– – –
唇が力み、すぐ腫れてしまい、音がスカスカになってしまうと悩む高校生トランペット吹きからメールで相談を頂きました。そのやり取りを紹介します。
【質問者】
私は今、高校2年生でトランペットを吹きはじめて5年目になります。中学で3ヶ月間のユーフォニウム経験を経てから、今の楽器になりました。
音楽は大好きなのですが、とにかく奏法が不安定で、なかなか上達できずとても苦しい思いをしています。3月には定演もあり、パートで唯一の最上級生とあってプレッシャーもひどく、今は楽器を持つのが怖くて、楽しんで吹けないのがつらくてたまりません。
今の悩みは、2つあります。
ひとつは、唇の閉じ方です。
唇を閉じるときに唇を前に突き出すようにしてセッティングしても、いざそこへ息を吹き込むとそれまで下唇よりも前にあった上唇が後ろに引っ込んでしまい、下唇の方が前に出てしまうのです(普段口を閉じているときは上唇のほうが前に出ています。噛み合わせも上の歯のほうが前に出ています)。
試しにプレスを強めにしてみても、あまり改善しませんでした。
下顎の支えが足りないのかなと思って下唇を上に持っていく意識をしても、良い手応えがありませんでした。
息の吐き方にも問題があるかもしれないと考えてみましたが、口の天井に向かって息を吐くイメージに変えてからもうまくいきません。
また、息を吹き込むと唇がガッチガチに力んでしまい(特に上唇)、そのせいか唇が腫れやすくすぐ高音域が出なくなってしまいます。
響きもあまりしない音になってしまい、発音の頭から音が出すことができません。
もうひとつは音域です。
安定して出せるのがチューニングB♭までくらいで、高音域が全然安定しません。低音域になると口が緩んでしまい、跳躍もかなり苦手です。
本当はレッスンを受けに行きたいのですが、部活のスケジュールが忙しく2月くらいまではどうしてもレッスンに行けなさそうなので、先に相談させてもらうことにしました。
お忙しいとは思いますが、アドバイスしていただけると幸いです。長文失礼いたしました。
【バジル】
マウスピースをかなり下に当てて吹いてみたらどうなりますかね?
下唇の割合がマウスピースの中で多くなるくらい。
【質問者】
今日さっそく実践してみましたが、あまり手応えがなかったので2〜3日試してみてからまた経過を報告させていただきます。
【バジル】
吹いている間、息は口から外では上に吹き上げるつもりでやってみるのも試してみて下さい。
前髪を吹き上げるときみたいな感じで。
– – -数日後- – –
【質問者】
頂いたアドバイスをもとに、3日ほど実践してみました。
マウスピースの位置を低くしたところ、思ったよりも手応えがありませんでした。
そこで、位置ではなくセッティングする時の自分の行動を分析してみたのですが、”歯とマウスピースで唇を挟む”という意識が少し邪魔をしていたようでした。
歯を唇に密着させて支えておこうとするあまり、知らぬ間に上唇をずっと上の歯に引きつけてしまっていたようです。それに気づいて、歯から上唇が離れても大丈夫!と思いながら吹くと唇自体の力みが少し改善されました。
(その力みが取れてから再び歯とマウスピースで唇を挟めばしっかり吹けそうです)
ただ、それでもやはり上唇に力みが感じられるので、位置ではなく唇の閉じ方や音域の移動の仕方に問題があるのかもしれないです。
あと、口の外の息の方向を考えると、少し吹きやすくなりました。
もしかしたら息の吐き方にも問題があるのかもしれません。
私は吹奏楽を始めてから歌うときに喉声になってしまうようになったのですが、それは息の吐き方と何か関連性があったりしますか?
【バジル】
こんばんは。
①この記事を参照にして、あなたの「アンブシュアモーション」を調べてください
→『金管楽器奏者のための、アンブシュアに関するヒント』
②動きの方向が分かったら、次の三つのレッスン動画を参考にして練習してみてください:
–唇が痛くなってバテると悩むホルン吹きとのレッスン〜アンブシュアのセッティングとモーションのレッスン〜
–超高位置アンブシュアタイプのホルン吹きとのアンブシュアモーション・レッスン
–プレスは悪いものじゃない。むしろアンブシュア形成のための必要要素なんです。
– – -1週間後- – –
【質問者】
頂いたURLのレッスン動画と記事をもとに、数日間練習してみました。
するとアンブシュアモーションを探していたときに(アンブシュアモーションは高音に行くほど上でした)、トランペットを構える力に負けてしまって、顔が後ろに傾いてしまっていました。
体もなんとなくですが、後ろにそってしまっている気がします。
その傾いた顔に合わせてまた楽器を構えてしまうので、悪循環になってしまい困っています。
同時に唇がだんだん緩んできてしまい、毎回違う場所にセッティングをしなければならずどうしていいかわかりません。
セッティングの仕方の記事なども読んでみてはいるのですがなかなかうまくいきません。わかる範囲で何かアドバイスしていただけるとうれしいです。
【バジル】
音を下げるとき、マウスピースの位置は下がりますか?
角度でなく、位置の話として。
【質問者】
下がってしまいます。
音域が上から下へと低くなるときに、特にその傾向がある気がします。
【バジル】
下がるので正しいんです!
…さては記事ちゃんと読んでないな〜(^^)
音階やアルペジオなど、ふだんやっている基礎的なもの(ロングトーンではなく、音が上下するようなもの)を、
・音が上がる時はマウスピースとアンブシュアを上へ押し上げ、
・音が下がる時はマウスピースとアンブシュアを下へ引っ張り下げる
↑
これを「ちょっとわざと」やりながら吹いてみてください。
あと、この上下運動に傾きがあるか調べてください。
垂直に上下なのか、
左上⇆右下
右上⇆左下
なのか。
どれかが分かったら、「ちょっとわざと」そうして吹いてみてください。
【質問者】
すいません、勉強不足でした…!!
もっとしっかり読んでおきますね。
今日、早速放課後の練習で左右の動きを確認してみました。
私は高音域に向かって左から右へと動くタイプでした。
最初のほうは慣れなくて低位置タイプみたいになってしまうことが多かったものの、だんだんと音がしっかりはまってくる感覚がつかめました!
やっと、見える形で手応えを得ることができました。
合奏で取り出されてもいつもよりしっかりと吹くことができました。
ただ、吹き続けると唇が緩んでしまうクセはまだ残っているみたいです。アンブシュアモーションの練習をもう少し重ねてみようと思います。
【バジル】
右上↔左下のアンブシュアモーションだったわけですね。
とても効果的ですね!よかった🎵
合奏のプレッシャーの中ですら改善したのはホントすごい(*^^*)
アンブシュアモーションを把握して、意識的にやりながら吹くようにするだけでもアンブシュアがどんどん整って、緩みの問題は徐々に減っていくと思います。
少しだけ、アンブシュアセッティングの手順も取り入れると緩み問題に役立つかも。
ぜひやってみて下さい♪
【質問者】
ありがとうございます。
今日の練習も、アンブシュアモーションと教えて頂いたセッティング練習を試したところ、午後まで唇がバテることなく1日を終えられました。びっくりしています。
緩みの問題も昨日より気にする回数が減りました。
このまま継続して練習して自分のものにできるように頑張ります!
あと、もう一つ質問すみません。アンブシュアモーションを安定させるのに一番良い練習はやっぱりリップスラーですか?
【バジル】
アンブシュアモーションは、リップスラー・アルペジオ・音階・曲、あらゆる場面で自分のアンブシュアモーションに沿って意図的にやるようにしていくのが良いです。
何はともあれ、演奏が上達してほんとによかったですね(*^^*)
【質問者】
わかりました。今日から実践してみます。
本当にバジル先生のおかげです。
とても感謝しています。ありがとうございます!
– – –
了
– – –