的に習慣を認識する役に立つとは思ったんだ。その通りになったね。

きょうのレッスンは、解消といようり、アレクサンダー・テクニークの大事な原理のひとつである『習慣の認識』(詳しくはこちら)まで行けばそれでよいと思うから、きょうはこれでいいかな?

バジル
勉強になりました。ありがとう。

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