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歌い手さんや、管楽器を演奏される方で、
・息を吸えていない…
・息を吐けていない
・自分の呼吸が正しいかわからない…
という悩みを持っている方にむけて、「とっかかり」として試してみるとよい呼吸ウォーミングアップ&エクササイズをまとめました。
【①】肋骨の動きを感じよう
呼吸に悩んでいるひとの多くが、ちょっと変な知識や複雑な考えが邪魔して混乱しちゃっています。
そこで、人間が呼吸している限り変わらない、とってもシンプルな基本を覚えましょう。
それは、
A:息をすると、空気は「肺」に入ったり、「肺」から出たりする。
B:肺を取り囲んでいるのが肋骨(と胸骨と背骨=全部合わせて胸郭)。
C:息をする、ということは肋骨(胸郭)が動くということ。
肩を上げないとか、
お腹に入れるとか、
重心を下にとか、
そういう話はぜーんぶ、上記A・B・Cを基本にしたうえでの話。A・B・Cに比べると、比喩的だったり感覚的だったりするので、いまいち分からないときや混乱したときは、シンプルな基本であるA・B・Cを思い出しましょう!
では、このシンプルな基本を実感する方法をやってみましょう。
〜肋骨の動きを感じるエクササイズ〜
①片手のてのひらを、胸の真ん中、うえの方に置きます。骨(胸骨)が手で感じられる場所に置いて、しっかり触れましょう。
②そのまま、反対の手の甲を、①で触れた場所の裏側の背中側、なるべく高い位置(でも無理せずに)に持って行って触れます。
③そうやって両手で肋骨(胸郭)を前後から挟みます。これで肋骨の動きを感じる準備ができました!
④ではそうやって両手で肋骨を挟んだまま、鼻からゆーっくり息を吸います。
⑤そのあと、鼻かららく〜に息を吐きます。
⑥4、5を繰り返していると、両手の感覚で、肋骨が動いているのを感じられるはずです。
⑦息を吸うと胸が膨らみ、吐くとしぼんでもどっていく。この肋骨のダイナミックな動きを感じましょう。
こうして、息を吸ったり吐いたりするのは、肋骨が動くということなんだなぁ。というのを体でシンプルに実感するのがとても大切で、タメになります。
必ずこのステップをやってくださいね♪
【②】息を吸うウォーミングアップ&トレーニング
では、ここから、息を吸う動きをウォーミングアップし、トレーニングしていきます。
息を吸うというのは、体の動きであるというのが大切なポイントです。体の動きなのだから、たくさん吸うにしても速く吸うにしても、
A:吸いたいように吸える能力があって
B:その能力が発揮出来る状態が整っている
そうなっていないと、なんだか思っているように吸えなくても当然なのです。
A=能力に取り組むのが練習&トレーニングで、B=条件・状態に取り組むのがウォーミングアップです。
わたしは個人的に、ウォーミングアップとトレーニングをきっちり分けるよりはつながりあっている方が楽しいので、ウォーミングアップから段々とトレーニングに進んでいくようなやり方をまとめてみました。
〜息を吸うウォーミングアップ&トレーニング Part 1〜
①肋骨の動きを感じる為に、片手のてのひらを胸骨のうえに、反対の手の甲を裏側の背中にしっかり触れて肋骨(胸郭)を挟みます。
②鼻から何度かゆっくり息を吸ったり吐いたりして、少しだけ身体をほぐします。
③それでは、鼻からゆっくり、2拍間、息を吸います。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
④鼻からゆっくり、3拍間、息を吸います。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
⑤鼻からゆっくり、4拍間、息を吸います。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
⑥鼻からゆっくり、5拍間、息を吸います。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。2、3、4、5拍と伸ばしていくうちにそろそろけっこう労力が要るのを感じているかもしれません。
⑦鼻からゆっくり、6拍間、息を吸います。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
⑧鼻からゆっくり、7拍間、息を吸います。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
⑨鼻からゆっくり、8拍間、息を吸います。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
息を吸うペースは変えずに、でも息を吸う長さを伸ばしていく。
そうすると、必然的に、よりたくさんの息を吸うことになります。
でも、それをいきなりすぐにたくさん吸わなきゃ、と焦るのではなく、
◎まずはラクに吸える長さからスタートして徐々に長くし
=ウォーミングアップ
◎さらに長くしていくことで普段よりたくさん吸うように身体を仕向けて仕事をさせる
=トレーニング
という形のウォーミングアップ&トレーニングになっています。
〜息を吸うウォーミングアップ&トレーニング Part 2〜
Part1では、たくさんの息を吸うための身体の動きを徐々にウォーミングアップし、引き出してトレーニングしました。
きっとふだんより、大きく胸が膨らみ肋骨がたくさん動いていたのではないでしょうか。
こんどはそうやって引き出された「MAXの動き」に、より短い時間で到達することで、瞬発力のトレーニングを行います。
①Part1で最後に到達した肋骨の動き、膨らみ、広がりを思い出してください。
②鼻から8拍間息を吸って、その間になるべく「MAXの動き」まで到達します。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
②鼻から7拍間息を吸って、その間になるべく「MAXの動き」まで到達します。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
③鼻から6拍間息を吸って、その間になるべく「MAXの動き」まで到達します。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
④鼻から5拍間息を吸って、その間になるべく「MAXの動き」まで到達します。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
⑤鼻から4拍間息を吸って、その間になるべく「MAXの動き」まで到達します。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
⑥鼻から3拍間息を吸って、その間になるべく「MAXの動き」まで到達します。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
⑦鼻から2拍間息を吸って、その間になるべく「MAXの動き」まで到達します。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
⑧鼻から1拍間息を吸って、その間になるべく「MAXの動き」まで到達します。そのあと息を鼻か口のラクな方から吐きます。
⑨この、1拍で吸う動きのMAXを行い、息を吐くというのを、5回繰り返します。
⑩そのあと、半拍で吸う動きのMAXを行い、息を吐くというのを、さらに5回以上繰り返します。
9、10のときにはかなり激しく、スッハッスッハと息を出入りさせているでしょう。
そしてそのとき、胸はパカパカ動き、お腹もペコペコ動きます。それでOKです。そうやって、呼吸の動きのMAXを引き出し、トレーニングしているのです。
【③】息を吐くウォーミングアップ&トレーニング
ここまでは、息を吸う動きをウォーミングアップし、トレーニングしてきました。
ここからは、息を吐く動きをウォーミングアップし、トレーニングしていきます。
〜息を吐くウォーミングアップ&トレーニング Part 1〜
①唇を軽く閉じて、
②鼻から息を吸い、
③小さな声で、なるべく長〜くハミングします。
④とにかく長く、ひたすら長く。
⑤息が苦しくなってくると、顔が下を向き胸をかがめたくなるかもしれません。それをすると息の持ちが悪くなるので、目線を前に保ったまま、かがみたくなるのを我慢してください。
⑥すると負荷が、お腹、下腹、みぞおちか胸骨のあたり、のいずれかまたは複数箇所に集中します。それが「息を吐く力」です。
⑦とにかく長く長く、非常に小さな声で構いませんから声を出し続けます。そうすることで、息を吐く力を徐々に引き出し(=ウォーミングアップ)、さらには限界まで使う(=トレーニング)ことになります。
〜息を吐くウォーミングアップ&トレーニング Part 2〜
ではここから、ハミングによって限界まで引き出した、「息を吐く力」を、もっと瞬発的に使う練習をします。
なお、息を吐き切っていく際には、目線は前に保ち、首や胸をかがめることをなるべく我慢してください。それができると、お腹の力を引き出しやすくなります。
①息をたっぷり鼻から吸って、8拍間かけて息を吐き切ります。
②息をたっぷり鼻から吸って、7拍間かけて息を吐き切ります。
③息をたっぷり鼻から吸って、6拍間かけて息を吐き切ります。
④息をたっぷり鼻から吸って、5拍間かけて息を吐き切ります。
⑤息をたっぷり鼻から吸って、4拍間かけて息を吐き切ります。
⑥息をたっぷり鼻から吸って、3拍間かけて息を吐き切ります。
⑦息をたっぷり鼻から吸って、2拍間かけて息を吐き切ります。
⑧息をたっぷり鼻から吸って、1拍間だけで息を吐き切ります。
⑨1拍だけで吐き切って吸う、吐き切って吸う、を5回〜10回繰り返します。
⑩半拍だけで吐き切って吸う、吐き切って吸う、を10回〜15回繰り返します。
9、10のときにはかなり激しく、スッハッスッハと息を出入りさせているでしょう。
そしてそのとき、胸はパカパカ動き、肩も上下するでしょう。お腹もペコペコ動きます。それでOKです。そうやって、呼吸の動きのMAXを引き出し、トレーニングしているのです。
【④】息の支えウォーミングアップ&トレーニング
〜支えとは?〜
「支え」とは、
ある事物が放っておいたら動いていく方向と反対方向に力を加え、その事物の行こうとする力と反対方向の力を拮抗させることで、結果的にその事物がその場所に留まる状態
を意味します。
右に進むものに対する支えは、左方向に押し返すことですし、
下に落ちるものに対する支えは、上方向に押し返すことです。
では、「息の支え」とは何でしょうか?
それは、
『「息を吐くときに起きる動き」に対して、その動きの逆方向の力を加えること』
です。
〜支えのタイミング〜
息を吐くとき、肋骨はしぼみますね。
息を吐くとき、お腹はへこみますね。
これは前述のウォーミングアップ&トレーニングで実感したはずです。
ちょうどよいことに、息を吸うとき、肋骨は拡がり、お腹は膨らみます。息を吸うときと逆方向です。
支えという状態は、何かが結果的に止まる・留まることになります。
この状態を、息を吸うときに作り出してしまうと、息を吸う動きが止まって息が大変吸いにくくなります。
ということは、「息の支え」とは、息を吐いているとき=声や音を出しているときに生み出したい状態なのです。
したがって、
『息の支え』
=息を吐いて声や音を出している間、息を吐く筋肉と動きを使いながらも、息を吸う筋肉と動きもONにすること
なのです。
〜しぼむ&凹むのも大切!〜
繰り返しますが、息を吐く筋肉と動きを使うことは大切ですよ!
息を吐く動き=肋骨がしぼむ&お腹が凹む。です。
これを悪いことだと誤解してはいけません!
そうだと指導してもそれは指導ミスです。
必要なのは、それらの動きを使いながらも、「支え」=結果的に止まる・留まるために、反対の動き=息を吸う筋肉と動きを使うことなのです。
〜息の支えを実感しよう〜
①肋骨の拡がり、お腹の膨らみを思い出しながら、鼻からゆっくり息を吸います。
②お腹の凹み、肋骨のしぼみを思い出しながら、鼻から息を吐きます。
③また肋骨の拡がりとお腹の膨らみを思い出しながら息を吸ったら、
④肋骨の拡がりとお腹の膨らみを続けながら、お腹を凹み&肋骨のしぼみをイメージして息を吐きます。
⑤そうすると、あまり息を吐けないといいますか、息を吐くスピードが遅くなるはずです。でも、息を吐く力(=お腹の凹み&肋骨のしぼみ)は使っていますから、身体のパワーはしっかり使っています。これが息の支えとよばれる力です。
そう、「支えの力」とは、吸う力と吐く力が、息を吐いて声や音を出すときに拮抗しているのを感じたものを指しているのです。
〜横隔膜の力〜
息を吐くときに、お腹は凹みます。
これは腹筋の力によるもので、必要かつ重要です。
しかし、「息の支え」においては、これに対抗してお腹を膨らませる力が必要です。
その力は、「横隔膜の力」と「腹筋の力」です。
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①仰向けになります。膝は立てて。
②息を吸います。
③お腹を膨らまそうとしなくても、ちゃんとお腹が膨らみます。
④重めの本をみぞおちのあたりに置きます。仰向けに。
⑤息を吸います。すると、本が天井の方に動きます。
⑥それを確認したら、背中を反らずに、「本よ、もっと天井の方へ動け!」というつもりでもっと息を吸おうとします。
⑦すると、息を吸いきったあとでも、まだ本を天井の方に向かって押せると思います。
⑧みぞおち、肋骨の下の方の裏側。そのようなあたりに力が入っている感覚があるでしょう。
これが横隔膜の力です。
⑨また、下腹部や脇腹などお腹のどこかに力が入るのがわかるかもしれません。これは吸うときに働く腹筋です。
これが息を吸うためのお腹の力です。
以上、
1:肋骨の動き
2:息を吸う運動
3:息を吐く運動
4:息の支え
について見ていきました。
呼吸に悩みや不安があるひとは、ぜひ読んで、試してみてください。
Basil Kritzer
P.S.さらに参考になる記事
・呼吸の誤解を大掃除〜これきょうからもっと吹きやすくなる〜
・腹式呼吸を教えるときの注意点
・気持ちよく練習を始めるための呼吸&心のウォームアップエクササイズ
こんにちは、バジル先生。ロンドンでシンガーソングライターとして音楽活動しているものです。先生の動画、ブログ等、以前から私が知りたいと思っていたことがものすごく分かりやすく説明されており、大変ありがたく思っています。呼吸のエクササイズを最近始めたのですが、ハミングのところで、いつもすぐに声が震えてきてしまいます。また、小さなハミングがなかなかできません。小さな音量にしようとすると喉に力が入ってしまう感覚があります。声の震えはどうやってコントロールするのが良いのでしょうか?小さなハミングはどうのように楽に出すことができるのでしょうか?大体25秒くらいロングトーンができ、始めの10秒たった辺りから声が震え始めます。
河野さん
ハミングのところで、声が多少揺れても問題ありません。
・ハミングすることで顔や頭が響くこと
・ハミングを長く続けることで腹筋を体験できること
がこのエクササイズでのハミングのポイントです。
もしどうしても気になるなら、声帯をとじたり緩めたりして、息⇄声の境目を丁寧に行き来する、
という時間をほんの数分とってみるとよいかもしれません。
ハーと楽に息を吐きながら徐々に声帯を閉じていくと、まずビリビリと雑音が発生し、やがてアーという声に変わります。
アーと声を楽に出しながら声帯を徐々に緩めていくと、ビリビリと雑音になったあと、ハーという息だけになります。
それを行き来してみるのです。
Basil
ピンバック: 感動を生徒と共有できる良い練習をすることができた | バジル・クリッツァーのブログ
高校一年生です。
吹奏楽部でホルンを吹いています。
誰に相談して良いかわからなく、書き込ませていただきました。
私の学校の吹奏楽部のホルンパートは2年生1人、1年生2人です。(1年生は2人共初心者です)
3年生が引退してから先輩の音が悪くなってきていて、それに影響されつつあるのが最近の悩みです。
私はまだホルンを始めて半年くらいで、全然知識も経験もなく、先輩にアドバイスすることもできない状況です。
でも、どうしても先輩の音が好きになれなくて、毎日先輩みたいな音にならないように…みたいなことばかり考えながら練習してしまいます。
個人で練習していても合奏で先輩の音に影響されて吹けなくなるなら、練習していることが無駄なんじゃないかともおもってしまいます。
先輩は自分の音を悪いと思っていない様子です…
その先輩は吹く時にあごを引き気味にしてマウスピースを上から強く口におしつけるような吹き方をしています。
吹き終わったあとはくちびるの裏側がえぐれてしまうこともあると言っていました。
出ている音はすごく大きくてビリビリしたかんじの音です。
ビリビリといってもかっこいい感じではなく、すこし詰まった感じの音で、トロンボーンの音に近い感じです。
なんともうまく表現出来ないのですがうなりながらほえてる…?みたいな感じです…
他のパートの子でも押し付けてるのがすごくわかると言っています。
顧問の先生はその事に気づいているのかいないのかわからないのですが、なにも言っていないです…
私たちの力だけでは解決できそうになくて困っています。
なにかアドバイスいただけないでしょうか…?
りいなさん
他人を変えることはできないし、
変わりたくない他人がその人自身を変える手伝いもできません。
なので、その先輩をどうするかということについてはわたしはアドバイスできません…
Basil
アマチュアの楽団でホルンを吹いてます
先生の動画はすごく勉強になり,後輩に指導する時も為になります,でも聞かれない限りは自分からは指摘したり教えたりもしないです
中には大きい音を出せ,アタッウが弱い,音が上ずるとか指摘する人はいます,でもそれを改善する為にはどうしたら良いか,何処をどう使ったら良いのかとわかる,指導出来る人は少ないです,言いっぱなしじゃなく,それを的確に指導出来ないなら言わない方がその人に失礼だと思ってます
聞かれたら教えるってやり方はどうなんでしょうか,それとも楽団のレベルを上げる為にはこちらから指導出来るものは指摘していったがいいのでしょうか
それは、団の文化や方針にもよるかなと思います。
この団では指摘や指導を受けるものだ、というのが概ね団員の総意であるなら、的確な指摘や指導は有り難いですよね。聞かなくても言ってもらえるのは助かると思います。
そういう総意や合意がない場合は、いきなり指導や指導をされたら戸惑ったり不快に思ったりするのは自然なことかなお思います。
ただどちらにせよ、的外れな指摘や、改善の道筋が分からないただの指摘はマイナスに働く可能性が大いにありますから、そこは指摘や指導をするひとの、指摘や指導の質が問われるのは確かです。