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きょうは、管楽器演奏や歌唱においてとても大事な「骨盤」について教えてくれ、気づかせてくれたわたしの先生のひとりについてお話しします。
私がアレクサンダー・テクニークの専門的指導者になるために勉強した学校「BodyChance」に頻繁に教えに来られている先生のひとりに、アメリカ在住のサラ・バーカー先生がいます。
サラ・バーカー先生は、著作「能力を出しきる身体の使い方〜アレクサンダー・テクニーク入門」が有名な翻訳者である北山耕平氏によって訳されて出版されています。
日本語で読めるアレクサンダー・テクニークの本としては分かり易さ、網羅されている範囲、実践度が高い本ですので、お勧めです。
サラ先生には何度かホルン演奏をみてもらいましたが、いずれも「腰」そして「骨盤」に関して多くを学びました。
初めてレッスンを受けたときは、まずベートーベン交響曲第7番第1楽章の例のハイEから始まるところ。
当時私はドイツの芸大を卒業して日本に帰って来てからまだ4ヶ月くらい。当時は完全なる下吹きで高音域には圧倒的な苦手意識を持っていました。
ハイEなんて、フォルテでいきなり当てるのは恐ろしくてどうしようもない。考えるだけでギュッと全身を固めてしまいがちでした。
サラ先生にレッスンでそれを見てもらったところ、「骨盤」を自分の意図に含める事を提案されました。
骨盤を含めて動きホルンを吹く、ということを実体験させてもらったら、かなり未知の感覚がありました。
その動きを体験すると、椅子に座っていたのですが、ずいぶん身体が斜め前に傾いている感じがしました。でも不思議と背中がラクで、両肩甲骨を狭めるクセが消えています。そして何より、楽器を持ったときの安定感やフィット感がとてもよいのです。
サラ先生は「それで吹いてごらん」と言いました。
何となくアンブシュアの感覚もいつもと異なっているし、ましてやハイEをいきなり当てるなんて….
しかしとにかくやってみないことには始まらない。
音をイメージして、骨盤を含めて胴体を動かしながら、吹いてみました。
すると….
なんとなんと楽々スコーンと音が当たったのです。
息の力はものすごく使っていましたが、アンブシュアのストレスは全然ない。しかも音もほんとキレイにど真ん中に入った感じでした…
人生で初めて、「高音域を本当に自由に鳴らせた」瞬間でした。
それ以来、吹き方が根本的に変わっていきました。
息の力を使う事。
そしてそれには骨盤がとても大事なこと。
そうすることで胴体や首のストレスを解放できること。
こういう発想やアプローチが根付くにつれて、苦手だったはずの高音域に取り組むことがむしろ楽しくなりました。
数日後、今度はベートーベン3番のハイEbまで上がるあのフレーズ。
立奏で試しましたが、やはり背中から骨盤全体を意図に含めてホルンを構えて吹く、ということを指導してもらい、これもすごくよい感じがしました。
いつもはそういう音域に行くと、苦手意識や怖さから胴体を後ろに引っ張ってしまい、マウスピースと唇の接触が不適切に減ってしまい、下の倍音が混ざってブルブル雑音が混ざってしまっていたのです。
それがガラッと変わりました。
ストレスなく、「ここだ!」というツボに音がハマる感じでした。
一度そういう体験ができると、
「こういうことができるちからが、自分のどこかにはあるんだ!」
と思えて、日々の取り組みの大変な励みになります。
いまでも高音域への苦手意識はありますし、フリーランスで演奏の仕事をしていた2年間はもっぱら下吹きとしての仕事でした。
しかし、高音域を取り組むのが楽しくなったのです。
いままで出せなかった音が出てくるようになりましたし、無理矢理出してる感じではなく、手応えが感じられるようになったからです。
次の記事では、サラ先生からこの翌年に教わった、「骨盤」の学びその2をお話しします。
Basil Kritzer
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こんにちは。
以前「夢が、演奏の不調を乗り越える力になる」等の記事で質問させて頂いた、社会人でトランペットを始めて1年のものです。
今回、バジル先生の記事と同じように骨盤を意識したら、全部(音域、音色、リップスラー等)が上手くいく様になった体験をしたので、これは報告しなくてはと思い、投稿させていただきました。
私の場合はリップスラー(テンポ60位・16分音符でド-ミ-ソ-ミ・ド-ミ-ソ-ミを繋げる譜面)が上手くいかなくて困っていたのですが、月に3回ほど教えていただいている教室の先生に、「重心を下半身の方に」「お尻の底の筋肉も使う」「そもそも頭も胸もお尻も全部繋がっている」と教えて頂いた途端に、ビックリするくらい全部の音が簡単に出せるようになりました。
特に、お尻の底の筋肉も使うという事と、頭からお尻まで1つの袋に包まれて繋がっているとイメージする事は、今までの吹き方のバランスを良い方向に大きく変えてくれました。
要するに今まで体の上半分しか使っていなかったから、苦労していたのです。陳腐な表現で申し訳ないのですが、アイスのパピコを食べるときに、おなかの部分だけを押して食べられるだけ食べて後は捨てていたような状態ですかね。全部食べるなら一番下(骨盤の底)から押し出さないといけないですよね。常識的に考えてッッ!!
この体の使い方がまず一番最初にあって、そこからアンブシュアや息の流れや舌の使い方の話へと繋がっていく感じなんですかね。1年前の自分に話せるなら、「アンブシュアやらプレスやらマウスピースやらで悩む資格すらまだ持ってないぞ」と言ってやりたいです!!
1年間何をやっていたんだと思わなくもないですが、譜面を見るときに上加線が3本位でてきても全く怖気づかなくなったのは正直心地よいです。
バジル先生の「綿ハミエクササイズ」「肋骨エクササイズ」に、「骨盤底エクササイズ」が加われば、この3つのエクササイズだけで上手くするとはじめたばかりの人でもハイBbまで出せるんじゃないでしょうか。
意識するだけで劇的に良くなるのに、きちんと触れているのはバジル先生のブログぐらいで、もっと息と骨盤の関係が広く一般に知れ渡ってれば、私も苦労しなかったと八つ当たりしたい気持ちもあり、書き込ませて頂きました。(ちなみに教室の先生には、はっきり下半身を使えと再三指導されていたので、私の場合は完全に自業自得です)
takowasa
さん
サイコーのコメント、ぜひブログやメルマガで紹介させてもらえないでしょうか!
Basil
あまりに上手くいったんで、勢いあまった文章になっており、少し気恥ずかしいですが、バジル先生さえよろしければ、ぜひご使用ください。
すべてのトランペット入門書がアンブシュアの説明の前に、体と呼吸の解説から始まり、ほとんどの人が2オクターブ半使える状態からスタートできるようになるよう、陰ながら祈っております。
ありがとうございます!
こんな感じになりました(^^)http://basilkritzer.jp/archives/7529.html