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大学生トロンボーン吹きから、「音が飛ばなくなった」という悩み相談をメールで頂きました。そのやり取りを紹介します。
【質問者】
初めまして。私は大学のオーケストラ部でトロンボーンを吹いています。
私の悩みは「音が飛ばなくなったこと」です。
月に一度の合奏の録音を聞くと、二か月前の録音に比べて明らかに自分の音が周りに埋もれているのです。
もともと音は小さい方でしたが、メロディとしてきちんと成り立っていました。
周りの伴奏が静かな時は、どの音域でもきれいに響いて聞こえるのですが、全体が盛り上がってffのトロンボーンのメロディになると私の音が埋もれて聞こえません。
最終的にはどうにか音を大きくしようとして息を入れ込みましたが、録音には破裂音が遠くで鳴っているようにしか聞こえませんでした。
感覚としては、マウスピースの辺りしか振動してない感じです。音が完全にベルより手前で鳴っています。
ですので、自分自身うるさく感じますし割れて聞こえます。
しかし、どの曲においても、録音を聞くと、最近は音が遠くで鳴っているようにしか聞こえません。
二か月前の状態に戻りたいのですが、なぜこの二か月でこうなってしまったのかが分からず悩んでいます。
関係あるかわかりませんが、この二か月で練習していたことは、高音練習です。
ハミングして低音から高音が体のどこで響いているのか意識して音をだす、という記事を見て練習を実践していました。
結果的に今まで当たらなかったhighB♭〜C♯まで鳴るようになりました。
ハミングで高音をだすとき、喉が締まることが気になっていましたが、お腹に力を入れると喉に頼らず高音が出ることに気づきその方法で練習していました。
その奏法を実践するようになってから、高音は出しやすくなりましたが、代わりに音が飛ばなくなったように思います。
お腹に力を入れると、やはり音がベルより手前で鳴っている感覚があります。
クレッシェンドして音をおおきくしても、その場から音が飛ぶというより風船が膨らむだけ膨らんで飛んでいかない感じです。
しかもかなり早い段階で割れてしまいます。
お腹に力を入れるという感覚が原因なのでしょうか。
【バジル】
うーん…
文章を拝見している限りでは
・前の奏法の音の方が質は悪いんだけどたまたま録音機器が拾いやすい音だった
・一回目とは録音の位置や状況が変わっているだけ
の可能性の方が高い気もしますが…。
録音って響き・飛びがいちばん判断しにくいです。音程やリズムの判断はしやすいんですが。
一応試してみてほしいのが
・高音ハミングで感じる喉や口や首の動きをチェックして
・お腹を使いつつ、それらの動き『も』上乗せしてやってみる
とどうなるか、です。
【質問者】
アドバイスありがとうございます…!!
録音係に確認してみたところ、機材の位置は変わっていないようなのですが、最近機材のマイクがひとつ壊れたらしく録音の調子があまりよろしくないらしいです。
以前はレッスンの先生にも「トロンボーン気持ちよさそうに吹くね!」と言われていたのですが、本番前に周りから、もっと頑張って大きい音出して!!と言われて焦って必死になっていたのも原因のひとつかな、と思いました。
>>録音って響き・飛びがいちばん判断しにくいです。音程やリズムの判断はしやすいんですが。
↑
そうなのですね…!今まで録音を聞いて一喜一憂していましたが、録音を鵜呑みにするべきではないですね…
>>高音ハミングで感じる喉や口や首の動きをチェックして
昨日さっそく試してみました。
鏡に近づいて確認したところ、高音にいくにつれて、首の筋?が張ってくることが分かりました。(徐々に浮き出てきます)高音を絞り出している感じがして苦しいです…。
また、少し顔を上に向けると高音がでやすいです。
>>お腹を使いつつ、それらの動き『も』上乗せしてやってみる
↑
この場合「少しベルアップして、首の筋が張っている状態でお腹を使う」という解釈をしたのですがこの解釈で良いのでしょうか…?(間違っていたらすみません…!)
お腹を使うと息の圧力があがるので、首の筋が張った状態で吹くと息の通り道が押し広げられるような感覚でした。
最初は苦しいですが、押し広げられたあと?はストレスなく高音が出せるようになりました。
【バジル】
音質に関しては、やはり無理に音を大きくしようと焦っているだけの問題のようですね。
次は
『音を上がるにつれて、お腹を内側に押し込むように力をかけていき、その力の増していくのと同調させるようかな少しだけ顔を上げていく』
ようにしてみるとどうなるか試してみて下さい。
【質問者】
>>『音を上がるにつれて、お腹を内側に押し込むように力をかけていき、その力の増していくのと同調させるようかな少しだけ顔を上げていく』
↑
これをやってみると、音が飛んでいくのが自分で吹いていて分かりました!
自分の手前だけで音が大きくなるのではなく、部屋全体に音が広がっていくような感覚でした!
今までは周りに人がいる状態で高音を練習するのが怖かったのですが、不思議と楽しく吹けました。
この数日間で、あれだけ苦手だった「高音を吹くこと」を楽しいと感じるようになるとは思っていませんでした!
「音を飛ばそう」「大きく吹こう」と意識するのは大事だと思いますが、思いすぎて自分で自分の首を締めていたのだな、と感じました…
【バジル】
わたしも大学時代似た経験をしていて、
大学で師事した師匠に、響いている音とそうでない音のちがいを正確に聞き分ける力をしっかり鍛えられて分かるようにりました。
それで、自分の音を響かせよう響かせようとして喉を開けよう開けようとしたりして頑張っていたけどうまくいかず調子を崩して数ヵ月。
ふとしたときに喉を開けようとかなんとかせずに吹いたときに、師匠に鍛えられた耳に間違いなくよく響いた音が聴こえたんです。
そこから、『響かせよう・飛ばそう』ではなく、結果的に響く・飛ぶ吹きかたを選び取っていくというアプローチになりました。
高音が楽しくなって、本当に良かったですね(*^^*)
【質問者】
そうだったのですね…!
考えすぎて沼にはまってしまう前にバジルさんに質問して本当によかったです…
私には目標としている先輩がいるのですが、その方の音に近づけたような気がして嬉しかったです!
>>そこから、『響かせよう・飛ばそう』ではなく、結果的に響く・飛ぶ吹きかたを選び取っていくというアプローチになりました。
↑
この考えを忘れずに日々精進していきます!
本当にありがとうございました!!m(__)m
同じ悩みを抱えている方に届いてほしいです…!
完