アガった経験をお持ちの方、あるいは本番ごとにアガって辛い、ソロになるとアガってしまう。。。。。 そんな方も世の中にはたくさんおられると思います。
今回は、このアガリについて考えてみたいと思います。
わたし自身、中学時代から、大学時代を通じてアガリの問題に長く苦しみました。
いまでもひとより緊張する方だと思います。
しかし、この長い苦しみを通じて分ってきた事、学んだ事も多くあります。
アガリの一種は、「高揚」している状態を「恐怖」と混同してしまうことにあります。
他人が周りに存在し、奏者に注目を向け、ステージに上がり照明を浴び、音楽を奏する。
これは、「ふつう」ではないのです。
その場に大きなエネルギーが生まれており、特別な状況なのです。
そのような状況にいるとき、わたしたちはその場を最大限に生きるため、「ふつう」の状態よりも高いエネルギー状態に自分自身を持っていきます。そうであってこそ、その状況において建設的に積極的に関われるのです。
ここでいうエネルギー状態とは、脳からの様々な分泌物、心拍数の亢進、血流の増加、筋肉の張りの変化などの総体です。
こういう高まった状態は、わたしたちの生体システムからの大事な贈り物なのです。
………ところで!
ステージという特別な場所に存在するために体が用意してくれる状態に、現象面でだけ似た状態が存在します。
「恐怖」です。
恐怖すると、心拍数は上がり、筋肉は収縮し、血流は増え、発汗します。アドレナリンがたくさん分泌されます。
この「恐怖」の感覚と「高まった」状態の感覚が、少し似通っているのです。
そこで、何が起きるか。
思いがけず「高まった」状態になってくると、不慣れなその状態に当惑して過去の経験から、状態が似ている「恐怖」というレッテルを貼ってしますのです。
このときに、何事もウマくいかない「アガリ」が起こります。
「やろう」という自然な気持ちと、「逃げよう」という解釈された気持ちが葛藤を起こすのです。
わたしたち人間の行動システムは、矛盾した指令が同時に行くときに最大限に負荷がかかり、それ故にウマくできなくなるのです。
それでは、どうすればいいか。
本番前、本番中、あるいは本番の事を考えたときに、汗が出てきたり、心臓がドキドキしたり、口が渇いたり、体が震えたりしてきたら、まずその状態に感謝しましょう!
その状態は、「本番」という特殊(素敵)な状況で最大限にやりきるためにあなたの体、存在全体が用意してくれているエネルギーなのです。
そのエネルギーを感じたら、そのエネルギーを使って、奏する音楽の事を考えましょう。どんな音ですか?どんなフレーズですか?どんなストーリーですか?
そのエネルギーを、音自体に方向付けましょう。
普段と感覚が違っても大丈夫です。音のためにそれを使いましょう。
そうすれば、家での練習や、リハーサルのときには経験できない自分の音を奏でることができるのです。