息と肚と骨盤と

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以前、わたしがアレクサンダー・テクニークを学んだ先生のうちのひとりであるサラ・バーカー先生とのレッスンについてお話ししました。

骨盤がみちびいた、人生で初めての高音域
腰痛にサヨナラできたときの話

サラ・バーカー先生からは、毎年「骨盤」について何か大事なこと学びました。

そのサラ先生が、ま2012年2月に2週間日本に滞在してくださったときのこと。

私はサラ先生の授業を多く通訳し、そして受講もしました。

するとまたも、「骨盤」が私にとってキーワードになりました!
毎年毎年びっくりです。

それというのは、

今回は骨盤に関係することで、2つの大きな発見がありました。

1:骨盤を含めて吹くことで、『肚』が実感できた
2:骨盤のイメージがより正確になった結果、姿勢や歩き方が良くなった。

というものです。

【喉が力む癖】

授業中、自分のホルン演奏を見てもらう機会がありました。

相談した内容は、自分で気が付いてはいるけれど、どうもコントロールしたり抑えたりすることができない癖がいくつかある、というものです。

その中身は、

・楽器を構えるとき、ちょっと腰を入れる/立てすぎてしまう。
・発音時,少しだけだけれど喉を一瞬、詰めてしまう。
・発音時、少し腕を力ませてしまう。

です。

いずれもアレクサンダー・テクニーク教師になるための勉強をしていた3年半の間に、大幅に減少していったものの、昔からずっとあった癖です。

実際に楽器を構えて発音する様子を見てもらいました。
すると、サラ先生はこう言いました。

『頭が動いて身体全体をついていかせながら演奏しようとするとき、骨盤のずっと底のほうや座骨、股関節をもっと意識的にイメージに含めてみて』

【骨盤も意識に含めて吹くと『肚』が働いた!】

おおー、今年も骨盤か!と思いつつ、サラ先生に手伝ってもらいながら実際に試してみました。

すると…

おへその下、恥骨より数センチ上のあたりがとても強く突っ張る、といういままでにない感覚が息を吐くときにありました。

そういう息の吐き方で実際に発音すると、驚いたことにさっき説明した癖がほとんど起きなかったのです。

この体験から分かったことがありました。

わたしは、本来働かせるべきところ(私の場合、おへその下と恥骨寄りの深いところ)を何らかの理由で活用できていなかった。

そして、必要な力を他のところでまかなっていた。
私の場合は、それが上半身の力だった、ということなのです。

管楽器演奏に必要な圧力の強い息を吐き出すという作業は、けっこう「力」を使います。管楽器奏者は、「息のアスリート」だと言えると思います。

そういう要求の高い仕事を、本来その仕事をいちばんうまくこなせる場所に任せずに、ほかのところにやらせると、効率がよくないので身体が緊張する、というふうに考えてみると比喩として分かり易いと思います。

このレッスンでは「息を吐く仕事」を担当する、胸骨と下部肋骨より下の様々な腹筋、とくにいままで使っていなかった部分を参加させたことで上半身を力ませる癖がぐっと減るのだということを学びました。

癖の正体は、『仕事の代行』だったわけですね。

私がこのレッスン感じた、「息の仕事を強力にこなせる場所」はきっと、武道なので「肚」と呼ばれるエリアなのだろうと思います。

ウィーン奏法で「Stutze」と呼ばれている場所も、おそらくちょうどこのあたりなのだろうと思います。

【骨盤のイメージを、間違えていた!】

もうひとつ大きな発見がありました。

こちらはホルンに直接関係することではありませんが、立ち座りから歩くこと、そして楽器演奏まで幅広く重要なことでした。

それは、「骨盤のイメージに間違いがあった」ということです。
イメージを誤っていたので、身体にちょっと変なことをさせていたのです。

簡単に言うと、私は骨盤自体のイメージを、実際以上に「傾いた」状態で思い描いていました。

それが原因で、少しですが腰に負担をかけ、股関節はちょっと弛みすぎで、若干バランスを崩していたのです。

しかし今回、サラ先生が「骨盤」のことを非常にうまく教えてくれおかげで、ふとしたときに自分のイメージに誤りがあったことに思い至りました。

目の前にあった骨格標本や解剖図に提示されているものと、自分の思い描いていたものが「ズレてる!」と突然気づいたのです。

不思議なものですね、気付くともう明白なのに、それまではいくら見てもまったくなんとも思わなかったのですから…..。

より現実に沿ったイメージを持てるようになったおかげで、自分が古いイメージ(=癖)に戻っているとすぐ気付くようになりました。

骨盤のイメージが修正されたことで、高校生のときに負ったケガをかばうような動きの癖の影響でそれまで動かしづらかった右股関節が安定してくるようになりました。

すると、これまた不思議なことに、3日ほど右半身全部がバキバキに張りました。

ちょっとでも癖に戻りすぎると、ビキ!っと右半身全身に痛みが走るのです。

今までかなり異なる筋肉の使い方になったことで、ある種の「筋肉痛」に一時的になったのだと思います。

しかしその痛みがあるおかげで、新しい身体の使い方を思い出させられます。
非常に印象的な興味深い体験でした。

Basil Kritzer

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息と肚と骨盤と」への2件のフィードバック

  1. こんにちは。
    中学生のときにトランペット、高校生のときまでホルンをしてて、8年のブランクでもう一度ホルンに再挑戦しようとしている者です。
    社会人で隙間時間を活用しながら、吹いている時間吹かない時間問わず、色々な練習に励んでいます。

    学生時代それほど上手ではなかったので、アレクサンダーテクニークを取り扱っているこのメルマガを読ませていただいています。
    毎回楽しみに読ませていただいています。

    大学生のときに、その頃楽器は全然触っていなかったのですが、その間に太極拳をしていました。
    そのときの太極拳の先生は、呼吸を整えることでゆっくりとした動きが無理なくできるよと教えていただき、準備体操でも基礎的なストレッチこなしたり、骨盤や背中、脚の姿勢チェックなどを欠かさずしていました。
    こうすると、硬い動きっていうのがなくなって自然と身体が楽に動いていたのを覚えています。
    ちなみに、ボキボキッ!ってなるのも身をもって経験しました(笑)

    それを楽器に生かすとなると、むしろ研究ということになって試行錯誤を繰り返すことになると思うのですが(笑)、せっかく楽器を手に取っちゃったので、メルマガを読みながらいい音鳴らせるように頑張りたいです!

    コメントで質問とかではないのでごめんなさい。

    またメルマガ楽しみに待ってます!

    • ベルレさん

      コメントありがとうございます!
      太極拳やヨガは、演奏者にすっごい有益だと思います (^^)

      Basil

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