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〜演奏の恐怖を、しっかり見据える〜
あるとき、ある音楽大学で、「人前にでることに伴う緊張・恐怖を乗り越える」というテーマについて講義を受け持っていたときのことです。
講義では、実際に学生さんに前に出てきていただいて、ほかの聴講生たちの前で演奏してもらう形で、
実際に「緊張してもらいながら」進めていきました。
ある学生が前に出て演奏してくれた場面でのことです。
その学生さんは、「いざ演奏が始めれば楽しいが、演奏が始まる前はすごく苦しい」ということを相談してくれました。
そこで、
『その苦しさを、色や雰囲気で言えばどんな感じですか?』
と問いかけました。
彼は
『赤黒いです…』
と答えました。
バジル
『ではその赤黒さをよく見つめながら、いったいなにを考えていると・思っているとその赤黒い感じが出てくるか、ゆっくり考えてみてください』
学生
『…..』
バジル
『どんなことが起きると感じていますか?』
学生
『…..みんなに嫌われるような気がしています…..』
バジル
『なるほど。では、演奏したらみんなに嫌われるのか、楽器を演奏するということはみんなに嫌われるようなことなのか、本当に嫌われてしまうだろうか。それを論理的・常識的に問うてみてください。普通に考えると、どう思いますか?』
学生
『嫌われるようなことはあまり無いと思います。』
バジル
『そうですよね。でも、赤黒い感じの苦しさがあるということ、嫌われてしまうんじゃないかという思いが湧き上がっているということは否定したり打ち消したりせず、はっきりと感じてください。そして、感じたうえで、「でも実際には嫌われないだろう、大丈夫だろう」という覚めた思考をその感情に向かって言ってあげてください。いまからまた演奏して頂きますが、赤黒く苦しい感じがしてきたら、「大丈夫。嫌われない。」と心の中で繰り返しつぶやいてください。』
学生
『(演奏の準備をしながら、それをやっている)』
バジル
『その感じで、演奏してみましょう』
学生
『(演奏する)』
バジル
『どうでしたか?』
学生
『全然、嫌な感じがしませんでした!演奏がうまくいきました』
….人前にでるとき、あるいは人前に出ることを考えただけでも、不快な感覚や恐怖感に襲われることはありませか?
そんなときはぜひ、いま述べたような
①その感覚・感情をよく眺めて感じる
②そのうえで、覚めた思考で、心配しているようなことはほんとに起きるかどうか考えてみる
③普通に考えて大丈夫なのなら、「大丈夫だよ」と、不快感・恐怖感を感じている自分に丁寧に伝えてあげる
ということをやってみましょう。
そして、明日はこのレッスンの続きのことをお話しします。
この学生さんは、
『それでも、音を出す直前に、なんだか「うわ〜〜〜!!」となる』
ということを言ってくれました。
その「うわ〜〜〜!!」の正体と、どうすればいいのかということについて、またレッスンで起きたことを、次の投稿でお話しします。
お楽しみに!
Basil Kritzer