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高校生のクラリネット吹きからメールで質問をもらいました。
【質問者】
こんにちは!初めてメールさせていただきます
いつもメルマガを読んでいる高校生です参考にさせてもらいながら、練習しています♪
実は、昨日の練習でどうにもならないことがありました
コラールの練習で、自分が抑揚をつけているつもりでも、歌っていないようなかんじに聞こえます。
考えてみれば、曲をやるときも、自分ではやっているつもりでも周囲には平べったく聞こえていることが多い気がします。
曲や、コラールのようなものを吹くときはやっぱりうまく吹こうとして力がはいっているのでしょうか。
リラックスして吹いているようでももしかしたら…と思い、メールしました。
【バジル】
以下の「5回練習プラン」をためしてみてください。
① まず、音量をずっとメゾフォルテかそれ以上に保ってコラールのフレーズを吹いてみます。
② それがある程度できたら、クレッシェンドが書いてあるところは、クレッシェンドが登場するところからすかさず音量を増やし始め、デクレッシェンドが登場するまでしっかりクレッシェンドを続けるか、最低でも音量を同じに保ってみてください。
③ 次に、音が上がるところはクレッシェンドが書いてなくても、ちょっとクレッシェンドしてください。音量を増やしながら上の音にあがる感じです。
④ もういちど最初から吹きます。こんどはデクレッシェンドも書いてある通りにやってみてください。クレッシェンドも忘れずに。また、音を下がる時も少しだけデクレッシェンドしてみましょう。
⑤ 仕上げに、無理のない範囲でなるべくクレッシェンドをし、何も書いていないところはしっかり音量を保ち、デクレッシェンドを書いてあるところや音が下がるところは少し音量を落として吹いてみてください。
たぶんこれで、かなり自然で説得力のある抑揚が演奏に生まれると思います。
ためしてみてください。
やってみて思ったこと、変わったこと、気づいたこと、次に出てきた疑問などをなるべくすぐにまたお知らせください。
【質問者】
今試してみました
前よりも吹きやすくなり、このまま練習していけばもっとよくなるとおもいました!
次は曲につなげていきたいと思います
ありがとうございました!
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注釈:この記事をご覧になった方のなかには、筆者が「音が上がるところは常にクレッシェンドをし、下がるところはデクレッシェンしろ」という音楽表現指導を行っていると誤解された方もいるようです。当然、そのようなことはありません。
これは息を使って音を出す管楽器の構造に根ざした演奏技術のサポートになるアイデアであり、技術的に音を上がったり下がったりより響かせたりすることがより容易にできることが任意の表現を行うことを大きく促進すると考えての、わたしが様々な優れた演奏者や指導者たちと何年も学んできた経験を背景とした提案です。
もし任意の音楽表現として、音を上がるときにデクレッシェンド、下がるときにクレッシェンドをしようと意図していてそれがうまくいかないというケースにおいても、その前段階として一旦この質問者に提案したことをやってみてから取り組んでみると、発音と音の響き、音の保持がやりやすくなって、結果的に意図した表現を実行しやすくなることもあるでしょう。
また、より大事なのはこのアドバイスが、吹奏楽部でクラリネットを演奏している高校生からの質問であり、質問者がどのような環境や指導の影響下に置かれているかを想定しながらのものであるということ。そして実際に質問者にとって楽器が吹きやすくなり、楽曲に活かしていけそうだという手応えがあったというところです。
一般論、原則論としての話ではなく、ある具体的な個人が悩んでいる個別のケースにどう向き合い、どのようなアドバイスを試み、その結果どうなったかという、書いてあるそのままの話であることを留意していただければ幸いです。
ですから、読んでピンときたりやってみようと思った方は、ぜひやってみてください。その効果や手応えは、あなたの演奏の力を助ける数あるきっかけや工夫のなかのひとつである、ということが言えると思います。