練習の黄金則

練習の黄金則

・何を演奏するか決める
・どのように演奏するか決める
・その意図に沿って演奏する
・評価なしに観察して受け入れる
・次にどうしたいか決める

何を演奏するか決める

当たり前に聞こえるだろうが、例えば曲を一曲まるまる吹くのか、それともその一部またはワンフレーズのみ吹くのかを決めるのは重要である。なぜなら、この決定が集中力の程度に影響するからだ。最初のフレーズだけ吹くと決めた場合、あなたの意図は明確であり効率的にその最初のフレーズの間は集中できるだろう。ただの様子見で曲を吹くと、あなたは何か失敗をするまで吹き続ける。ということは永遠に「失敗の修正」をやり続けることになる。これは肯定的な取り組みの始め方とは言えない。というわけで、何を演奏するか決めるようにするといいだろう。例えば「最初のフレーズを吹く」というように。

どのように演奏するか決める

この段階には音楽的なことも技術的な面も包含される。
まず第一に音楽的な意図を確立する。これはフレーズを声に出して歌うことで最もうまく為される。十分な息の支えを使って、なるべくオープンな音で歌おう。これはホルンを実際に演奏する際の息の支えとオープンな音を促進する。ホルンを吹くときと同じように、「Da」という発音で。なによりも、人間として歌うように。ホルン吹きとしてではなくて(多くの人が声で楽器の音を真似ようとする。これは聴いた感じが馬鹿らしいのみならず、不自然な歌い方でもある)。オペラ歌手みたいに歌わなくてもよいが、フレーズを最大限自然に自由にそして音楽的に、自分が聴きたいように歌う。これにより、あなたの音楽的意図が確立され、脳細胞にもフレーズをどのように演奏したいかという指令が伝達される。技術的な事は、そのあとである。

その意図に沿って演奏する

フレーズを声で歌って確立した意図があるので、それをそのように演奏してみる。

評価なし観察して受け入れる

評価せずに観察する。重要なのは自分のパフォーマンスを「良い」とも「悪い」とも判断しないことだ。演奏したものはしたものなのだから、そのまま受け入れてあげるのだ。
その後で、そのフレーズをもう一度やってみるかどうか決める。(「何を演奏するか決める」に戻る)。もう一度やってみることにするなら、そうする。何か異なるものを望むのなら、それが音楽的なことであれ技術的なことであれ、それを演奏(「どのように演奏するか決める」)する。このようにサイクルが循環し繰り返す。
どのように演奏するかを決めるにあたり、変えたいことを考えて、実際に演奏する前にその新しいものを歌うようにしよう。アーティキュレーションをもっと明瞭にしたいのなら、もっと明瞭に歌ってみる(「Da」以外でもよい)。リズムやビートが不安定なら(技術的困難に影響を受けていると頻繁にこうなる)、メトロノームに合わせて演奏する前にメトロノームに合わせてまず歌う。声に出して歌おう。自由にオープンに。歌っていて縮こまっているのに気が付けば、開放しよう。後で演奏するときに効果がある。もし本当に歌えない場合は、美しく歌っているところを思ってみる。先に述べたように、こうすることで脳細胞に対して行うべき仕事が何かをあらかじめ伝達するのだ。意図を確立するとはそういうことである。

その次に意図したようにフレーズを演奏する。これは「手放す」ということ意味する。「起きる」に任せるのだ。ひょっとしたら、フレーズを演奏したとき頭のどこかで「うーん、そうなんだけれどもし…ああなったらどうしよう、音が外れたらどうしよう、こうなってもいけないし、あれもやちゃいけないし…」という声が聞こえるかもしれない。「手放す」とはつまり意図を確立し、その意図に沿って演奏し、評価なしに観察し、受け入れるということを意味する。だから、「悪魔の声」に耳を貸してはいけないのだ。この声は演奏する前から自分を縮こまらせてします。評価せずに観察しよう。

・何を演奏するか決める
・どのように演奏するか決める
・その意図に沿って演奏する
・評価なしに観察して受け入れる
・次にどうしたいか決める

もっとこのことについて知りたい場合、ティモシー・ゴールウェイ著の「インナー・ゲーム」(原題 The Inner Game of Tennis)をぜひ参照するとよい。

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練習の黄金則」への2件のフィードバック

  1. 見てみよう!

    バジルさんのブログに練習にあたって、とても参考になる記事があります。 ぜひ読んでみてください。 練習の黄金則ーhttp://basil-horn.blog.so-net.ne.jp/2011-05-25 ホルンに限らずすべての練習に当てはまることです。

  2. Singing on the Wind 目次

    チュリーヒ・トーンハレ管弦楽団ホルン奏者、ナイジェル・ダウニング氏。彼のいわば「練習の秘訣決定版」とも言える著作『Singing on the Wind』の訳を半年かけて終えました。 そのダウニング氏が、いまオケのツアーで来日しています。 ツアー中、なんと東京芸大で彼のセミナーが実現しました。 事前にコンタクトを取っており著作の訳をしていて、お互い同じアレクサンダーテクニークの先生に習ったという共通点もあり、私が通訳を担当しました。 当日は芸大のホルン科をはじめ数多くの将来有望な学生さんが参加して下さいました。 その著作『 Singing on the Wind』要約版を著者の許可の元翻訳し、公開します。フルバージョンの書籍はアマゾンで購入できますが、現在英語・ドイツ語のみです。 Singing on the Wind ー目次ー はじめに 1:息にのせて歌う 2:練習の黄金則 3:姿勢 4:音を奏でる 5:プランA・B・C 6:歌う事について 7:プランA 8:プランB 9:プランCーその1 10:プランCーその2 11:健康にご注意 12:まずはスラーその1 13:まずはスラーその2 14:自然倍音を用いたエクササイズ 15:分散和音 16:結論

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