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きょうのレッスンにいらしたトロンボーン吹き青年。
①中音域がうまく出ない
②発音やタンギングがうまくいかない
③高音はなんとかなる
④低音はバッチリ
というのが外部に表れている演奏上の特徴。
観察していると顕著なのは
◎音を大きく鳴らせない
◎アンブシュアがかなり緩い
ということ。
とくに、音を大きく出す・割るのができない。発音の瞬間に息を呑み込み弱める感じ、プレスも薄くマウスピースがグラグラ浮く。
プレスを手伝い、もっと鳴らそうもっと吐こうと促す。
少し鳴ってきたところで尋ねた。
『音を割らないようにしてきたことはありますか?』
・・・図星だったよう。
しかし、それは楽器を始めた頃に思い込んだもので、上手い人が鳴らす鳴りきった音や割れた音は悪い・汚いとは思わないとのこと。
ということは、音のコンセプトは客観的には正しく成長している。あとは、それを自分の音に当てはめるだけ。
ペダルFはしっかり鳴り、割ることができており、アンブシュアは緩まずプレスもできている。これを基点としてみた。
ペダルFをいつも以上に鳴らしてもらう。バリバリと。・・・良い音がしている。『この鳴り方・音色でLowBbへ、スライド動かして上がりましょう』と提案。
→作戦成功。さっきまでより輪郭明瞭で芯の太いLowBbが鳴らせた。
ペダルF、LowBbのその鳴り方と音色を基準とし、「そういう音で鳴らそう」と意図してもらいながら真ん中のF→Bbを吹いてもらう。
ここでも作戦成功!
中音域が鳴るように鳴ってきた。
次にリップスラーで真ん中Bb→D→F。ここで、音が変にびっくり返ったり抜けたりする。
レッスンの最初から少し疑っていた可能性にここでアプローチ。息の向きの問題だ。
『鼻に息を吹きかけてみて』
・・・下唇が少し前に出てきて、上向きにアパチュアが開き息が上に流れる。
『その感じで吹いてみて』
すると、見事に真ん中のBb→D→F もつながるようになった。
結局、低音も高音も息を上向きに吹いていたが中音域はそれが下向きになっていたということ。
息の向きが入れ替わるところで音が暴れ、下向きだとあまり唇が振動しないアンブシュアの持ち主なのだ。
この状況を作っていたのは《音を割らないようにする操作》。
音色を柔らかくしようとして、プレスを弱め、アンブシュアを緩める→マウスピースがグラつく、息の向きが安定しない
あるいは
音が柔らかくなる位置に上方向にマウスピースをずらす→息が下向きになり、それが合ってないから不都合に、
というメカニズムだろう。
そういうわけで、
◎しっかり鳴った音。割ることもできる。その音をイメージする。
◎息を上向きに必ずする
この二つの柱で大きく確かな成果が得られた。
どんどんこれからトロンボーンを楽しめますように!
Basil Kritzer