息を吸うたびにアンブシュアが硬くなり演奏できなくなる….どうしたらいいの?Q&A

 

ホルンを演奏されていて、中高生の学習支援相談をされている Aさん からご質問を頂きました。ご本人の許可のもと、そのやり取りを掲載します。

 

 

 

【Aさん】

 

はじめまして。私は現在、アマチュアでホルンを演奏しています。

 

突然メールを差し上げるのは無礼かと思いつつも、どうしても奏法についてお伺いしたいことがありメールを送らせていただきました。

 

 

私はかつて、大学で4年間ホルンを専攻していました。

 

その当時からの悩みなのですが、演奏中に唇のこわばりのようなものを感じてしまいソロ曲やエチュードなどの、長いフレーズを演奏することができなくなってしまうのです。

 

また、妙なこわばりは休符の長さに関係なく起こりますし、ブレスを取れば取るほど強くなってしまうのです。

 

中音域であればまだ吹けないことはないのですが、Hi-B♭から上の音域がほぼ演奏不可能になります。

 

 

不思議なことにバテている様子ではなく、楽器を構えなおせば普通に演奏をすることができますし、バテた時の感覚を唇周りに感じることもありません。

 

専攻生だった当時は、

 

「努力が足りない」

「才能が無い」

「アドバイスをしても、理解力が足りないのだから意味が無い」

 

等の言葉で片づけられてしまいましたし、同じような悩みを抱えている人が他にいなかったため、悩みの共有もできず…。

 

自分なりにブレスの取り方の改善や、アンブシュアの見直し等の試行錯誤を重ねてきましたが、一向に改善せずに卒業を迎えてしまいました。

 

 

最近楽器を再開したのですが、今日練習をしていた時に、遠くからのぞき込むような恰好で、首を前に押し出して固めていることに気付きました。

 

「視線を遠くに置く」

「息の流れに合わせて首が伸びるような意識を持つ」

「頭が動けるようにしよう、と意識する」

 

など、思いつく限りで試してみたのですが、思うような効果が得られずにいます。

 

 

ご多忙の折とは存じますが、アドバイスをいただける幸いです。

 

 

 

【バジル】

 

はじめまして。

 

 

首の押し出しに関してですが、それがどれほど奏法に影響しているかは文面だけではわかりませんが、そこをヒントにやってみていただきたいことことに提案をしてみますね。

 

 

1:楽器を構えるとき、まず見たい場所を決めてください。

 

2:そこに対して、体全体を右に向けてください。ひねらず、足のポジションからそうしてください。顔や視線も右になります。

 

3:頭・顔・首・目だけを動かして左(最初に決めた場所)に視線を移してください。

 

4:「マウスピースのリムを口の方向へ持ってくる」ことをとても明確に意識しながら、ゆっくり楽器を構えてください。途中で顔をマウスピースの方へ持って行っていないか、チェックしながら。ただし、だからといって首や頭を後ろに引っ張り戻すようなことはしないでくださいね。硬くなるだけですから….あくまで「マウスピースのリムを口の方向へ持ってくる」ことを意識し、それと実際にやっていることがどれぐらい一致しているか観察しながら構えるのがポイントです。

 

 

こういう構え方をなるべく毎回、常にするように心がけた場合、

 

  • 吹き心地
  • 労力
  • からだの感触

 

などにどんなことが起きるか、なんらかの改善もしくは改善の可能性を感じるかどうか試してみてください。

 

 

 

【Aさん】

 

バジルさま。

 

お忙しい中、ご返信いただきありがとうございました。こんなに早くお返事をいただけるとは思ってもいなかったので、少し興奮しています。丁寧にご回答いただけたことに感謝します。

 

 

ご教示いただいたアドバイスについて、今日の練習から早速実践させていただきます。

 

確かに楽器を構えるときに首をマウスピースに近づける動作をしている気がしますし、学生時代にも指摘を受けていたことを思い出しました。

 

 

どうも演奏を続けていると、唇周りから首筋にかけてのこわばりを感じ、だんだんと体がガチガチに固まって言うことを聞かなくなってしまうのです。

 

直接レッスンを受講させていただければ良いのですが、東京からは遠方に暮らしており、身近にアレクサンダー・テクニークについてレッスンをしていただける方もおりません…。

 

ご面倒をおかけするかと思いますが、またメールでご質問させていただくことがあるかもしれません。

 

 

お手すきの時にでも、ご返信いただけますと幸いです。

 

 

 

【バジル】

 

 

>唇周りから首筋にかけてのこわばり

 

 

というのを拝見して、はじめのメールの「バテていないのに段々演奏不能になる」ということと関係していそうな気がしました。首の筋が段々浮き出てくるような感じですか?

 

そうだとすれば、もしかしたら、「口を引く」という意識または癖が強いのかもしれません。そういうようなことに取り組んだことはありますか?

 

 

マッチの火を軽く吹き消すようなつもりの「吹く」アンブシュアをすこし想像してみて吹いてみるとどうなるでしょう。

 

構え方と合わせ、また経過をお知らせください。

 

 

 

【Aさん】

 

バジル様。

 

今のところの経過と、今日気付いた(思い出した)ことをご報告させていただきます。

 

 

唇を引くことについてですが、ブレスをとる時に引くことがあります。

 

唇を横に引くのは、フレーズの途中など短い時間にブレスを取らなければいけない時に多い気がします。

 

吹き始めるまでに時間が取れるときは、唇を横に引かないように気を配ることができるのですが、短い時間にブレスを取るときは横に引くことが多いかもしれません。

 

 

構え方ですが、ご教示いただいた構え方に加えて、右手を左肩に持ってくるように軽く意識してみると、今までより自分から楽器に近づこうとする動きが減りました。

 

今までより鳴りが良くなった気がしますし、音色もふくよかになった感じがします。

 

以前よりストレス無く演奏できているように思いますし、フォルテで吹いた後の目がチカチカするような感じがほとんどしませんでした。

 

 

今日気付いたことですが、こわばりは、ブレスを取って演奏を再開したときに起こりはじめています。

 

長い休みの後に楽器を構え直して吹くときは問題が無いのですが、フレーズの途中など短い時間でブレスを取らなければならない時は、かなり高い確率で起こり、ブレスの回数が増えるにつれてこわばりが増していきます。

 

また、ブレスを取った後にマウスピースと唇のセッティングがズレると危機感を感じてしまい、そのことに気をとらわれてしまいます。

 

そこからは、何とか立て直しを図るものの息が吐けないし、吸えない。体がどんどんこわばって言うことをきかない、という悪循環に陥ります。

 

セッティングがズレなければ、比較的良好な状態で演奏が続けられますが、ズレたと感じてしまうとあっという間に悪循環を迎えてしまいます。

 

ちなみにブレスは口からとっています。

 

鼻から取れれば良いのですが、アレルギー性鼻炎を抱えており、口から取る方が安心してしまうのです。

 

 

学生時代はブレスに問題がある、ブレスで自分を追い詰めている、と指摘されていましたので、深いブレスを取らなければ、と考えていました。

 

当時は深いブレスの証拠をお腹の膨らみに求めており、指導教官にもそれを推められていました。(高校時代も、お腹に空気を入れろ、と教えられてきました。)

 

今はバジル先生のブログや、呼吸法の動画を参考にさせていただき、学生時代に心がけていたことをやめることにしました。

 

唇の開き方など試行錯誤をして泥沼にはまった時期がありましたので、今はあまり細かいことは考えないようにしていますが、演奏中のブレスの取り方は未だわかりかねています…。

 

 

演奏中は、喉の広がりやお腹の膨らみなど「吸えている感」を得ることで深いブレスが取れたと考えているフシもあります。

 

ブレスの取り方が直接の原因かはわかりませんが、演奏中のブレスの後に体のコントロールを失っていることは確かなように感じております。

 

 

 

【バジル】

 

なるほど、

 

 

・曲中のブレスにおいて、焦りやプレッシャーを感じる

     

・マウスピースのセッティングがズレる

 

 

という、どちらが先かわからないけれども、密接な関連が見えてきましたね。

よくぞここまでおひとりで気付かれました。

 

 

いったん、マウスピースのセッティングというところに着目してみましょう。

先述した「構え方の練習」がおそらくこのズレの解消のための重要な要素のひとつだと思います。

 

 

〜練習方法〜

 

1: 曲を練習材料にします。

 

2: ブレス箇所のところで、はじめは毎回楽器を下ろします。

 

3:新しい構え方(マウスピースを口の方向に)を注意深く、でもソフトな動き方、体の使い方で行います。

 

4:マウスピースが口にしっかり接着していて、乗っていることを確認、感知して

 

5:心理的な意味でゆっくり息を吸って(その際、マウスピースは口にしっかり触れたまま)

 

6:音を生み出します。

 

7:1〜6 を、ブレス箇所のところで毎回行います。

 

8: 7練習日分は、曲の練習はこれだけで行います。焦ってインテンポで通さないように注意してください。

 

9:新しい構え方がよくわかってきて、なんとなく知っている感じになったら、曲をインテンポで通してみます。

 

10:ブレスのとき、3〜6 を短時間のあいだに意識することを目指します。

 

11:数日〜数週間のスパンでの変化や上達に着目してください。完璧主義や自虐に決して陥らないように!完璧主義は前進を阻む麻薬です (by ジュリア・キャメロン)

 

 

〜やはりブレスに緊張や焦りがある場合〜

 

この練習を続けている途中で、もしかしたら、やはりきっかけや原因がブレスに対するイメージや焦り、あるいは息の吸い方の技術的コンセプトにあると感じるかもしれません。

 

もしそうなったら、クリエイティビティを発揮して、ブレスへの焦りもしくは吸い方に対して、それまで考えていたことと逆の、そして自分が安心できてのびのび吹ける気持ちになるような「声かけ」を考案・実験してみてください。

 

 

例:

 

「息なんか別に吸っても吸わなくてもいいや」

「息があとで足りなくなっても、まあいいや」

「息を吸う時、体がどんなふうに動いたっていいや」

「お腹になんか息を一ミリも入れなくたって全然いいや」

 

などなど。

 

 

まずこれを試しはじめて、様子を見てみてください。経過をまたお知らせください。

 

 

 

【Aさん】

 

バジル様。

 

大きな変化と言いますか、改善のきっかけをつかめたような気がしましたので、少し長くなってしまいますが報告させていただきます。

 

 

先日ご教示いただいたアドバイスをもとに練習に取り組んでいたところ、うまくいくときと、ぎこちなさを感じたときとで、首の感覚に違いがあることに気付きました。

 

後頭部のくぼみ(耳の穴を真後ろにたどったあたり)に微妙な張りを感じたのです。

 

 

そこで、改めて楽器を構えてから音を出すまでの流れを確認してみました。

すると、アゴを引いたときに首の張りを感じたことから、

 

「 アゴを引くクセ 」

 

が、質問させていただいた問題点に大きく影響しているのでは?と仮定してみました。

 

 

これはもしや、と思い楽器を構えてから、楽譜を見るときに

 

1.アゴを引いて目線を調節するパターン

2.頭を前に傾けて目線を調節するパターン

 

の両方を試したところ、明らかに2の方がうまくいきます。

 

1の場合は音の重たさに加えて、ブレス時の下唇とマウスピースの接触に、何とも言えない不安定さを感じたのです。

 

 

繰り返し実験をした結果、楽譜を見るときに首を前にせり出そうとしていたようです。

 

 

また、なぜか楽器が震えることがあったので、

 

1.左腕がリードして楽器を構えるパターン

2.右腕がリードして楽器を構えるパターン

 

を試したところ1の場合のみ楽器が重たく、ブレス時に唇へのプレスが弱くなるような感じがして、下唇がマウスピースをつかまえにいくような動きが生じます。

 

 

質問させていただいたセッティングのズレは、

 

「マウスピースと唇の接触が弱くなり、ブレスを取ったあとに下唇と上唇の接着の仕方がズレることでセッティングがズレたように感じる」

 

「唇の接点が変わってアンブシュアが乱れるので、ブレスに集中できない。ブレスが怖い。」

 

 

が実態に近い気がします。

 

 

ここまでから、自分なりに考えたところ

 

左腕の動きに頼った構え+アゴを引くクセ+首のせり出し

 

が問題点の核心に近いと推測しています。

 

 

練習の最後に、

 

1.頭が動けるようにしてあげて、頭が体全体の動きをリードして、

2.右手の指先が腕の動きをリードして、左手はそれについてきて、

3.頭を傾けて視線を調節する

 

という流れで、いくつかフレーズを吹いたところ、呼吸がスムーズになり、唇とマウスピースの密着感や響き、レガートの滑らかさが良くなったように感じました。

 

姿勢も肩が上がり、背筋が広くなったような感じがします。

 

 

思い上がりかもしれませんが、

 

「頭が動けるようにしてあげて、自分全体がついてくる」

 

の理解が深まったような気がしています。

 

 

 

【バジル】

 

こんばんは。

 

 

>先日ご教示いただいたアドバイスをもとに練習に取り組んでいたところ、うま>くいくときと、ぎこちなさを感じたときとで、首の感覚に違いがあることに気>付きました。

 

>後頭部のくぼみ(耳の穴を真後ろにたどったあたり)に微妙な張りを感じたの>です。

 

 

ここで描写されている気づきは、まさにBodyChanceメソッド(アレクサンダーテクニーク)でのレッスンでの軸になる「頭の動きと身体全体の動きの関係」という観点です。

 

よくぞここまで気付かれましたね!

 

 

>そこで、改めて楽器を構えてから音を出すまでの流れを確認してみました。

>すると、アゴを引いたときに首の張りを感じたことから、

 

>「 アゴを引くクセ 」

 

>が、質問させていただいた問題点に大きく影響しているのでは?と仮定してみ>ました。

 

>これはもしや、と思い楽器を構えてから、楽譜を見るときに

 

>1.アゴを引いて目線を調節するパターン

>2.頭を前に傾けて目線を調節するパターン

 

>の両方を試したところ、明らかに2の方がうまくいきます。

 

 

まったくその通りだと思います。

 

わたしもとくにサックスを演奏される方とレッスンでお会いするとき、「1」のやり方を「2」に置き換えていくことを提案し、実験していくことがあります。たいてい、とても役に立ちます。

 

 

>1の場合は音の重たさに加えて、ブレス時の下唇とマウスピースの接触に、何>とも言えない不安定さを感じたのです。

 

 

あごを引く=下唇がマウスピースから遠ざかる

 

ですからね!感じたことはとても正確だと思います。

 

 

>また、なぜか楽器が震えることがあったので、

 

>1.左腕がリードして楽器を構えるパターン

>2.右腕がリードして楽器を構えるパターン

 

>を試したところ1の場合のみ楽器が重たく、ブレス時に唇へのプレスが弱くな>るような感じがして、下唇がマウスピースをつかまえにいくような動きが生じ>ます。

 

 

これもまったくその通りだと思います。

 

わたしのブログでも、ホルンの構え方をマンガで解説しているところがあるのですが、それと同じことだと思います。

 

この記事→ https://basilkritzer.jp/archives/4187.html

 

 

>質問させていただいたセッティングのズレは、

 

>「マウスピースと唇の接触が弱くなり、ブレスを取ったあとに下唇と上唇の接>着の仕方がズレることでセッティングがズレたように感じる」

>「唇の接点が変わってアンブシュアが乱れるので、ブレスに集中できない。ブ>レスが怖い。」

 

>が実態に近い気がします。

 

 

なるほど、

 

・アゴを引くやり方によるマウスピースと唇の接着不十分

・ホルンを構えるときの損なやり方(左腕主体)

 

の掛け算でマウスピースと唇の接触関係を安定的に維持したり調整したりがやりづらくなっていたわけですね。それで乱れが起きていたと。

 

 

>練習の最後に、

 

>1.頭が動けるようにしてあげて、頭が体全体の動きをリードして、

>2.右手の指先が腕の動きをリードして、左手はそれについてきて、

>3.頭を傾けて視線を調節する

 

>という流れで、いくつかフレーズを吹いたところ、呼吸がスムーズになり、唇>とマウスピースの密着感や響き、レガートの滑らかさが良くなったように感じ>ました。

 

>姿勢も肩が上がり、背筋が広くなったような感じがします。

 

 

大変素晴らしいと思います。ご自身で解決されましたね!

 

今回、Aさんはわたしからのフィードバックを用いながらも基本的にはご自身で実験し、アイデアを創造的に用いてご自身の改善と前進につなげていくための「これから継続的に使える・練習していく価値があるアイデア」を見つけ、発展させましたね。

 

こういう自己解決の力と創造性を育むことをレッスンではいつもやりたいと望んでいるので、とても嬉しいです。

 

 

>思い上がりかもしれませんが、

 

>「頭が動けるようにしてあげて、自分全体がついてくる」

 

>の理解が深まったような気がしています。

 

 

思い上がりでもなんでもありません。

 

「頭が動けるようにしてあげて、自分全体がついてくるようにする」

 

そのための、状況や現在地に必要かつ適切な方法・練習の道筋をご自身で見つけていかれたわけです。アレクサンダー・テクニークの真に楽しく奥深い部分です。

 

おめでとうございます。

 

 

 

【Aさん】

 

お返事、拝読させていただきました。なんだか身に余るような言葉をたくさん頂いて、ありがたいやら、申し訳ないやら…。

 

こちらからも、お返事としてお伝えさせていただきたいことも含めて、語らせていただければと思います。

 

 

今日も練習に取り組んでみたのですが、

 

「頭がどんどん動くよ。体もどんどんついていくよ」

 

と一声かけて、

 

「ただ吹こう。あとは、そのとき考えよう。」

 

と決めて楽器を吹いてみたのですが、昨日よりも演奏がスムーズになったような感じがします。

 

面白いことは、今までと比べて「演奏してる感」をほとんど感じないのに、吹けてしまう。

 

あれだけ気になったブレスが、気が付いたら自然にとれている。

アンブシュアが勝手にできあがる。

 

「演奏してる感」を感じないのに、演奏に集中できる。

 

「自分が演奏しているのだ」という実感が持てる。

 

構えるとき、座るときに思い出される、昔習ったルールのようなものをやめて、「頭を動けるようにして、あとは自分を全部つぎ込むだけ」で、ストレスがぐっと減る。

 

 

試しに、自分で頭を動かして演奏してみましたが、動けるようにした時とはまるで別物でした。

 

純粋に楽器が楽しいな、と思えましたし、こう感じたのは中学生の頃以来のことです。

 

イメージするだけで、考えるだけで本当に変わるものなんですね。

 

自分がどうしたいか、どうなりたいかは実は自分で決められるもの、とも言えるのかもしれません。

 

 

練習を終えた時、自然に

 

「なんだ、オレもできるじゃないか。」

「5年ブランクがあるには、よく吹けてるじゃないか。」

 

と思うことができました。

 

 

ここ何日かの実験を通して

 

「気を付けるべきことはシンプル」

「自分にとって必要なテクニックは、自分で見つける、見つけられるもの」

 

なのかな、と感じました。

 

もしかしたら、元々備わっていて手元にあるけれど、コントロールしようとすることで自分から遠ざけていたのかもしれません。

 

 

私は、普段中高生の学習支援や相談支援事業に従事しています。あくまで私の周りだけなのでしょうが

 

「支援される側がどうしたいか、どう感じているか」

 

よりも、支援する側がどうしたいかを重視した、支援する側の理想にはめようとする場面を多く目にするのです。

 

自分たちがすることは、「相手の求めていることに対して、自分ができることをする」だけでいいんじゃないか。

 

何が問題なのか一緒に考えればいいんじゃないか。

 

そもそも、何が支援かすらも自分たちが決められるものではないんじゃないか。

(コンクールの結果と同じかもしれません。)

 

 

こんなことを考えていましたし、どこか、違う世界に身を置きたい気持ちも湧いていました。

 

その中で、バジル先生のブログを知り、質問者の方々とのやりとりや、先生の書かれた文章を目にした時、

 

「支援って、こういうことだよなあ。」

「大事なことって、こういうことだよなあ。」

「オレがしたいのは、こういうことだよなあ。」

 

と感じていたのです。

 

自分の物事の感じ方や取り組もうとしている方向性が、まんざら間違っていないような感覚を勝手に得ていました。

 

 

そこで、思い切って質問をさせていただくに至ったわけだったのですが、先生とメールでやりとりをさせていただいたことは、奏法の問題解決に併せて、これから自分がどうしたいかを考える契機となったことも含めて、貴重な経験となりました。

 

本当にありがとうございます。

 

 

最後になりますが、アレクサンダー・テクニークは「その人自身を取り戻す」という点で、楽器演奏やダンスなど身体活動に限ったものではなく、相談支援など対人支援に関わるもの全てに有効だと感じています。機会さえ許せば、自分でも勉強したい欲が生じています。

 

メールでのやりとりですが、お役に立てていただけるのであれば、どうぞご活用ください。

 

今後のバジル先生の活躍を心からお祈りしていますし、遠くから応援させていただきたいと思います。

 

 

 

【バジル】

 

>今までと比べて「演奏してる感」をほとんど感じないのに、吹けてしまう。

 

 

アレクサンダー・テクニークのレッスンの中では、その人が本来は可能性として持っているより良い奏法による演奏を一気に実体験します。

 

レッスン中は教師の助けなどもあるので、レッスン後からすぐに再現/アクセスできる距離よりもっと先を「プレビュー体験」する、という感じです。

 

そういうときしょっちゅう、生徒さんが「吹いている感じがしない!」とびっくりされます。わたし自身も、自分の師匠にレッスンを受けるとそういうことがよくありましたし、いまでも時々あります。

 

不思議なことに、多くの人は(ときにはわたしも)その体験にある種の不安や頼りなさを感じるようです。でも音も奏法も表現も断然良くなっています。

 

自分が頭で「こうだ」と決めている吹き方とあまりに「ちがう」感じがして、いままでやってきたことは何なんだろう、こんなの再現できる気がしない、となるんですね。

 

しかし、実はちゃんとその人自身のポテンシャルであり、吹き方なのです。それの一時的プレビュー体験をすると、効率の良さの落差からあたかも「なにもしていない」感じがするのだと思います。

 

確かなのは、音がいい、吹きやすい、音楽がパワフルになる=できるならこれからはこれでいきたい!ということですね。そしてそれは間違いなくそのひと自身の奏法なのです。

 

 

>試しに、自分で頭を動かして演奏してみましたが、動けるようにした時>とはまるで別物でした。純粋に楽器が楽しいな、と思えましたし、こう

>感じたのは中学生の頃以来のことです。

 

 

いいですね!

 

純粋に、羨ましいです。

 

おかげでわたしもヤル気になります。

 

 

>そもそも、何が支援かすらも自分たちが決められるものではないんじ

>ゃないか。(コンクールの結果と同じかもしれません。)

 

 

とても共感します。

 

だからわたしは自分の側から、ある意味、「押し付けるもの」を決めています。

 

自分は教えるとき、サポートをするとき

 

 

・そのひとがもっと素敵な音を奏で

・そのひとがもっとラクに気持ち良く演奏できて

・その体験がおもしろい、勇気付けられる、あるいはハッピーなものである

 

方向に向かって取り組んでいきます。

 

もしかしたらこれは相手が求めていないかもしれなくて、そうすると押し付けになるのですが、わたし自身がそこに興味がありそれ以外はあまり面白くないのでエゴイスティックな動機で「こっち方向に向かわせていただきます。それが嫌なら来ないでください」というスタンスでやることにしています(笑)

 

 

>最後になりますが、アレクサンダーテクニークは「その人自身を取り戻

>す」という点で、楽器演奏やダンスなど身体活動に限ったものではなく、>相談支援など対人支援に関わるもの全てに有効だと感じています。

>機会さえ許せば、自分でも勉強したい欲が生じています。

 

 

実際、その通りです。

 

わたしはアレクサンダーテクニークを音楽の演奏、そのなかでも

 

・管楽器演奏への技術的諸側面への応用

・あらゆる音楽家に通ずるあがり症を乗り越えることへの応用

・あらゆる音楽家に通ずる、練習のやり方への応用

 

に集中していますが、元々は声の問題を解決するために生まれたもので、そこから呼吸、姿勢へと広がっていきました。いまでは腰痛の緩和や治癒に対して非常に効果的であることが科学的調査でもしっかり裏付けられています。

 

 

>メールでのやりとりですが、お役に立てていただけるのであれば、どう

>ぞご活用ください。今後のバジル先生の活躍を心からお祈りしています

>し、遠くから応援させていただきたいと思います。

 

 

ありがとうございます。

 

きっと多くのひとが強く興味を持ち、また役立つやり取りになったと思います。

 

それでは、お元気で!

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息を吸うたびにアンブシュアが硬くなり演奏できなくなる….どうしたらいいの?Q&A」への9件のフィードバック

  1. 初めまして、山形県でトランペットを吹いてる高校3年生です。
    悩んでいることがあるのできいてください。
    今年の五月のある日、突然ダブルバズが起こるようになってしまったのです。
    小学校のときからトランペットを吹いているのですが、今までは全然なったことがなかったのでとても戸惑っています。
    その上、一か月以上試行錯誤しているのですが、若干はよくなったもののあるところ以上はよくならないのです…
    また、常に起こっているわけではなく、なるときとならないときがあります。
    ダブルバズが起こり始めたときに何か特別なことがあったわけでもないので全然解決方法がわからなくて困ってます。
    お忙しいとは思いますが返信をいただけたらうれしいです。

    • こんばんは。

      ダブルバズって、ドッペルのことですよね?

      なるときとならないときの違い(状況、気持ち、吹き方など)を観察することがまず第一歩ですね。
      また、起こり始めの時期の特別ではないけれど関係あるかもしれないことをもう一度ゆっくりじっくり思い返してみてください。

      わたしのブログ関連記事も念のため読んでみてください→http://basilkritzer.jp/?s=ドッペル&submit=検索
      あと、こちらの佐藤徳哉さんの記事も→http://tokuya-tp.hatenablog.com/entry/trumpet-doublebuzz-doppel

      佐藤さんには直接質問もしてみるとよいかと思います。

  2. ピンバック: うまくいかなかったら、白い目で見られるぞ | バジル・クリッツァーのブログ

  3. こんばんは、ホルンを吹いている高校2年生です。ホルンは高校から初めました。
    悩みなのですが、曲を吹いていると突然唇が振動しなくなり、広いインターヴァルのスラーなどの音が出ない時があります。
    高音から低音に下がる時アンブシュアが変わって汚い音になったり音が出なくなったりします。ちなみに最近マーチング大会があってホルンの高音重視の曲をブリブリ吹いていました。関係ありますかね?
    何が原因か本当に分かりません。凄く困ってます。対処法などいい練習法などありますか?

    • 井手さん

      関係するかもしれない記事、役立つかもしれない記事、たくさんあるので、
      ぜひブログ内検索を駆使してください!

      Basil

  4. バジル先生はじめまして。
    私はトランペット4年目の高校1年生です。ダブルバズ、ドッペルの症状に悩まされ半年経ちました。全然治りません。ある日突然鳴り出しそれからずっとです。
    初心者によくある症状だということですが私は初心者ではありません。ロングトーン、リップスラーなど基礎をやってもダメです。
    というのもなるのはF〜B♭の中音域だけです。ただこの音域が1番楽譜に出てくるので本当に困ります。マウスピースをエリックミヤシロさんモデルの浅い物にするとましになりますが吹奏楽向けのマウスピースではないので音が浮いてしまいます。それにそれでも全くダブルバズが無くなる、というわけではありません。合奏などで1人で吹かされる時はダブルバズが鳴らないか不安で緊張して結局練習の時より鳴ってしまい怒られます。パートでもいつになれば治るんだよ、と言われ泣きそうになりました。本当になんでこんな音が鳴るのか自分が一番わかりません。鳴る前とアンブシュアは何も変えてません。講師の先生からはバズィングを徹底し、マウスピースの時間を長くすると治ると言われました。やってみてましにはなりましたがやはり治りません。また、長期間吹かない、ということも試しましたが悪化しました。特に音量変化(クレシェンド、デクレッシェンド、フォルテピアノ)時は必ず鳴ります。
    もう正直トランペットが嫌いです。なんでこんな音が鳴るかわからない、毎日毎日ダブルバズに怯え合奏では叱られパートでは白い目で見られもう限界です。どうか直す方法を教えてください。宜しくお願いします。

    • あいかわさん

      まず、あいかわさんの吹いている様子を見ないことには、いまどういう吹き方をされていて、どのような原因でダブルバズが起きており、どのような対処をするとよいのかその具体的なところが分からないので具体的なアドバイスはできません。

      レッスンに来ていただくか、オンラインレッスンを受けて頂けませんか?

      一般論としては下記のようになります。

      ◎なぜダブルバズしているのか理由を考える
      ◎その理由にもとづいて、じゃあどうすれば改善するか仮説を作る
      ◎その仮説が正しいかどうか試す
      ◎効果がなければほかの仮説を立てる
      ◎いくつも仮説を試しても効果がなければそもそもダブルバズしている理由について考え直す。

      奏法上の基本チェック
      ◎アンブシュアモーション→https://basilkritzer.jp/archives/6322.html
      ◎アンブシュアのセッティング→https://basilkritzer.jp/archives/7477.html

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