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昨日、国立音楽大学で公開講座を行いました。
実は、講座の2週間ほど前から、かなり緊張していました。
というのも、Facebookでなんだかお名前に聞き覚えのある音楽家の方や、どうやら大学などで指導に携わっておられる方がたくさん講座の情報をシェアしているのを見かけ、コメント欄でも話題になっていたりしたからです。
いままでより、事前に話題になっているような感じがして、
「あわわ….どないしょ〜」
と焦る気持ちが出てきていたのです。
公開講座で、申込みも必要無いとのことでしたから、いったいどんなひとたちが集まるのか….。
アレクサンダー・テクニークあるいはわたし自身にたいして懐疑的だったり否定的だったりするひとが粗探し目的で来るんじゃないか…とか。
レッスンがあまりパッとしない感じで、「なあんだ、所詮あんなもんかアレクサンダー・テクニークは。大したことない」と影響力のある方々に思われてしまうんじゃないか….とか。
「なんだ!あのバジルとかいうイケスカン、なに人かよくわからないやつは!調子に乗りおって!」とお叱りを受ける結果になってしまうんじゃないか…とか。
…まあいろんな雑念がブクブク沸くのでありました。
それで、講座数日前から、自分のそんな気持ちとよく向き合ってみることにしました。
『自分は、アレクサンダー・テクニークをその場で教えることで、誰にどのように貢献したいんだろう?』
『そもそも自分は、なぜアレクサンダー・テクニークの先生をやっているんだろう?』
『その場にいらっしゃる方々は、なぜいらっしゃるんだろう?』
『自分自身は、アレクサンダー・テクニークからなにを学び、なにを得てきただろう?』
そういう問いを、落ち着いて自分に問いかけ、ゆっくり何周もそれらについて思いをめぐらせました。
すると、今回の講座で見せなければならないように自分が感じていた、虚像のようなものがあったのを段々感じました。
それは、「音楽家として成功していて誰もが文句のつけようのないキャリアを持ち、権威と説得力のある態度と振る舞いをする」というような像でした。
….そんなもの、わたしは持ち合わせていません。
でもそうなろう、そうなんなきゃ、そうでないと信用してもらえない、そうでないと悪く思われてしまう…という焦りがあったみたいです。
これでは緊張しますね。
そこで自分の実像はなんなのだろう?と思いました。
わたしは、プロのオーケストラホルン奏者を目指していました(….まだ目指しているかもしれません)
でも、その面で自己実現できずにいます。
一方、アレクサンダー・テクニークを学び始めた頃から、ホルンが上達するようになりました。
その体験は、わたしにとってとても喜ばしいことであり、とても大切なことであり、いまでもとても楽しいです。
そして、子供の頃から「教えること・教わること」になぜかとても興味を感じていました。そして、そういう面で自分に何らかの才能があることを感じていました。
音楽に関しては、音楽があると自分が生きている意味を感じることができました。いまでもそうです。生きている感覚が、音楽に触れると鮮明になります。生きてていいんだ、という気持ちになります。
アレクサンダー・テクニークのレッスンをしていると、そういう、自分にとって良かったこと・大切なこと・意味のあることが、なぜか他のひとも感じて共有できるようです。
…これが、偽りや誇張のない、「正直なところ」です。等身大とでもいうのでしょうか。
講座でやることは、結局そういうこと。
そう思って、当日の講座に臨みました。
会場に行くと、全部で400人の来場者がいたのですが、想像していたよりひとが多かったのですが、緊張を生む虚像の正体をあらかじめ見つけていたので、ある程度落ち着いて講座を進めることができました。
….それでも、最初は手が冷たくなっていましたが (^^;)
ま、それはちょっと大きめの講座になるとほぼ毎回のことなのですが。
最終的には、落ち着いて、自分にできるベストのことはやれたかな、と思います。やりきった感はあります。
それでも家に帰ると、なんだか心がワサワサしてきて….これは、また新たな虚像の登場にちがいありません。
これはこれで、またあらたに向き合えばいい。
なんたって、講座自体はちゃんとやり終えられたのだから!
国立音楽大学は、キャンパスが広く空気が綺麗で設備も良く、音大にしては珍しく「大学らしい」雰囲気がありました。ここで勉強する学生は、落ち着いて良い勉強ができそうですね。素敵なところでした。
ご来場頂いたみなさんにとっては、公開講座が有意義な時間であったことを願っています。
今回、この大変貴重な機会を頂いた国立音楽大学ホルン科教授の中島大之先生、大学関係者のみなさま、そして当日お会いした全ての方々に心より感謝申し上げます。
Basil Kritzer
昨日の、公開レッスンに伺いました。随分昔の卒業生の歌い手です。普段からブログを、拝見しています。感想ですが大学生はあの様なレッスンを受けたことが無いから新鮮だったと思います。先生に言われた事ばかり気にしてさて自分はどう感じているのだろう、何を意識しているのだろう、それを考えるキッカケになる事が出来たら良いなと感じました。
私的には、力の抜き方、人により違いますが、往々にして首の後ろの力が入る人が多いのでその抜くポイントなども伺えたら良かったと思いました。横隔膜の動画も生徒達に見せてイメージして貰うのに使わせて頂いています。これからもブログ楽しみにしています。
滝川さま
お返事遅くなってしまいましたが、先週は講座へのご参加をありがとうございました。
首の後ろに力が入るひとが多いというのは、まさにおっしゃる通りだと思います。
その次のステップとして、「では、なぜ首に力が入るのか?」という原因は、千差万別・十人十色・ケースバイケースだというのがわたしのいまの考え方です。
力み方も、その理由も、それをケアしていく方法に、ひとそれぞれの個性やつみかさねてきたそのひとだけの経験が大きく関係しているのだと思います。
だから、ひとりひとりとのレッスンが必要になる。
また、ひとりひとりとのレッスンという個別のケースが良い方向に向かうそのプロセスを今回のように共有していくことを通して、自分だけの自分のための解決法を探していくことができると考えています。
その「自分のケース」を雛形にして、出会う生徒さんそれぞれのケースと向き合い改善の道筋をその都度ゼロから見出していく。
それがレッスンすることの意味と価値かな、と思っております。
今後とも、どうぞよろしくお願い致します。
Basil
こんにちは。国立音大での公開講座ありがとうございました。
私は伺えなくて残念でしたが、とても興味があったのでFBで情報をシェアさせていただきました。歌の学生にもぜひ聞いてもらいたいと思ったからです。
またの機会がありますよう楽しみにしています。
高橋様
お返事が遅くなってしまいましたが、このたびはコメントを頂き、ありがとうございました。
また、講座の情報をシェアしていただいていたとのこと。
本当にありがとうございます。
これかたもどうぞよろしくお願い致します (^^)/
Basil