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みんな、誰でも、上手くなってほしい。
過酷な長時間の練習に心身がついていかない繊細な人が競争やプレッシャーで潰されて「生き残った」ひとだけが上手くなるんじゃなくて、弱いひと繊細なひとももみんなすごくうまくなれるといいですよね。わたしが大事に思うのはそこかも。
19歳のとき、練習のしすぎ&自分にキツく当たり過ぎで腰痛になった。楽器が持てず、息ができないほどの。でもうまくなりたかったし、吹きたかった。一日の中で、たった5分だけ痛まずに吹ける吹き方を維持できる時間があった。状況的に、根性や努力では「もう不可能」になった。それが今につながる。
少なくとも音楽や演奏においては、成長や上達に自己否定は必要ないと思う。しかし、自己否定は強いエネルギーをもたらすので、上達に便利ではある。これが厄介。自己否定エネルギーは排気ガス・副作用がある。その副作用に耐える「強さ」があるひとしか、結局は続かない。
で、これまではそういう「強さ」がない人間に対して届けられたメッセージは「お前は弱い」「お前はダメだ」「お前は諦めろ」「お前は甘えている」という類いのものが残念ながら多い。でも、自己否定の副作用の毒に対する耐性が薄いだけで、決して怠慢なのではない。音楽への熱意や規律はちゃんと持っている。
さらによく見ると、自己否定が成長や上達に絶対必要だと思っていてひとにもそう言っている「上手くて成功しているひとたち」は、実は自己否定はかなり薄くて、ほんとのところ巨大な情熱を糧にしていることが多い。体力や気力が強靭なので、信じられない量の練習や努力をしているが自己否定は少ない。
音楽や演奏への情熱、規律、努力できる素質等は、音楽をやろうとするひとたちに共通している。現状、その後の成否を分けるのが「強靭さ」「自己否定の毒への耐性」である事が多いのかもしれない。せっかく熱意や素質が世の中にいっぱいあるなら、それが活かされるような方法が欲しい。
わたしは努力至上主義的なやり方を本気でやっていたが、早くも19歳でそれが機能しなくなった。身体がほんとうについていかなかったのだ。甘えとかではなく。でもうまくなりたかったし情熱はあったから、それをどうしても諦めたくなかった。そうやって始まった探求はいまも続いている。
自己否定・努力・根性「以外」の、「うまくなるための道筋」は、持っている情熱をそのまま行動に変える=ただ単に好きだから演奏する/練習するということだと思う。
それには目の前の結果や成果に左右されない、根本的な自己肯定が必要な気がする。
で、上手で成功しているひとたちは実はこれをやれている気がする。
順調にうまくなって成功しているひとの中には、「自分に厳しくひたすら努力し頑張ったから成功した」。と感じているひともいる。
だから、生徒や他人に対し「おまえがうまくできないのはそれが『足りない』からだ。おまえが『甘えている』からだ」となってしまうことがある。あるいは「君は才能がない、あきらめなさい」となってしまうことも。そうなると残された道は「才能を埋めるための、何もかもを犠牲にした自己否定的な努力」だけになってしまう。
でも、実はうまくいっていないひとは、順調に成功しているひとが意識せずに持っている「自己肯定」こそが「足りない」「できていない」からうまくいかないことの方が圧倒的に多いのではないだろうか(音楽や演奏に関しては)。
つまり、甘えているのではなく、甘さや優しさや自己肯定こそが「足りない」のである。
そうすると、教えるべきは「努力」や「厳しさ」ではなく、成功しているひとこそが無意識的にできている「自己肯定」なのではないだろうか?
どうせ、自己否定に基づいた厳しさや努力で達成されたことには副作用があり、幸せにはなれないのだから。
わたしがアレクサンダーテクニークのレッスンで「何をしたいですか?」から始めるのはこういう理由からである。
Basil
ずーとこの言葉を探していました。
ありがとうございました。
やっと本当の意味で生きてゆけそうです。
ゆっくり心とからだを癒して、本来の自分を表現してゆきたいものです。
Thank you again!
野末先生
コメントありがとうございます。
先生のコメントも、わたしにとても響きました。
ありがとうございます。
素晴らしいメッセージだと思います♪
自分へのダメ出しを、向上心の表れとばかり公然と口にする人がいます。そういう人は同じところをいつまでもぐるぐる回っているような気がします。
自分への優しさ、自己肯定、そして誉め言葉を素直に受け入れること。
自分のやりたいことをするためにも大事なんですね。
Karoin さん
>自分へのダメ出しを、向上心の表れとばかり公然と口にする人がいます。そういう人は同じところをいつまでもぐるぐる回っているような気がします。
まさに!
ジュリアキャメロン曰く
「完璧主義は前進を拒絶する怠慢」
ですからね。