ペダルトーンの練習の仕方について

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アメリカのトロンボーン奏者 David Wilken 氏は、ハイスピードカメラなどを用いた科学的な手法で、金管楽器奏者のアンブシュアの分類と働きの研究を行っています。そして、その研究の要旨を自身のウェブサイトで公開しています。

その研究と理論に大変感銘を受け、わたしはご本人に連絡をして、一部の記事を日本語訳しこのブログに掲載しています。記事一覧はこちら

この研究を読み、翻訳を通して理解し、また個人的にもわたしの演奏動画を添えてメールで質問をし、指摘とアドバイスを受け、レッスンのなかでもこの観点を活用するなかで、わたし自身の演奏そしてレッスン活動に大変役立っています。

そんな Wilken氏の記事のひとつに、『トランペットでペダルトーンを演奏することに伴うリスク』というものがあります。この翻訳記事に関して質問を頂き、そのやり取りがこの記事に関して大変良い補足になると思いますので、ここにそのやり取りを紹介します。

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【質問者】

バジル先生こんにちは。アマチュアのトランペット奏者です。私はあるプロの門下ですが、練習の中にペダルトーンが組み込まれています。

ただし、最初からペダルトーンを吹くのではなく、ペダルトーンのオクターブ上からスラーで下りて最後の1音だけがペダルトーンになる方法です。先生からは最初に吹き出したアンブッシャーでペダルトーンまで下がるよう指示が出ています。ペダルトーンを吹く時に絶対にペダルトーンが吹きやすいアンブッシャーに変えてはいけないと強く言われております。

この練習によりhigh F程度まで当たるようになり音色も改善したように思います。しかし、バジル先生の記事を拝見した時にそのリスクがとても高いのでは無いかと強く感じ、ペダルトーンを続けていいものなのか考えてしまいました。トランペットにおいて高い音を獲得するために他の有力な方法があるのであれば是非ご教授いただけませんでしょうか。

私の先生がペダルトーンを吹く時に通常時とアンブッシャーを変えて吹いてはいけないと強く指示を出してきた理由がバジル先生のお話により明確になりとても納得しております。貴重なお話をありがとうございます。

【バジル】

記事の執筆者によると、記事中に明言されている通り、アンブシュアタイプによって相対的にペダルトーンの練習が問題を引き起こしにくいタイプと、引き起こしやすいタイプがあるとのことです。

師事しておられる先生の指示『ペダルトーンを吹く時に絶対にペダルトーンが吹きやすいアンブッシャーに変えてはいけない』は、わたしにはペダルトーンの練習における、この記事中で言及されている「リスク」を回避・軽減するもののように思えます。「絶対」とまではわたしはいえないかもしれませんが、個人的は先生の指示には共感します。

>>最初に吹き出したアンブッシャーでペダルトーンまで下がるよう

昨年夏ごろこからわたしもそれを意識して取り組み始めました(ホルンですが)

すると、高音が安定しました。また、4オクターブまたはそれ以上の音域のスラーもよりつながるようになってきました。

高い音の練習それ自体は、わたしはシンプルに高い音を吹くことで行っております。たとえばこんなやり方で。

ただ、この練習の仕方はホルン、チューバ、トロンボーンにはとても有用ですがトランペットは何らかのアジャストが必要かもしれません。楽器のバランスがちがうというか…。

ペダルトーンの練習が他の楽器より弊害が出やすいとする記事原文の執筆者の指摘も、トランペットと他の金管楽器の若干のバランスのちがいを示しているように思います。(とはいいつつも、ホルンにおいても低い音の練習に偏りすぎてアンブシュアの使い方が崩れているひとを結構見かけますので共通点もありますね。わたし自身、ペダルトーンにおいてなるべくアンブシュアを一定にするように練習しだしたら良い効果が低音以外にもありましたし。)

また、わたしがドイツで5年間師事したホルンの師匠は、中低音域の鳴り・響き・柔軟性をしっかり確保、確認してから高音域につなげていくというウォームアップ&練習法&奏法のひとでした。当然わたしもそれに従っていましたが、大学を出てから徐々に練習の仕方を変え、むしろ高音を中心にするようになりました。わたしの場合は、高音域を中心に据えたほうが、テクニック・奏法が全般にバランスが取れ、上達の手応えも得やすくなります。きっと、師匠とは奏者としてのタイプが異なっていたんだろうと思います。

その経験もあり、いま、ひとによっての奏法の中心・重心がどこにあるのかが異なるんだ、という見方をレッスンでは用いています。この記事を含めた、David Wilken氏の記事を読んで勉強してからはさらにそれが具体的になりました。

【質問者】

ご返信ありがとうございます。

ペダルトーンについてアンブッシャーによってリスクの高低があると言うことはバジル先生の記事で始めて知りました。

私の師事している先生の門下生は音出しの段階から同じことをやっているのを目撃しており、門下生で食事に行った際にレッスンで何をやっているのか尋ねてみたところほぼ同じ事をやっていることが分かりました。

「アンブッシャーを吹き始めから変えずにペダルトーンに下がる」についてはかなり考えられてこの指示が出ていたように思います。ペダルトーンについて師事している先生はやり方を間違えると非常に危険でアンブッシャーの安定性を損なう恐れがあるという話をされていた事を思い出しました。また、一時期ペダルトーンを取り止めた事もあったとも言っていました。

この事についてバジル先生の記事を拝見した時、何故そうなのかその仕組みがとてもよく分かりました。また、門下生に同様の練習法を用いているためペダルトーンが吹きやすいアンブッシャーに変えてはいけないという指示を全員に出すことにより一律にリスク回避を行っていたように思います。

ハイトーンについての具体的な練習方法をご教授いただきありがとうございます。バジル先生から教えて頂いた方法を試してみたいと思います。

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