「Singing on the Wind- 息にのせて歌う」
人間にとって最も自然な音楽のやり方は「歌う」ということだ。ホルンの場合、私たちは「息にのせて歌って」いるのである。歌う事によって確立されている自分の自然な音楽性を、楽器の音を支えそして運んでいく息の流れと組み合わせているのだ。歌と同じように息は流れる。そうすると、息の量は正確に必要な量に合致して保たれる。
音の質は耳によってコントロールされる。歌うときと同じように、「心(訳注:頭の中)の耳」で望む音程が聴こえている。あとは声帯の代わりをアンブシュアが行うようにさせてあげるのだ。
音程のコントロールもこの「心の耳」によって為される。そうするとアンブシュアは、望む音程を得るために本能的にポジションを合わせてくれて、息の流れは唇の振動を支えてくれる。
また、音を出す直前に「心の耳」に聴こえている演奏したい音を「前もって」聴き直しておくのも助けになる。こうしておくと、これから行う事の為に脳が身体の準備を行うことを助ける。これから演奏しようとするものを観察すると同時に、結果として聴きたいもののコンセプトを形成するのだ。そして、このコンセプトに応じて演奏する。身体がコンセプトを具現化してくれるのを許しながら。
とはいっても、「息にのせて歌う」ためにもやはり演奏技術が必要である。
まず練習の方法を説明しよう。
私たちは誰しも、楽器を口にくっつけて息を吹き込むところから練習を始めがちだ。エチュードに取り組む際は、最初から始めて、ミスがあるまで続ける。ミスがあると吹き直して、そこを「直そう」とする。「修正」がうまくいけば、次のミスが出るまでまた吹き続ける。ということを繰り返している。しかし、これって本当に「ミス」を修正できているのだろうか?それとも偶然うまく吹けたのだろうか?
「心の耳」の表現に、共感しました。
哲学的な、言葉ですね。
生理学を超越した、「心の耳」
次号を楽しみに、待ってます。
さっさん
こんばんは。
実は「心の耳」すごく生理学に根ざしたものでもあります。
脳が「音」で考え、それと筋肉神経システムの結びつきを作れるようになるのです。
人間が無限の声色を扱えるのも、まさにそれ。
Singing on the Wind 目次
チュリーヒ・トーンハレ管弦楽団ホルン奏者、ナイジェル・ダウニング氏。彼のいわば「練習の秘訣決定版」とも言える著作『Singing on the Wind』の訳を半年かけて終えました。 そのダウニング氏が、いまオケのツアーで来日しています。 ツアー中、なんと東京芸大で彼のセミナーが実現しました。 事前にコンタクトを取っており著作の訳をしていて、お互い同じアレクサンダーテクニークの先生に習ったという共通点もあり、私が通訳を担当しました。 当日は芸大のホルン科をはじめ数多くの将来有望な学生さんが参加して下さいました。 その著作『 Singing on the Wind』要約版を著者の許可の元翻訳し、公開します。フルバージョンの書籍はアマゾンで購入できますが、現在英語・ドイツ語のみです。 Singing on the Wind ー目次ー はじめに 1:息にのせて歌う 2:練習の黄金則 3:姿勢 4:音を奏でる 5:プランA・B・C 6:歌う事について 7:プランA 8:プランB 9:プランCーその1 10:プランCーその2 11:健康にご注意 12:まずはスラーその1 13:まずはスラーその2 14:自然倍音を用いたエクササイズ 15:分散和音 16:結論