マウスピースのプレスと唇の割合について

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この記事は、アメリカのトロンボーン奏者の David Wilken 氏のウェブサイトより記事『Embouchure Questions: Mouthpiece Pressure and Lip Ratio』を翻訳したものです。
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マウスピースのプレスと唇の割合について
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ケビンからこんな質問があった。
以降は、ケビンとのやりとりである。


ケビン
『こんにちは、ケビンです。トロンボーン歴5年の中学生です。トロンボーンを始めた当初から、いつも普通のひとよりプレスして演奏してきました。練習を終えるたび、唇の周りにくっきり丸くマウスピースの跡が残ります。この悪い癖をどうしたら止められるか、ほんとうにわかりません。』



まず第一に、マウスピースを当てている場所が赤く跡がつくこと自体は、まったく心配しなくてよい。跡が残ることに、特に意味はない。

肌が白かったり、透明度が強い奏者はそれだけで赤い跡が残る。

また、特に理由はなく他のひとより跡が残る奏者もいる。

赤く残る跡がマウスピースのプレスの強さを知るうえ正確な判断に使えないことは確かだ。


では、あなたの言うマウスピースの圧力に関しては、あなたがプレスをし過ぎているのかそうでないのかは私には分からない。

実際のところ、金管楽器の専門家ですらマウスピースのプレスに関しては有能な判断者ではない。

痛いとか、歯がグラついてしまうとか、そういうことでなければ、私ならあまり気にしない。


ケビン
『音域もプレスのせいで狭まってしまいます。高音域を演奏するとき唇をギュッと挟んでしまいがちで、そのせいで音がとても薄くなってしまいます。仲間に比べて、耐久力もありません。ぼくのアンブシュアは息が上向きに流れているので、バンドの先生はマウスピースの中にもっと上唇が入るような一にマウスピースの当て方を変えた方がいいと言います』



何点か述べることがある。

まず第一に、わたしが作った記事やビデオに一度目を通してもらうよう、丁寧にお願いして欲しい。

ビデオ
金管楽器の3つの基本アンブシュアタイプ
下唇の割合が多く息が上に流れるアンブシュアタイプについて


息が下向きに流れるアンブシュアのほうが一般的に多いので、自然と金管楽器の指導者たちも息が下向きに流れるアンブシュアを持っていることが多い。

でも残念ながらそういった指導者たちの多くは、自分の生徒たちも同じようなアンブシュアにすべきだと思ってしまうのだ。

もしあなたの先生が、あなたのマウスピースの当てる位置をそのままにしておくべき理由を理解してそう考えることができれば、あなたの抱えている問題にちゃんと目を向けることができるだろう。マウスピースの位置の問題ではおそらくないからだ。


あなたの演奏を実際に見ることなしには、あなたの高音域の限界と耐久力の問題を起こしている原因は推測することしかできないが、わたしならまず最初に、「音を上がるとき、口角を引いてスマイルするような動きをしてしまっていないか」をチェックする。

なんらかの理由で、この問題は息が上向きのアンブシュアのひとにより多く見受けられるが、どのようアンブシュアでもこのやり方は問題になるのは同じだ。

音を上がる前の位置のまま、口角を固定しよう。
音を上がるとき、口角に後ろに引っ張らせないようにする。

これが音域の問題にも耐久力の問題にも改善をもたらす。



ケビン
『そのやり方でやってみたところ、上唇へのプレスが減りました。それに、唇を挟んでギュッと力を入れてしまうのも止みました。でも、この新しいアンブシュアのやり方はしっくりきません。新しいアンブシュアを使うことでアンブシュアや音色を乱す危険は背負いたくないので、どうしたらいいかほんとうに分かりません。』



あなたの演奏を直接見ていないので、息が上向きに流れるアンブシュアがあなたの解剖学的構造に合っているかどうかは推測することしかできない。

とは言いつつも、息が上向きに流れるアンブシュアで演奏している奏者の大半は、結局そのやり方がそのひとに一番適切だからそうしていることが多い。


自分自身の顔の解剖学的構造にとって適切でないアンブシュアタイプを用いながら、練習を頑張ることで適切なアンブシュアで演奏するくらい上手になることはできない。



ケビン
『ときどき、呼吸が不十分だからこういう問題が起きているんじゃないかと思うときもあります』



呼吸に取り組むことが害になることは決してない。良い呼吸は、金管楽器の演奏にとても重要だ。

しかし、悪いアンブシュアに良い呼吸を当てても、アンブシュアの問題は改善されない。


ケビン
『マウスピースのプレスをし過ぎるひとは、唇の血流が悪くなっているから、耐久力はずっと伸びないままだと読んだことがあります。それに、唇の真ん中に圧力をかけているせいで、口の端の筋肉はほとんど働かなくなってしまう、とも書いてありました。』



たしかに、過剰なマウスピースのプレスは耐久力を損ねてしまう。唇というのは、もともと金属を押し当てるためにつくらているわけではない。

でも、演奏中全体的にずっとアンブシュアを安定させておけるような筋力を徐々に発達させていくにつれて、そうなる前よりはマウスピースのプレスが必要なくなってくることを感じるだろうし、逆に強いプレスをより受け止めることもできるように唇はなっていくだろう。


ケビン
『どうしていけばいいでしょうか?どうしたらこの問題を解決できるでしょうか?』



まず第一に、音を上がるときの口角をチェックしよう。

おそらく、音を上がるにつれてスマイルするようなことをしているのだろう。

もしそうなら、鏡を見ながら口角を一箇所に固定するよう努力しつつ、ゆっくりスラーで音を上がってみよう。口角を後ろに引っ張りたくなっても、我慢するように。


ほかには、息の音が混じった、軽い、マウスピースなしのフリーバジングに取り組んでみるのもいいだろう。

口角の位置を固定し、またプレスを受け止めるクッションにもなるような筋肉の使い方を発達させていく助けになる。

マウスピースのプレスを心配せずにパワーと耐久力を発達させていくよい方法になる。

このフリーバジングは、一日に数分。
それ以上やる必要はない。


根気強く取り組もう。
時間はかかる。

楽器の先生と個人レッスンで取り組んでいければ、それが最善だろう。

先生に、マウスピースの位置を上げさせられそうになったら、先ほど紹介したビデオや記事を読んでもらおう。

幸運を祈る!


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この記事を書いた David Wilken 氏関連の日本語記事一覧はこちら



2 thoughts on “マウスピースのプレスと唇の割合について

  1. 私はユーフォニアムを吹いています。決して高音域は得意ではありません。よく同じ団の人と話をするのですが、高音は要するに唇の振動をより(小さい部分で)細かく早く振動させる事ではないのか?と理解しています。言葉にするのと現実って結構難しいのですが、口角のテンションを上げる事でも勿論高音が出る事は出るのですが、寧ろどうやったら細かく早く振動させるか?という所を考えたいです。(実際は本当に中々な事ではありませんが)口の中の容積とか舌の位置とか(言う程簡単ではありませんが)教則本等では単にシラブルとかで説明される事が多く解りにくいな・・・と思う事が多々あります。実際吹くとよく解るのですがシラブルだけで音が変わるか?と思ってやってみると変わらないですよね?TP奏者である藤井完氏によれば息を回す?(この表現ってまた難しい)のがスラーだったり高音を理解していく助けなのかな?とも考えたりしています。でも私みたいな一般の奏者って色々悩みながら忍耐強く練習しかないのかな?とも思います。

    • K.I.さん

      忍耐強さは、プロでも学生でも愛好家でも、楽器演奏の向上を目指すには共通して必要ですね。
      しかしそれは、役立つ理論や助けによってサポートされていいものだと思います。

      ですから、教則本などに書いてあること、あるいはこの記事に書いてあることが最初はわからなくても、
      あきらめずに関心を持って色々調べて好奇心を頼りに心を開いていくことは、きっと良いことだと思います。

      今後もどうぞこのブログをお楽しみください。

      Basil Kritzer

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