2015年5月17日、昭和女子大学人見記念講堂にて、日本吹奏楽普及協会主催の「第1回東京都バンドクリニック」にて講座を担当しました。
このバンドクリニックには、トロンボーン奏者の中川英二郎さんも講師として参加され、「ポップス奏法クリニック」と題した講座をされました。
この講座が素晴らしかった!
とくに、
・重音
・循環呼吸
・フラッター
といったいわゆる「特殊奏法」の解説と紹介をしながら、トロンボーンの可能性を存分に用いた演奏をアドリブも交えてされたのが、非常に意義深いことだと思いました。
なぜかといいますと、会場には中学生や高校生がたくさん座っていて、彼らは目の前で中川さんの演奏に触れ、肉声でその考え方を聴き、演奏する様子をその目で見ることができたからです。
中高生が、自らが取り組んでいる楽器や音楽の持つとんでもない面白さ、楽しさ、凄さの可能性に直に接することができるのは、ありそうでなかなかない機会なのです。
よい意味で、自分の想像をはるかに超え、自分が持っていた既成概念をぶっ壊されたはず。
きっとこれをきっかけに楽器演奏に魅了され、自らのクリエイティビティと工夫でどんどん成長する子供たちが現れることでしょう。
もしかしたら、この日をきっかけに将来のスタープレイヤーが生まれる可能性すらあります。
こういう機会って、なかなかないんですよね。それを実現した日本吹奏楽普及協会の目の付け所は素晴らしかったと思います。
部活によっては、吹奏楽以外の音楽ジャンルを聴くことを禁止したり、もっとひどい場合にはプロの演奏を聴くのも禁止、コンクールで演奏する曲のお手本として選ばれた録音以外は触れさせてもらえないということすらあったりすると聞きます。
これはほんとうにひどい運営のクラブに限った話で極端な例でしょうが、残念ながらこういうような「可能性の制限」がくわえられてしまっているところが、日本の管楽器文化の土壌である学校吹奏楽界にはあります。
ですから、東京都下の多数の教員や指導者が協同して開催にこぎつけた今回のバンドクリニックの意義は大きいのです。
そういった雰囲気のおかげか、わたしの講座もとても意欲があり、考えることに積極的で、変化を厭わない中高生が50人以上も集まってくれました。
そのような流れの中で、わたしもいつもより本音で語ることができました。2時間の講義・マスタークラスだったのですが、誰一人眠そうで飽きた様子を見せずに音楽について、練習について、演奏について深く突っ込んで考えてくれていました。
そんな講座ができたことは、わたし自身にとっても自信になり、同時に安心するというか解放感のある経験でした。
ある参加者とのマスタークラス形式の公開レッスンから、わたしはこんなことを述べました。
「もし、間違えないようにしなきゃ、ちゃんとやらなきゃ、失敗してはいけないんだ….というような気持ちで練習している結果、上達や演奏の質が妨げられているのだとしたら。それは、どんなに真面目に頑張っているつもりでも実際には『サボり』なんです。
逆に、全部間違えてもいいから思い切りやりたいようにたってみよう、と思ってやった結果、改善や上達が起き、演奏の質が高まるならば、そうやって考えるように自分自身を訓練していく努力をこそしなければならないのですよ。それが真の意味での『頑張る、努力する、全力を尽くす』なのです」
こういう言葉をわたしから引き出してくれた参加者の中高生のみんなには、敬意と感謝あるのみです。
次回は来年でしょうか。さらにパワーアップしたバンドクリニックを作っていきたいと思います。