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腹式呼吸をしようとしてなんで硬くなったりうまくいかないのか?
本来、息をたくさん吸いやすくするためのことなのに、
息が吸いにくくなるような文脈、結果につなげて
・肩はあげちゃだめ、肩下げろって教わる
・お腹の膨らみを、お腹の力でやろうとする
・お腹を硬く保てと教わる
というのがその一因になっているような気がすします。
ほんとうはどれも正しい面があるのですが。
腹式呼吸を教えるとき、
・肋骨動くよ
・胸や肺も膨らまそうね
・肩甲骨も動くぜ
・お腹自体はリラックスさせて吸い始めるとどう?
・横隔膜の力やお腹の力は吸う時も吐く時もガンガン使っていいよ
と教えれば、管楽器にはうまくいきやすくなると思います。
横隔膜や息を吸うときのお腹の力を使う感覚は、昔からある方法で理解することができます。
【横隔膜の使い方と、息の支えを体感できるエクササイズ】
1:仰向けになります。膝は立てて。
2:息を吸います。
3:無理にお腹を膨らまそうとしなくても、ちゃんとお腹が膨らみます。
4:重めの本をみぞおちのあたりに置きます。仰向けに。
5:息を吸います。すると、本が天井の方に動きます。
– – -ここまでが、「お腹の動き」を知るための工夫- – –
6:それを確認したら、背中を反らずに、「本よ、もっと天井の方へ動け!」というつもりでもっと息を吸おうとします。
7:すると、息を吸いきったあとでも、まだ本を天井の方に向かって押せると思います。
8:みぞおち、肋骨の下の方の裏側。そのようなあたりに力が入っている感覚があるでしょう。これが横隔膜の力です。
9:また、下腹部や脇腹などお腹のどこかに力が入るのがわかるかもしれません。これは吸うときに働く腹筋です。
– – – これが、「横隔膜の力」「お腹の力」を知るための工夫 – – –
9:立ち上がります
10:さっき知った、「横隔膜の力」「お腹の力」を意識します。
11:息を吸うときに、好きなだけ、いくらでも横隔膜やお腹の力を使いましょう。ただし、吸いにくくならないように。
12:そして、息を吐いている間にもこの力を使いたければいくらでも使ってOKです!
– – -これが、「息の支え」を知るための工夫 – – –
ぜひ試してください。
Basil Kritzer
以前、ブレスをとる度にアンブシュアが固くなる…という内容でご相談させていただいた者です。
その節はお忙しい中、丁寧にご対応いただきありがとうございました。
腹式呼吸についてですが、いっそのこと「腹式呼吸」という単語を使わないで、「息を吸う時のポイント」くらいの言葉にしてしまった方が、効率の良い、体に起こる実際の動きに沿った呼吸の理解が早まるような気がしてきました。
アンブシュアについても、「アンブシュア」という単語を使わないで説明をした方が良いのかも…と最近考えています。
なんとなく、マウスピースを使ってバズィングをする時と、楽器を演奏する時とでアンブシュアを作る動作をする際の力の入り方が違うような…
アンブシュアそのものの働き方が違うような…
Aさん
言語を用いると、その言語の語源、現在の正確な意味、慣用的・一般的な使われ方(意味の込められ方)がそれぞれちがってひとによって意味が異なることがどうしてもありますね。
また、たとえば腹式呼吸、という言葉が悪いというより、そこに慣用的に「お腹に息を入れる」「お腹だけで息をする=肩や胸は動いてはいけない」という意味が多くのひとにおいて込められているがゆえに変なことになっているという面もあります。
日本語だと漢字それぞれに意味もあるので、そこから想起されるイメージもありますね。
アンブシュアは「河口」という意味があるようですが、それはなかなかよい表現だなと個人的には思います。
バジル先生、こんにちは。
管楽器を演奏する際の「腹式呼吸」の問題は、欧米などでもよくある事なのでしょうか。それとも日本人に特に多くみられるのでしょうか。
元Tbさま
日本よりは少ないですが、ありますよ!
歴史的には、ドイツ語圏でより顕著だと思います。
フースラーの「歌うこと」という本にそのへんの経緯が述べられていて興味深いです。
アメリカ、イタリア圏では、アンチドイツという流れもあって「胸式呼吸」が逆に強調されているというのも読んだことがあります。
とても面白いトピックです。
お腹にまつわる話で、伝統的な奏法・指導法ではウィーンの教え方・言葉の使い方がとても良いと個人的には思っています。
このサイトの記述には、個人的にはすごく頷くことが多いですhttp://ks1.kj.yamagata-u.ac.jp/~yamaphil/daninpage/part/Horn/HARO/HARO_8.html
バジル先生、お返事ありがとうございます。
私もかつて演奏を生業にしていた事がありますが、
呼吸法に問題を感じていました。(今もですが)
いつも息が足りない、音が鳴らないと感じていました。
そんな折に、演劇関係の人と知り合い、発声方とか呼吸の
時の体の遣い方など、演劇学校ではこう教わったなどと話を聞く事ができ、だいぶ楽になった経験があります。
まだ日本の音楽界で、アレキサンダーテクニークなんてものが一般的でない時代の話ですが、演劇の世界では体の遣い方がよく研究されていたみたいです。
そのころにアレキサンダー・テクニークを知っていたらなぁ、と思うことがあります。
こんばんは
先日質問をさせていただいたトロンボーン吹きです
息の吸い方なのですが、ハァ〜と吸うのとホォ〜と吸うのとでは、どちらがよいでしょうか?
ホォ〜の方が多く吸えている感じはしますが、ハァ〜と吸った方が自然に吸えている感じがします
また、息を吐く時に腹筋に力が入ってしまうのは自然な事として受け入れても大丈夫でしょうか?
実際にいざわさんがどう吸っているか見ないと、いざわさんにとってどっちが良いかはなんともいえないですね…
・メゾフォルテをロングトーンした場合、どちらがよく保てるか
・どちらがフォルテッシモの鳴りがいいか
を比べて、大きな差がない場合、自然に感じる方が良いのではないでしょうか?
一般的には、ホォ〜で吸おうとしているひとは、
・音を出すときに口を広げようとしすぎて吹きづらくなっている
・深く吸おうとしすぎて、喉をせばめて実はあまり吸えていないのに、「吸えてるような音」(実は摩擦音)がするから深く吸っているつもりになっちゃっている
ということをはよく見かけます。
大事なのは、「吸えている感じ」ではなく、演奏がよりうまく機能する呼吸にしていくということですね。
ご返答いただきありがとうございます!
吸えてる感じ
に騙されていたような気がします
はぁ〜と吸った方が身体も楽にできて良い音がでているので、そっちで吸うようにしてみます
とても価値ある気づきを得られましたね!
ピンバック: 呼吸ウォーミングアップ&エクササイズ | バジル・クリッツァーのブログ
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バジル先生、こんにちは。和楽器の横笛を吹いておりますハッスンと申します。
「圧力の作り方」とても感銘を受けました。C方式での吹き込みを試したところ今までの自分には信じられないような音量で鳴りかなりびっくりしました。
ところで演奏の最初をソロで吹くシーンが多く、大きな音を要求されることが多く、音量を保ったままだと息が失速してしまいます。師匠曰く「3人分の力で吹け」と言われます(当然無理です)最初のワンフレーズでだいたい7から8秒くらいで終盤には身体がカチカチになってしまいます。(カチカチなので次のブレスも浅くなってしまいます)音量もしくは響きを保った音をキープするのにはどのようなことを意識すれば良いのでしょうか。
ハッスンさま
そもそもやろうとしていることが物理的に可能で、体格的に可能、現在の能力的に可能でないと、
どんな努力も硬さになるだけ報われません。
それを前提として、参考になるかもしれない記事です:
http://basilkritzer.jp/archives/6366.html
http://basilkritzer.jp/archives/6520.html
Basil