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音楽をしているひとのうちどれぐらいにあてはまるか、あてはまるのはどんなタイプのひとか。
それはちょっとわからないのですが、きっとだれかには役立つと思うのでわたしに役立っている方法をお話しします。
わたしはホルンを練習するとき、練習する前から
「きょうはあんまりいい感じでできなさそうだな…」
と分かることがあります。
ちょっと身体が硬く、ちょっと不安で胸がザワついていて、心の風通しがあまりよくないのです。
それをよく分かっているとき、どんな感じでそうなっているかを感覚的にしっかり捉えられているときは、そのまま練習に入っても、その「いまいち感」にありのままにフォーカスしながら練習すると、練習を通じてその硬さ・不安・モヤモヤが解消されていくときもあります。
でももっと好きなのは、練習するのをちょっと「後回し」にして、心の風通しを良くすることをまず優先的に行うことです。
わたしは横浜の海の近くに住んでいるので、ちょっと歩けば関内の建物の美しいエリアや、海辺の気持ちよくて綺麗な公園に行くことができます。
「ぼくは、自分の人生でどんなことをやりたいかなあ」
「仕事の義務感や他人の評価を気にする気持ちが、もし仮に全部無かったとしたら、自分はどんなことを考えたり感じたりしているかなあ」
「自分にとって、音楽ってどういうふうに好きで、大切なのかな」
「ホルンで、どんなことをやりたいかなあ」
そんな問いを漠然と自分にしながら、空や風景を眺めながら歩きます。
すると、だんだん心がほぐれて身体が軽くなって、背すじがひとりでに伸びてくるような感じがしてきます。
そうなると、うまく言葉にはならないことが多いのですが、自分の芯に調和するようなイメージや感覚や発想がふと出てくるのです。
それを大切に持ち帰って、そのまま練習を始めます。
きょうは、海辺の広々としてとても照明が素敵なカフェで、自分ではないけれど有名なホルン奏者が独奏会をしているイメージがふと浮かびました。
また、明治期の洋風建築様式の立派な銀行や庁舎などの建物のロビーで、自分が金管五重奏をしているイメージも浮かんだりしました。
それらは楽しくて、自分にとってとても自然に感じるイメージです。
それらを、家に帰って、練習室でちょっと思い出しながら楽器を吹くのです。
そうするといつも、忘れていた大事なことや、忘れていた自分自身の等身大の感覚を思い出しながら練習ができます。
そうやって練習すると、頭の中に自分を意地悪に批判するような声がいつもより少なくて、建設的で創造的で効率のよい練習ができます。(いかに、まだまだまだまだ自己批判の内なる声で硬くなってもったいないことをしているか、そのたびに驚きます…)
するともちろん、満足するし自信も回復できるのです。
なんのこっちゃ、というひともいるでしょうが、一方でなんとなく分かってもらえた方もいらっしゃると思います。
もしあなたがそうなら、ぜひあなたもあなたらしいやり方で、有意義な「後回し」をやってみてください。
Basil Kritzer