【呼吸について、内科医の方との意見交換】

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以前、レッスンをご受講くださったクラリネットを演奏される内科医の方とのメールのやりとりを、その方のご厚意でここに掲載できることになりました。




【内科医Sさん】

レッスンでは大変お世話になりありがとうございました。

さて、あの時のレッスンで私が教えていただいたこと、

「素早いカンニングブレスの際は胸郭の上側が広がるように積極的に速く吸う。さらにその胸郭が広がったままの状態を保つように意識してフレーズを吹く。これが息の支えになる。」

というご助言は、その後の練習の際に意識しながら、大変有意義なものとなっています。

まだまだ、いつもその状態で吹けるようになるまでは反復練習が必要ですが、うまくいったときの実感はとても強く得られています。改めてどうもありがとうございました。



さて、今日メッセージをさせていただいたのは、ひとつ見解を伺いたかったからです。

世の中には「息を吸うには積極的なアクションは使わない、吐く動作をやめるだけ」とおっしゃっている方が少なからずおられ、それがあの日私がバジルさんに教えていただいたことと食い違っているような印象を持ち、気になっておりました。

バジルさんのご意見を伺いたいと思い、ご多忙の折に恐縮ですが、よろしくお願い申し上げます。



【バジル】

わたしは、歌唱や管楽器の演奏においては、すくなくともトレーニングや練習の過程においては、ただただ反射に任せるのは不十分なことが多く、意図的に胸郭の拡大を促し実行していくエクササイズや練習は必要または有意義と考えます。

アレクサンダーテクニークの世界には、「不必要なことはやらない」という思想がかなり強く傾向としてありまして、タスクスペシフィックに必要な動きや労力について(たとえば、歌唱や管楽器の呼吸はそれです)も、どこか安静時の状態を基準として「やり過ぎ・不必要」という判断をしてしまっている状況が散見されるように感じます。

個人的には、わたしはそれに同意しません。



【内科医Sさん】

確かに胸郭内は大気圧と比べて陰圧ですので、「積極的に吸い込もうとする必要はない、吐くのをやめるだけで反射的にエアは入ってくる」というのは医学的にも正しいのですが、

現役のプロの演奏家がそのようにおっしゃると、やはりアマチュアの演奏家は誤解してしまう恐れがある、それは私はバジルさんのレッスンを受けて初めてわかった、という印象を持ちました。

実際の演奏現場では、やはり短い時間で多くのエアを積極的に肺内に取り込まないと間に合わないわけですが、そのための方法論としては、掃除機のように口で吸い込む意識ではなく、胸郭を広げるような筋肉の使い方をすべきだ、というのが正解なのだと思います。

胸郭内が陰圧であるなどという医学知識を知らない一般の方に対してわかりやすく的確に伝えるのは難しいですね。



また、もう一つ別件ですが、

素早く胸郭上部に息を入れてふくらませるやり方を、いろいろ模索していたのですが、ふとしたきっかけに偶然開眼したような感じが、自宅での個人練習で感じたので、ついメッセージしました。

なんとなくこれまで、胸郭を(肋間を)拡げるために、胸を反らすような、それから肩峰を後ろに下げるような感覚でやってたのですが、それだとどうしても素早く息が入って来なくてしっくりしなかったんです。

それが、本当にたまたま偶然だったのですが、吸うのと同時に肩峰と鎖骨を逆に前に出す感じ、そうですね、動きとしては自分より背の低い例えば子供とハグするような感じとでも言いましょうか。

そうすると背筋は伸びるのと反対でやや丸まる感じになるのですが、背中側で、左右の肩甲骨間が拡がって広背筋にテンションがかかって、同時に息がスーッとすばやく大量に吸い込まれて、胸郭上部の背中側が拡がる感覚がしたんです。

ホント、自分でびっくりしたんです。うまく言葉で説明できなくてすみませんが、この感覚、この骨格の使い方、バジルさんのこれまでの幾多のご指導経験から見て、いかがでしょうか。

合理的か、邪道っぽいか、ということですが。

自分としてはしっくりきたし、背中の使い方で胸郭が開くなら医学的には合理的かと思ったのですが、バジルさんのご意見を伺いたくて居ても立っても居られず、ついついメッセージしました。



【バジル】

奏者としてのわたしの経験、そしてレッスンしていての実証のうえでの経験では全くその通りに思います。

胸張って、背筋伸ばして、とよく言われていますが、呼吸機能や音の面で本当に良いか検証されているのか甚だ疑問に感じます。その点でSさんの実感と合致します。


わたしは解剖学的に確かめる術や力学的に推測する知識を持っていないので、現場で比較実証という手段でしか示せないことですが、Sさんの実感されたことと同じことを提案するケースがとても多いです。



【内科医Sさん】

ありがとうございました。

よくバジルさんがブログなどでおっしゃっている、「姿勢を良くして」という指導は時として疑問で、吹奏のための機能的な骨格や筋の使い方と合致しないこともよくある、という、良い一例を自分で体感したように思いました。

バジルさんのレッスンで私以外の受講生へのご指導も含めて強く感じたのは、バジルさんの実践なさっているアレクサンダーテクニークは、ガチガチに知識と理論一辺倒ではなく、基礎的な解剖・生理には基づくけれどもそこからもっと実践的に個々の奏者の演奏スタイルに応じて「現在の問題を改善してより快適に健康的に演奏できるような」身体の使い方の工夫を考える、ということで、我々医者がやっている外来における患者さんへの診療と近いものがあると感じました。

吹奏のために素早く効率的に胸郭を拡げてエアで満たすためには、それを可能にするような周辺の筋や骨格の動かし方を工夫してより能動的なアクションが必要となるので、やはり生への営みとしての医学的生理学的な「息を吐くのをやめるだけで良い」という理論は、ちょっと当てはまらないかなあ、と改めて個人的に感じました。



【バジル】

実際の職業医家であられるSさんからの前段の御言葉、とても励みになります。心よりお礼申し上げます。

また、二点目についても、わたしも同じ所感です。

吹奏は、呼吸のスポーツのようなものですから、リソースそのものは生来の自然なものであっても、その使い方や程度は安静時や通常の呼吸と異なるでしょうし、また、それにより適応した発達もあることと思います。


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【呼吸について、内科医の方との意見交換】” への2件のコメント

  1. >>確かに胸郭内は大気圧と比べて陰圧ですので、「積極的に吸い込もうとする必要はない、吐くのをやめるだけで反射的にエアは入ってくる」というのは医学的にも正しいのですが、
    常に陰圧なのは、「胸膜腔間」であって、「胸郭内」ではないのでは?
    「」内は医学にも生理学にも物理学にも全く則っていないように思えるのですが。

    • おそらく、大雑把に言えば、ということだと思います。お医者さんが、生理学の素養を持たない素人の言葉に合わせて意味を汲んで仰っているのでしょう。たぶん。

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