ホルンを演奏されている Y さんからメールでご質問頂きました。
【ご質問】
今私は本当に行き詰まっています。前からバジルさんに興味がありました。
今モーツァルトホルン協奏曲二番を練習中ですが、オーディションがあるため練習をしてます。
一楽章に出てくるほとんどの16分音符が、タンギングで舌がからまったり、指と舌がずれたりします。ゆっくりから徐々に早くやるのですが、うまくいかず、どうしたら良いか、なにかアイデアを一ついただけないでしょうか。
よろしくお願いします。
【回答】
はじめまして。
この度はメールありがとうございます。
ご質問の件、お答えを試みます。
まずわたしの頭によぎったのは、
「いまの自分に難しすぎるものに、オーディションだからということでチャレンジしているのではないか」
というものです。
その可能性はありますか?
他には、
・1個1個の音に関してアンブシュアや舌の感覚・動きをコントロールしようとしていないか?
・からまらないテンポで演奏してはいけないのか?
・高音域の自由度がタンギングでなくともまだ足りないという可能性はあるか?
といったことが思い浮かびました。
【Yさんより返答】
チャレンジしています。その通りです。
オーケストラに入るという夢を追っているからです。それはまずいでしょうか。
一個一個の音に対して、コントロールしようとしております。
高音域の自由度がタンギングでなくともまだ足りないというのは、一体どういったことでしょうか。
【回答】
メールありがとうございます。
いまの自分に難しすぎるものに、オーディションだからということでチャレンジしている
ということですね?
そうであれば、16分がうまくいかないことは、いまの技術に何か問題があるということ以上に、いまの自分の技術的キャパシティ、成熟度に対して難しすぎるものを「うまくいかせよう」とすること自体が緊張や硬さを生むということなのです。
なので、根本的には、「次のオーディションまでにこの問題を解決する」という発想より、「全体的に成長するなかで自然とこの問題を解決する」という発想が大切になるかと思います。
それとは別に、
>一個一個の音に対して、コントロールしようとしております。
このアプローチが原因になっている面もある可能性があります。
モーツァルトの16分音符ほどの速さになると、わたしたちの感覚認知は、音符の速さに追い付かなくなります。
それは何を意味するかと言うと、アンブシュアやベロの「感覚」では、この速さはコントロールできなくなるということなのです。
しかし、身体の方はもちろん「この速さで演奏する」ことができます。ただし、一個一個の音の「感触」を前もって感じ取ることはできません。
いままでのやり方と逆になりますが、
①インテンポでソルフェージュする
②インテンポで指だけさらう
③インテンポで吹いてみる
ということを繰り返してみてください。
ただし、「音が外れても、失敗しても、止めない。インテンポで吹き抜く」というのがとても重要になります。
そうしているちに、身体の方が勝手に/ひとりでに、この速さで音を並べる動きをできるようになってくれます。
できてくるにつれて、「一個一個の音」の感覚ではなく、「このフレーズ全体をその速さで吹く」ことに対するまとまったひとつの感覚を感じるようになると思います。
>高音域の自由度がタンギングでなくともまだ足りないというのは、一体どういったことでしょうか
もしモーツァルトを演奏する際、とくに高音域へ上行する音型で詰まったりずれたりするのであれば、それはタンギングがフィンガリングに問題があるというより、現時点での高音域の演奏能力=自由度がこのフレーズをカバーするまで到っていないということが考えられます。
もしそうだとすると、タンギングやフィンガリングにフォーカスしてその「問題」を「直す」というより、高音域がもっとラクに自由に演奏できるようになってくるにつれて、これらのフレーズもできるようになってくる、というわけです。
参考になれば幸いです。
【Yさんより返答】
なるほど。なにか物凄い深い気がします。それと同時に自分の力のなさに、唖然です。
バジルさんの意見が聞けて嬉しいです。実は明日がオーディションです。
明日はとりあえずやってきたことをさらけ出してみます。
【回答】
幸運を祈ります!