【音楽的・創造的な文脈でこまかい要素を練習する】

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【音楽的・創造的な文脈でこまかい要素を練習する】

若いアマチュア・トロンボーン吹きとのレッスン。

スライドの操作が、「なんだかぎこちない」と感じるとのことで相談を受けました。

操作そのものに迷いがあるわけではなく、吹いているフレーズのソルフェージュも十分にできている。ですから準備や練習の不足の問題ではありません。

動きとしても、目立っておかしいところや硬いところはないのですが、確かに何か硬さを感じさせます。

ひとつ分かることとしては、肩甲骨や鎖骨があまり動いていないこと。なので、遠目のポジションにスライドを動かすとき、肘を伸ばすとともに少し肩甲骨や鎖骨も前に持っていってあげては?と提案しました。

すると、「吹きやすい」とのこと。

しかし、続く言葉が大きなヒントになりました。

「こうすると、切り離さずに吹ける感じがする」

….切り離す、の意味が分からなかったので尋ねると、それは「スライド操作だけに注目する」という意味であるとのことでした。

曲を演奏していて、スライド操作だけに注目するというのは建設的ではありませんが、それなのにそういう感覚を持って演奏していた、ということが大きな意味を持っているように感じました。

そこで、「スライドだけに注目して練習するようなことはありましたか?あったら、そのときの練習のやり方をやってもらえますか?」とお願いしました。

生徒さんがやってくださったのは、ごくシンプルに1ポジから2ポジへ、1ポジから3ポジへ、と中音域の音をロングトーンしながら移動するというもの。

それをやってみせてくださったときに音や吹き方は、あえて言えば「中学生が何も考えずに音をまっすぐ伸ばそうとしてロングトーンしている」感じと雰囲気です。

この生徒さんはそんなのより遥かに技量も経験も感性も豊かですから、

『それを、マーラーのシンフォニーの緩徐楽章の冒頭のトロンボーンどソロと思って、そういうスタイルで演奏してみてください』

とお願いしました。

すると、一発でスライド操作は有機的で優雅になり、音も豊かになりました。

その印象があるうちにさっき吹いていたスライド操作の複雑なフレーズを吹いてもらうと、硬さがとれ、音のつながりがとても良くなり、印象も完成度も大いに向上しました。

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どれだけ基礎的、シンプルな要素や事柄に注意するにしても、音を出す限りはなんらかの音楽的なイメージや意図、メッセージにつなげてやる方が遥かに楽しく効果的ではないかと思います。

あえてそうしない、ということの方が非常に特殊な条件や状況においてのみより効果的たりうるのではないか。その条件や状況がある可能性は否定しませんが、あまり思い当たらないのが正直なところです。

わざわざ無機質に、音楽性や創造性や楽しみ喜びを「排除」するということは、多くの人が思っているよりマイナスに働いているのではないかな、と思います。

それはとりもなおさず、ちょっと面倒でも「イメージ・スタイル・メッセージ・ストーリ」を作って繋げることがとても効果的ですよ、ということでもあります。

Basil Kritzer

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