「する」と「思う」の境界線

繰り返し同じような失敗をしてしまうとき、あるいは何回フレーズを練習してもどうも変化や上達が無いとき。それは脳と神経で起きていることから見ると、繰り返し「同じ神経回路」を使って演奏していることになります。

使っている神経回路によって生み出される体の動きが、もしフレーズを正確に演奏しきるようなものであればラッキーなのですが、上記の場合は残念ながらそうはなっていないことを意味します。

このとき、「1万回練習」や「気合いと根性」では残念ながら解決も改善もありません。なぜなら求められていることは「練習量」ではなく、「今までとは異な る動きをする」ということだからです。異なる動きとはすなわち、使っている神経回路もまたちがっていることを意味します。

ではどうすれば失敗の連鎖や成長の行き詰まりから抜け出して、変化や上達を促すことができるでしょうか。そのヒントは「する」と「考える」の微妙な境界線上にあります。

「する」
まず、いつものようにフレーズを演奏してみましょう。演奏している間、体はそのための動きをしていますね。なので「動いた感触」が必ず感じられます。それを感じてみましょう。楽器により様々ですが、腕、脚、唇、息、指、胴体などの中にフレーズを演奏するために使った場所があり、使った「感覚」が感じられますね。

「思う」
次に、同じフレーズを今度はただ「思って」みてください。イメージする、ということです。できるだけ克明に、自分がいま演奏しているつもりで「思う」のです。すると、先ほど実際に演奏を「する」ことで発生した感覚と似たような感覚が、体に生まれているのが分かりますか?

「思う」ときのどの時点でかすかにでも体の感覚が発生しているか観察してみると面白いです。たいてい、そのフレーズを「思う」ことを始めて1秒もせずに感覚が変わってきます。

脳は「する」と「思う」を区別しない
なぜこんなことが起きるのか?それは脳の中では「する」と「思う」とで、基本的に同じ神経回路を使っているからです。その回路を使っていると、それとセットと なっている筋肉たちに指令が行きます。「思う」だけで、「する」まで行かなくても、筋肉には指令が行き始めていますから、いつでも「する」ができるように 筋肉は準備しているのです。だから「思う」だけで「する」感覚が生まれます。実際に「する」動きが始まりつつあるからです。

自分の癖をつかまえる
この現象に着目すると、妙な演奏の不調や繰り返してしまう失敗、成長の行き詰まりからの脱出の道筋が見えてきます。そこでまずは先ほどのように「思う」よ うにしてください。そのうち「する」ときの感覚が感じられますね。ではその感覚の中に、あなたの意図していない緊張や苦しさは見当たりますか?あるいは、 演奏の効率から見ると無駄に思える動きや緊張が起きそうになっている部分は見当たりますか?

それがあなたの不調・行き詰まりを起こしている動きそのものです。

あなたはいわばこの時点で不調の原因を「キャッチ」できたのです。

私はよくレッスンのなかで「気付いたら9割勝ったも同然」と言っています。「自分のやっていること」がこのようにして分かれば、それは大きな大きな改善への一歩目です。

「思う」を変えてみる
さて、あなたは不調・行き詰まりの原因である自分の緊張や癖をつかまえることに成功しました。あとは、それを「起こさない」ようにする必要がありますね。

ではどうしたらいいのか?

「思う」を変えてみればいいのです!

さきほど、あなたはいつものように「思う」と、いつもの「する」ときの緊張や癖を発見しました。ということは「いつもの『思う』」が原因なのです。ということは「思う」の内容を変えてみれば、あなたの「する」も変わるのです。

そこで意図的に「思う」の内容を変えてみましょう。まずは、発見した「癖」が「無い状態」を想像・イメージしてください。そのイメージで演奏しているところを「思って」下さい。

さて、このとき体は何を「する」モードに入っていきますか?どんな兆候が感じられますか?さっきと比べて緊張や癖のパターンが減っていたり、なんだか別の 感触になっていれば、実験大成功です。なぜなら、あなたは自分の「思う」に変化を自力で起こせたから。その「思う」のまま、実際に「する」にうつってみて ください。きっと音や演奏の感触は実際に変わるでしょう。

覚えておいてください。変化は上達の生みの親なのです。

おすすめの「思う」内容
さて、アレクサンダー・テクニークのレッスンではこういった「する」と「思う」の関係のみならず、「どういうことを思うといいのか」もしっかり教えています。どんなエチュードにも教則本にも書いていないけれど、「思う」といいこと、意識するといいこと。

それをアレクサンダー・テクニークの創始者 F.M. アレクサンダーは発見してくれたので、後世のパフォーマーたちは大いに助かっています。さてその内容とは…。

は!?

と思うかもしれませんが、実は「頭を動けるようにしてあげよう」と意識するといいのです。頭を動けるように、と意識しながらフレーズを演奏するところをイメージします。

「頭」という新しい要素を含んだ「思う」はこれまでと確実に異なっており、必ず異なる動きを生み出します。そのため上達の生みの親である変化を誘発するのです。

私たち人間は動くときに、全身のバランスや状態に対して「頭の動き」が絶大な影響力を持っています。だから「頭の動き」を「思う」に含めると動きの質が大きく改善します。

まずはお試しあれ。

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