高校の吹奏楽部の顧問をされている、E先生から質問を頂きました。
【E先生】
バジル先生、こんにちは。
私は高校で吹奏楽部顧問をしています。
今回ご相談したいことは、「アーティキュレーションの指導」です。
本校の部員の多くが、記譜してあるアーティキュレーションに関して無頓着なところが見られるのです。
特に、スラー、レガートの切れ目に関して、私にはいつも適当に吹いているように感じます。
合奏やパート練習のときに気づいたら、楽譜を確認させて正しく吹かせたり、歌ったりさせたりしています。
ここで、
①正しく楽譜が読めていないため、「たーららたー」のところが「たーらららー」となる
②楽譜は正しく読めていて「たーららたー」と歌える(が楽器で吹くとやはり「たーらららー」となる
の2パターンの生徒に分かれます。
そこで、技術的に、あるいは読譜の際の意識の面で何かアドバイスがあればお聞きしたいと思います。
お忙しいところ申し訳ありませんがお返事いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【バジル】
おはようございます。
①、②、どちらのパターンにしても、譜面に書かれているアーティキュレーションのこととというよりは、アーティキュレーションそのものが音楽を立体的で面白くさせることに、おそらく生徒さんたちはまだ実感を得ていないのでしょうね。
その時点で歌わせても、恥ずかしかったろ、苦しかったりして、なかなか歌う意味やアーティキュレーションの重要性を感じられないかもしれません。
しかしながら、そのこと自体は高校生としてはごく自然なことです。
ですので、顧問の先生の腕の見せ所として
「いかに高校生たちが自らの興味で、アーティキュレーションに目を向け始めるように、アーティキュレーションというものを教えるか」
これが鍵になってくるかもしれません。
アーティキュレーションや音量のコントラストは、長く音楽をやっているとそれを生み出すことの大切さや効果が分かってきますし、また、それが上手にできているひとは、間近で単体で聴くと、びっくりするほどはっきり大げさにやっていますよね。
なので、わたしはときどき講座で実際に自分で楽器を吹いてそれを説明したりします。
「実は、これぐらい大掛かりにやるもんなんだよー!」
というふうに。
そこで高校生は「こうしたらいいんだなー」と初めて「具体的な音」として目指す方向が分かってきます。
次の障壁は、高校生が抱く「音が汚いんじゃないか」「音が割れる」といった不安です。これもまた、客観的には実は全然音が汚くなく、むしろかっこよかったりするんだということを伝えてあげることですね。
つまり本人の想定よりポジティブなフィードバックが客観的に得られると、そのとき本人のなかに安堵と勇気が生まれます。そうすると、いつもと異なる事、もっとエネルギーを使うことが、本人たちの望みとつながった形でやりやすくなってくるのです。
また、部活では毎日最初の30分を、「名手の演奏を聴く時間」にするのもよいでしょう。各楽器のコンチェルト音源と譜面を用意し、譜面を高校生たちに渡します。そしてみんなで、異なるプレイヤーが同じ曲を演奏するのを聴き比べるのです。
そうすれば、同じ譜面でもプレイヤーがそれぞれアーティキュレーションなどをちゃんと見て、考えて、結果的にそれぞれ全く異なる解釈を作り、演奏していることが分かってきます。
楽器のお手本とすべき音を聴かせるのも、楽器演奏そのものに興味を持たせる効果があります。そうすれば、放っておいてもうまくなります。
ちなみに、大きなスクリーンに映像を映し出して、名手の演奏を「観る」のもよいです。コンサートの前列に席を取って、連れて行ってあげるのもよいですね。
参考になれば幸いです。
全くの素人が吹奏楽顧問をやっています。合奏指導が上手くいきません。
メロディーが主となり、音楽が聞こえてくるはずなのに、いろいろな音が聞こえます。メロディー以外を落とすと、なんとなくこじんまり聞こえ、かと言ってダイナミックな所が聞かせどころとしてあるかというと、いまいち、イマニくらいです。
合奏をただ長く通してお仕舞いという、最悪のパターンです。
でも指導はしなければいけないので、困ったものです。一応音楽教師です。何も吹けません。声楽です。結構このような先生いるかもしれませんが。
菅根沙奈咲さま
学校吹奏楽部ですよね?
よほどうまい中学生が集まる高校か、伝統的に個別の楽器の指導者を呼んで定期的に専門のレッスンを子供達が受けられる環境か、あるいは以前からの強豪校だったりノウハウを持っている先生がやっているのでなければ、吹奏楽の合奏は、そんなものですよ!
それは悪い意味や投げやりな意味で言っているのではなく、それだけ楽器って難しいし、合奏ともなると当然だと思うのです。
現状に何か根本的な誤りがあると捉えなくてよいと思います。
声楽を勉強されたとのことなので、合奏や音楽の指導そのものは、真っ当に音楽的に進めればそれが適正だと思いますし、できるベストなのではないでしょうか。
もしかしたら、合奏の時間は減らして、パート練習や個人練習の時間を増やし、まずはその様子をじっくり(ただし、威圧的にではなく笑)観察するといいかもしれませんね。
1〜2ヶ月も観察していれば、声楽を学ばれてきた音楽的背景から、練習の仕方として奇妙に思えたり間違えているように思える面が出てくるかもしれません。そういうところを、サポートしてあげれば個々の力が伸びてくるのではないでしょうか。
ちょっと手間ではありますが、各楽器の教則本(エチュードではなく)を2〜3種類ずつ買い揃えて読み込み、それぞれの楽器においてどのような練習が初心者〜中級者にとって適切なのかを比較から把握していけば、専門外の楽器でも効果的な提案ができるようになるかもしれません。