「〜しないように」と考えるのではなく「こう動かす」と考える。
キャシー・マデン先生という、わたしのアレクサンダーテクニークの先生から、月1くらいでスカイプレッスンを受けています。
あるときのレッスンで、私はホルンをスクリーンの前でちょっと吹きました。
最近考えている事、気付いていたことなどを述べてから吹いたのもあって、ちょっとでとても大切で役に立つ、印象的なことを教えてもらえました。
その1ヶ月前から、私は左腕を後ろに引っぱり胴体を左へねじる癖が左目と右目の視力差がきっかけになっていることに気が付いていました。
左目の方がぼやけているから、代わりに右目を胴体の中心に持って来ようと無意識にしていたのです。
これに気付いてからは、左を引っ張る癖の根源も分かって、とても鋭敏に癖に気が付き、細かに癖を理解できるようになっていきました。
それにより、演奏技術の効率はよくなっていました。
しかし段々と癖に注意が行き過ぎていたようです。
キャシー先生はスカイプ画像で私の吹く様子を見て、顔をマウスピースから背けるような微妙な動きを発見したのです。
音を鳴らす為には、マウスピースと唇の接触が必要です。
ですから、顔をマウスピースから遠ざけるような動きは非効率なのです。
これは、思考が「左へ目(頭)を向けないように」というものになっていたからです。そして代わりに右へ引っ張るような動き方になっていました。
つまり、癖の動き=筋肉活動を休止させるよりは、筋肉活動の結果として起きる、その「結果の動き」だけをコントロールしようとして、反対側への動きを「付け足す」=拮抗する動きをやって緊張させているような状態がわずかに生まれていました。
これはもちろん余分で非効率な緊張です。
考え方を変える必要がありました。
望まない動きを生む筋肉活動を起こさず、望む動きを起こす動き方を起こすような思考です。
それはどういう思考か。
「望む動きをそのまま考える」ような思考です。
言い換えると、そこには「癖」を意識する思考が含まれないのです。純粋に、どういう動きをしたいか。音を鳴らすのにちょうど必要な動きを考えていけばいい。
その望む動きを考えているからこそ、副産物としてそれとは異なる動きや癖には自動的に気が付けます。
うそみたいですが、癖はほんとにほんとに、意識しなくていいのです!
キャシー先生はここで次のように言いました。「頭がどこに動いて欲しいかを考えてごらん」
そのアドバイスが、ビビッときました。
私ははじめて、意図的にとても具体的に「頭が動いてほしい場所」をイメージできました。
すると、頭は癖の左でもなく、単純に反対方向でもなく、まさに新しい経路を辿って新しい動き方で新しい場所に動いていきました。
エキサイティングな瞬間でした。
楽器の奏法は、
・必要な動きを論理的に考え、
・その動きを意図的に明確に具体的に考えて
・その動きを実行する
という手順で驚くほど効率が良くなります。
この手順は、吹き方や身体の理解が進んでいくなかで繰り返していくものであり、どんどん奏法を改善していけます。
もしあなたがこれを読んでいて、ピンとくるものがあれば、ぜひ実験してみて下さい。