自然倍音を使った練習パターン

個人的に、最近は自然倍音を使った練習を生徒さんにお薦めすることが多いです。

その一番大きな理由は、自然倍音だけを使って音を演奏する能力を高めていくのが最もホルンという楽器の構造に即しているからです。

モダンホルンは、何種類もの長さの管の集合体です。ナチュラルホルンが、いくつもまとめてくっついているわけです。
ダブルホルンの場合、16種類の異なる長さ(替え指含む)の管が選択肢として常にあります。

ホルンは、ひとつの長さ(指使い)で16個以上の自然倍音があります。
演奏者は、16個の自然倍音の中から一つを選んで演奏しているのです。
思った音を出すのは、人間の動きそのものです。

ただし、「管の長さを変える動き」は指の運動であり、「音を出す」プロセスに関係がありません。ホルンの演奏技術の中で、簡単ですし、それほど重要とも言えません。

そこで、練習から一旦指のことは外し、「音を出す」能力を高めることに専念しやすいのが自然倍音を使った練習なのです。

まずひとつ管の長さ(指使い)を決めて、10?16個くらいの自然倍音をさらいます。そして、また別の長さの管で同じようにやってみます。これを積み重ねていくと、「どの指でどんな音が出るか」が自然に覚えられるようにもなってきます。「指使い」をそれだけ取り出して毎日の基礎として練習する必要さえ、なくなってくるのです。

個人的には、長い管(F管でレバーすべて押さえる)から順に短い方へ移行していくことを勧めます。長い管ほど、息の仕事の割合が大きく、唇の仕事の割合は小さいです。管を移行するにつれ、その割合が逆転していきます。こうすることで、唇という小さく繊細な部位のトレーニングが構造的に有利になされます。

まず、無理なく出せる低い音から、ひとつひとつの倍音にたくさん息を入れながら鳴らしていきます。唇をゆっくり閉じていけば、自然に音が上がります。とにかく息をたくさん使いましょう。

息がなくなったら、無理せず息を継ぎましょう。さっきより少し高い音から始めて、同じ管の倍音列を上がっていきましょう。息をたっぷり使いながら。

あるいは、さっきと同じ音からはじめてもいいでしょう。さっきよりスルスルと速く上に行けるかもしれません。呼吸の動きと、音を作る動きがより協調されてきているからです。

息をたくさん使うのが難しくなるような高い倍音まで来たら、むりをせず、指(管の長さ)を変えてまた低い音から同じように息をたくさん使いながら倍音列を上がっていきましょう。

この繰り返しです。

この練習パターンだと、ホルンの演奏に要求される音を作り動かす動きの能力が、他の要素に惑わされることなく自然に練習できます。

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自然倍音を使った練習パターン」への3件のフィードバック

  1. 音が割れてしまう….どうしたらいいの?

    【質問】 自分は高校からホルンを始め、今二年目です今年のコンクールメンバーにも選ばれ、ただいま猛練習中です。様々な問題点はあるのですが、今一番言われていることがありますそれは、「音が荒い」や「音が割れやすい」というものです特に高音や大きな音を出そうとするとそうなってしまいます何か改善する方法、練習はあるのでしょうか?それと、なぜ「音が割れて」しまうのでしょうか? 【回答】 本当に割れているかな? まず確認しておきたい大事なことは、割れている / 荒れている とひとに言われるその音は「本当に割れている / 荒れているのか?」ということです。ホルンの音色は実に多彩です。あまりホルンを知らない人や、ユーフォウムのような柔らかく丸い音「だけ」を「良い音」なんだと思い込んでいる人からすると、ホルンの本当の響きや多様性を「悪い」と決めつけることがあります。 ぜひぜひ、様々なオーケストラやホルンアンサンブル、ソロのCDを聴いてみてください。演奏会にもでかけてみましょう。ひょっとしたら、周りが「割れている」「荒れている」と言う音を素晴らしい奏者たちはちゃんと鳴らしているかもしれません。 なので、本当に自分の音は荒いのか?割れているのか?ダメなのか?自分に問いかけてみましょう。そして機会があればプロのオーケストラの先生に一度習って尋ねてみるのもよいでしょう。 音が割れる/荒れる原因 さて、本当に音が良くない意味で割れている荒れているのだとしたらその原因は何なのでしょうか?高い音や大きい音、とおっしゃているので、おそらく息のスピード・圧力の作り方に起因しています。 大きい音や高い音は、大雑把に言うと「息のパワー」が必要になります。息が外に流れようとする量(大きい音の場合)、力・スピード(高い音の場合)が増しています。その増し方には二つあります。 1:息の通り道を狭くする方法 「エー」や「イー」と声に出してみてください。そのとき、舌の根っこの方が上にあがっていますね。こういう状態にすると、息の通り道が一部狭くなります。すると、息は口から出るときにスピード・圧力が増します。ホースを指で抑えると、ピューッと勢い良く水が出ますね。それと似ています。また、首やのどのあたりに力を入れるとやはり息の通り道が狭くなるので、息が外に流れるときの勢いは強まります。 舌で通り道の形を変えること。これは「悪い」わけではありません。むし…

  2. 基礎練習不足?それとも吹き方の問題?

    前回のQ&Aでご質問頂いていたMさんより、さらに質問を頂きました。前回の内容はこちらです→『Q&A マウスピースの押しつけ過ぎはどうやったら直せるの?』 【メルマガ読者より質問】 Mです。お返事ありがとうございます。確かに親戚は金属アレルギーで私もそうかもしれません。押し付ける事に関してもものすごい前かがみで首!?の力で押し付けていました。もう1つ質問があります。高音の吹き方がおかしいということです。まず見た目がものすごい力が入っていて見苦しいこと。高音は普通ロングトーンすればでると聞きますが私は高音のロングトーンをすればするほど唇が腫れていき高音がでなくなっていきます。そしてトランペットのような音になっていきます。音質も全ての音域で開いた軽過ぎるキンキンした音です。うわずっているというか落ち着きがない音です。変な癖があるとみんなに言われますがどうやったら直るのでしょうか。もうすぐ先輩が引退して私は1st吹かないといけません。そもそもこれは基礎練習不足なのでしょうか。それとも問題のある吹き方をしているのでしょうか? 【回答】 前回の内容(詳細はこちら)をお読みになったことで、ご自身の傾向に気付かれたのは素晴らしいことです。その調子で、観察を続けて下さい。 高音の練習方法 まず、高音の練習方法に関して考えていきましょう。「ロングトーンで高音を出せるようにする」という練習方法には無理が起きやすいかと思われます。高音を少しづつより自由に使いこなせるようになるためには、 ステップ1: 高音が出る「吹き方」を探って、高音が出せるという経験を少しづつ積み重ねて行く。 ステップ2: 高音を出せた経験が積み重なるにつれて、その高音を「使って」色々演奏してみる。 という2段階があると思います。「ロングトーン」はステップ2ですから、ステップ1に十分月日をかけてからにすた方が良いかもしれません。「高音のロングトーン」は高度な技術です。「基礎練習」とは言えないですね(金管楽器の場合)。 ステップ1の練習方法として有効なのは、リップスラーでゆっくりと高い音に移って行くような練習方法です。息をしっかり吐き(注意!吸うことはあまり意識しなくてOKです。大事なのは、しっかり吐くことです)、唇を動かしてはじめて音が高い方へと移り変わって行きます。金管楽器の場合、指またはスライドのポジションをひとつ決めて、指やポジションの移動は使…

  3. ピンバック: 自然倍音を使って、低音を練習する | バジル・クリッツァーのブログ

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