唇のセット

2年位前のことでしょう。あるとき、わたしのBodyChanceメソッドの師であるジェレミー・チャンス先生にレッスンを受けたときのことです。

 

ホルンを持っていくのは面倒だったのでマウスピースだけ持っていったのですが、シンプルに発音の仕方を見直すことができたので、よいことでした。

 

 

レッスンでは「唇のセット」について、発見がありました。

 

 

管楽器で音を発するとき、息の圧力が十分に高まり、望み通りの音程や音量で発音するための「セット」をする『間』のようなものが、一瞬ですが必要です。

 

これはみなさんも体験的に分かると思います。金管楽器やオーボエなど楽器の管の抵抗が大きい場合はより顕著に感じます。

 

 

私はホルン吹きですから、中高音域になればもう必ずこの「セット」が必要になります。

 

しかし、レッスンを受けている時、ジェレミー先生に尋ねられたわけです。

 

「身体のどこを、どうセットする必要があるの?」と。

 

 

… うーむ …

 

そう問いかけられると、あまりちゃんと考えたことがなかったのに気付きました。

 

昨年の浜松国際管楽器アカデミーにて。今年もお世話になります。

昨年の浜松国際管楽器アカデミーにて。今年もお世話になります。

 

私がマウスピースで発音する様子を見て、ジェレミー先生は私が発音するときに胴体を全体的に不必要に緊張させているのを観察しました。

 

これまでも繰り返しこのパターンをジェレミー先生は私が演奏するときにやっているのを観ていましたから、

 

「何かが必要でやっているけれど、そのやり方ややっている場所が間違っているんだろうな」

 

と思ったらしいのです。

 

 

そこで、先の問いかけを私に投げかけたわけです。

 

問いかけられてみると、「セット」は「アンブシュア」の仕事であることがはっきりしてきました。

 

アンブシュアは弦楽器の弦の長さや張りの強さに相当します。息を出すわけですが、息が通る唇は「閉じている」わけです。

 

 

つまり、「閉じ具合の調節」「閉じる力の設定」によって、望んでいる音量で望んでいる音程がちゃんと発音されるかが決まります。音量の大小は息の仕事(おなかの仕事)が決めていますが、たくさんの息が出るならそれに対応したそれなりの「閉じる力」を作っておく必要があります。

 

だから、息をさあ出すぞというときには、アンブシュアが適切に「設定」されている必要があるのです。この「設定」が「セットする」ということです。

 

 

しかし私はこれがあいまいになっていました。どこを「設定」するのか明確に分かっていなかったので、からだ中を「セット」していました。早いはなしが、からだに無駄な力を入れていた、ということです。

 

この「セット」はしばらく管楽器をやっていたひとならだれでも自然にやっています。ですから、「セットする」ということ自体は本能的にやりたくなることなのです。

 

ですが、どこをセットするのか。あるいは何をセットするのか。それが明確でないと、ぼんやりと「セットした感じ」だけを得る為にからだに力を入れてしまうのです。必要な仕事が前もってできていることを確認して安心して発音したいからですね。

 

 

何を「セット」するのか明確には分かっていなかった私は、本能的に全身を「セット」しようとしていました。そうすることで結果的には力みすぎかつ姿勢も影響を受け、誤差やずれが生じていました。

 

そこで

 

「セットするのはアンブシュア」

「胴体は呼吸のために自由に動いていい」

 

ということをはっきり意識しながら吹いてみたところ、

 

ものすごくクリアで音程のツボを最初から突いた発音が、労せずしてできました!

 

アンブシュアの手応えというか、明確な感覚も感じられましたし、コントロール能力やコントロールできる可能性が瞬時に上がったような感じがありました。

 

これは、正確にはコントロールが増したのではなく、コントロールを乱す要因が「減った」ことにより、本来のコントロールや反応のよさが引き出せたことを意味します。

 

 

BodyChanceメソッドのレッスンをする側になっても、受ける側になればいまだにこうしてビッグな前進や手応えが現れるから、BodyChanceメソッドのレッスンを受けるのは楽しくてたまりません。

 

練習も俄然やる気になります。やっぱり、うまくなる瞬間と実感はものすっっっっごく気持ちが良いし、嬉しくなりますね。

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唇のセット」への2件のフィードバック

  1. すいません、コメントさせていただきます。
    私は高校一年生で、吹奏楽をするため、全国で金や銀を、とっている強豪校に、他県からきて寮生活をしています。
    楽器はホルンで、その高校の、楽器の奨学生の一番上のやつにも受かりました。

    しかし、最近、なかなか思うように吹けないな、と思いアンブシュアを確認してみたら、中学時代のときとは全く違うアンブシュアになっている気がしています。

    近々、コンクールのオーディションもあり、どうすればいいのかわかりません。

    ちなみに、思い通りに吹けないというのは、ピッチがぐちゃぐちゃ、音を以前と比べて外す、ちょっと吹いただけでバテるというものです。
    どうすればよいのでしょうか。。。

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