日本の学校吹奏楽、アマチュア吹奏楽ならびに管弦楽の演奏水準は世界的に見て抜き出て高いことはまちがいありません。
これは、日本社会が「真面目に努力を続けること」を非常に高く評価し、重要視していることと関係が深いのではないか、と思います。
世界的に見れば長い学校での授業時間の後にすぐさま部活で音楽に取り組むその姿勢。さらに極めて長い労働時間の後や合間に趣味で音楽に取り組むその熱意。
これは日本の音楽文化にとって大きな活力となっています。
その日本の音楽文化の重要な土壌のひとつである学校吹奏楽を盛り上げるエネルギーを掻き立てているのはまぎれもなく、夏の吹奏楽コンクールです。
地区大会、県大会、支部大会を経てようやく到達できる全国大会は全国の中高生にとって強い憧れの対象であることでしょうし、吹奏楽部員だった頃のわたしにとってもいつも意識していたステージでした。
夏休みをほとんど丸々返上して、しかも毎日朝から晩まで続く練習。コンクールに向けた練習の厳しさ、辛さがコンクール強豪校でもそうでない学校でも多くの学校に共通しているのは、部活の中でも吹奏楽部が随一なのではないでしょうか。
その徹底した規律と集中力は、時として諸刃の剣になってしまいます。
コンクールの結果に対して真剣になりすぎる余りに、本来音楽の演奏で生み出されるはずの幸福ではなく、夏のコンクールの練習から本番までの期間が恐怖と苦痛に満たされてしまいがちなのです。
より充実した音楽のため、より意味ある練習のため、よりたくさんの幸せのために存在するはずの部活動や演奏会、そしてコンクールが、ここで真逆のマイナスの影響をもたらしてしまうのです。
この本は、そのような状況を改善することを願って書きました。
第1章では、
「いかにコンクール前や本番前の時期を健康かつ楽しく過ごすか」
ということについて、これまでしっかりと活字にはなっていなかった考え方を提案し、また具体的なエクササイズや例も挙げています。
部活動はこうあるべきー。
コンクールはこう取り組むべきー。
本番前にはこう臨むべきー。
わたしたちがそうやって 「いつのまにか・なんとなく」 抱いているイメージや価値観があります。
なんとなく、
強豪校はそうしているんじゃないだろうか。
コンクールや本番に臨むからにはこれくらい当然なんじゃないだろうか。
と思っているようなことはありせんか? そして、同時にそれに疑問や迷いを感じていませんか?
そういう漠然とした雰囲気や思い込みに光を当て、みなさんが実は考えていたり、やってみたかったりしたことに言葉と形を与えることを目指しました。
第2章では、
・天野正道さん(作曲家)
・中川英二郎さん(トロンボーン奏者)
という音楽界の第1人者の方々に。
・木管五重奏「カラフル」のみなさん
はクラシック音楽をより楽しく、親しみやすく楽しんでもらう活動に本気で取り組んでおられる若いプレイヤーたちに。
そして「スラムダンク勝利学」でよく知られている、
・辻秀一さん(スポーツドクター)
スポーツ競技にどのような心の準備をして臨むかに関しての研究と教育の第一人者に。
それぞれ吹奏楽コンクール、本番、部活動、音楽についての本音と提言をお伺いしています。
この方々のお話や価値観に触れると、より健全で幸福な部活動を望み、またよりよい演奏を追求されているみなさまにとってはとても腑に落ち、また勇気付けられることがたくさんあるでしょう。
第3章では、
・羽村市立羽村第一中学校吹奏楽
・明治大学付属中学高等学校吹奏楽
にわたしが伺ってアレクサンダーテクニークのレッスンを行った様子がレポートされています。
どちらの学校も、音楽と教育にまっすぐで熱い想いをお持ちの先生に指導されている吹奏楽部です。
世間的には強豪校と認知されている両校。でもその部員たちも、どこの学校とも変わらず悩み、戦い、楽しんでいます。
彼らの取り組んでいること、そしてそれにわたしが提案しているアドバイスやアイデアはどこの吹奏楽部でも取り入れていけることです。きっと参考になるにちがいありません。
それでは、「バジル先生のココロとカラダの相談〜今すぐできる・よくわかるアレクサンダー・テクニーク〜コンクール&本番編」をぜひお楽しみください。4月28日発売です。
2015年4月 Basil Kritzer
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