ミスを気にする心理と、緊張、バテの関係

アレクサンダー・テクニークの中で、「頭の動きに身体全体がついていく」という言い回しがあります。身体の望ましい協調作用の言語表現です。きょうは、それを意図しても身体全体がついていかず途中で動きがせき止められる「とき」をいままでよりしっかりはっきり見つめてみた。

分かってはいたけれど、「失敗やミスを気にする」ときに、身体の動きは途中でロックされ、協調作用がうまく働いていないことがよりはっきり分かってきた。失敗やミスを気にするのが動きに影響するのは、音を出す前の段階で「失敗しそう」「失敗したくない」と思っているときも、実際にミスしたときも。

この「失敗やミスを気にする」という気持ち、より掘り下げて見つめると「下手だと思われたくない」という気持ちが強烈に下支えしていた。「下手=自分はイケてない奴、価値がないヤツ、何にも言う資格がないヤツ、認められる価値がないヤツ」みたいな気持ち。承認欲求の類いだろうか。

こういう気持ち、やっぱり中学生のころにまで遡ってあると思う。自意識が芽生えて、大人になっていく途中での色々と混乱している時期に使っていた、未熟な頑張り方。それをアップデートしてこなかったんだな….。

ピアノを弾いていた小学校のときから、「やり切った」感じがした本番と、後悔や惨めな思いが強く残った本番と、分かれ目は何だっただろう?やり切ったときは、「自分・自分・自分」というエゴを離れて、自分も音楽も聴いてくれるひとも、全部「含め」られていたときだったと思う。

自分がどう見られるか、どう評価されるかということより、音楽が自分にとってどれだけ大切か、自分がどう演奏するか、ということの方を大切に扱えていたときだな。

反対に、後悔や惨めさに浸って終わった本番は、自分が信頼や評価を失ったり、バカにされたり、下に見られたり、相手にしてもらえなくなる、そういう恐怖に捉われていたときのように思う。

きょうの練習では、これまで演奏してきて非常に悔いが残ったり、ショックだったり、嫌な気持ちで終わってしまった本番のときの「状況」を頭の中で再現して、でも「頭を動けるようにしてあげて、そうすることで身体全体がついてこれるようにして」吹く、ということを実験していた。

自分が自分の身体を固める瞬間、すごく「ひとにどう見られ、思われるか」を気にしていたときだと思った。嫌な思いで失敗に終わった本番の最中に、どのようにひとを気にしていたかがかなり思い出された。

自分が自分の身体を固める瞬間、すごく「ひとにどう見られ、思われるか」を気にしていたときだと思った。嫌な思いで失敗に終わった本番の最中に、どのようにひとを気にしていたかがかなり思い出された。

記憶が蘇って、身体を固めたり固めそうになるたびに「頭が動いて身体全体がついていって『聴いているひとと、演奏している空間を含めて』、そして『後悔がないように』思い切って吹こう」と意識しなおして吹き続けてみた。そうすると、「あのときもこうやればよかったんだな….」と思えた。

学生時代は、音楽・演奏空間・聴衆を「含める」ことができていなかったなあ。先生、クラスメイト、周りのひとというのは、自分を評価し見下し蹴落とそうとする「危険」な存在に感じていて信頼できずにいた自分がいた、ということいまになって分かる気がする。もちろん誰も危険な存在じゃなかったのに。

ホルンを始めた最初からつきまとっている「バテ」という問題に関する恐怖感も関係してそう。なぜなら、バテてくると、音が出なくなったり外れたりが増えてくるから。つまり「見下され、評価してもらえない」可能性が高まる。それが怖かったんだろうという気がする。

バテることへの恐怖感は、顔を青ざめさせ、どんな練習も無駄に思えて、本番をやるのが恐くて仕方がなくなり、いざ本番中バテを感じると、もう力が入らなくて太刀打ちできないような異様な感覚に支配される、そういうことありませんか?

でも、普段の練習のときから、「失敗やミスを気にする」ことをやめて代わりに音楽・自分自身・演奏空間・聴衆を意識に入れて大切にすることをやっていれば、たとえバテてきて音が外れたりすることがあっても、ミストーンより音楽の方が大事だからあまり気にならなくなるんじゃないだろうか。

そうすると、「バテる」という問題自体は常にあるだろうけれど、技量が上がる中でもちろん相対的にバテは減っていくだろう。それに、気にして自分を縮めないから、バテ自体が少しは起きにくい吹き方にもなる。何より、「バテの影」におびえることが減る。音楽をするうえで、よっぽど幸せですよね…

そんなことを考えられた昼下がり。よかったよかった。

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ミスを気にする心理と、緊張、バテの関係」への4件のフィードバック

  1. アマチュアクラ吹きです。クラリネットは長時間吹くとほっぺたの筋肉に力が入らなくなったり、下唇の歯が当たっている部分が切れて痛くなります(ひどいと翌日膿みます)。社会人になって普段の練習時間が減るにつれ、合わせの時だけ長時間吹いた時それが顕著だったので、ほっぺたバテと唇切れの原因は普段の練習不足だと思っていました。ところが最近、いきなり長時間吹いてもぜんぜんそれが起きないのです!一昨日もそうでした。思い当たることは、心底練習を楽しめているときにバテないことが多い、ということです。そこでこの記事を読んで「本当だったんだ!」と思いました!練習不足のままなのにバテや唇の負傷がなくなるなんて、いいのかな、、、と思わないでもないですがいいんでしょうね(^^)!!!

    • おお!すごい!不思議だけれど、良いに決まっているじゃないですか(笑)自分に意識的に、「これ、ほんとうにあってよいことなんだ!」と繰り返し言ってあげてください。

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