◎大学時代に一度レッスンを受けた後、本格的にジェイコブズのレッスンを受けるようになったのはオケに入ってからのことだった。体の力みの問題にかなり悩まされるようになっていたからだ。
◎パワーというものを体の力みと混同していたみたいだ。ジェイコブズは、弱さ=リラックスという意味付けで、弱さを味方につけなさいと教えてくれた。
◎体を力ませずに単純に息を吸って吐くこと。十分に吐き きりつつ。その間体勢が崩れるほど脱力しきってしまうことではなく。それがまず入り口だった。空気を圧縮してしまわないこと。
◎それらの狙いがあって、有名なブリージングバッグを使っていた。
◎そういうことをやっていると、いつのまにかスルッと吹けるようになった。
◎呼吸と力みの問題が片付くと、それ以降のレッスンはもっと想像力・イマジネーションの話に移っていった。ジェイコブズは生徒に、元気かい?調子はどうだい?と普通なら尋ねる場面で、今日の想像力の調子はどうだい?と尋ねてくることがあった。
◎練習が退屈に感じられている時は、それは イマジネーションがお留守になっている時。譜面や教材などは テンプレートに過ぎない。そこに好きなだけいくらでもイマジネーションを持ち込むことができる。例えば ピアノ科の学生のモーツァルトの演奏を聞いて感じる音のきらめきがあれば自分のトロンボーンの音にも同じような きらめきをもたらせないかな?と考えてやってみる。
◎ジェイコブズは公開レッスンなどで、例えば学生がトランペットだったら、ハーセスだったらその音楽をどう演奏するか数十秒静かに想像させた。その直後の演奏は想像の時間を取る前より一発でガラッと変わることが多かった。問題改善は、より良い状態を想像することで起きるのだ。
◎内田光子の音や、フィッシャー・ディスカウの声をたくさん聴き、じっくり想像して、そこにある歌の素晴らしさを自分でも目指して、トロンボーンを吹く。想像と、想像しているものを模倣することの効果の高さ。
◎ジェイコブスは晩年、たくさんの健康問題を抱えていたその中で、すごい音圧で素晴らしい演奏していた。その実体験を以って彼は頑張りやパワーは必要ないということを語っていた。
◎ジェイコブズのシカゴ交響楽団での同僚でトンプキンス氏のトロンボーンの師匠でもあったクリストフォリも70代まで現役で演奏していた。その頃は動きがゆっくりになっていて楽器を構えるのも重そうですらあったのだが、めちゃくちゃ良く鳴る音で演奏していた。彼は『楽器はメガホンなんだから楽器が音を大きく拡散してくれるんだ。楽器に怒鳴り込まなくていいんだ。』と言っていた。
◎クリストフォリも歌が色濃いスタイルの奏者でロシュのエチュードをレッスンで扱う際も横でずっと歌ってくれたりした。
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デトロイト交響楽団首席ロンボーン奏者のトンプキンス氏とユージーン交響楽団 チューバ奏者のグロース氏の対談より。

